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パルマ生誕祭ケーキだってば その1

 ドゴログマでしっかり薬草などを採取出来たことで、スアはかなりご機嫌でした。

 巨木の家の3階の研究室でどんどん薬品を精製しています。
 そのため、コンビニおもてなし本支店ならびにおもてなし診療所で品切れ状態になっていた効能の高い高級薬品類があっという間に補充されていきました。

「……まだまだ材料がいっぱいあるから、当分大丈夫、よ」
 スアがそう言いながら右手の親指をグッと押したて、同時に笑顔を浮かべていましたので、これでしばらくは安心ですね。

 もっとも、ドゴログマ行きは、神界の許可がなかなか下りないんです。
 感覚的に季節に1回といった感じでしょうか。

 そのため、スアは早速次の申請を行っていました。
 その申請書に添えて、

『魔獣を過剰に処分させようとしていると思われる事象に関する実例分析とその考証』

 そう表題されているスア製のレポートも送っていました。

 何しろ僕達がドゴログマに行く度に転移ドアの周囲に厄介な魔獣が大群でいるわけですからね。
 1回ならともかく、これだけ回数が重なりますとさすがに意図的な何かを感じてしまったわけです。

 それを受けまして、スアがこのレポートをまとめ上げた次第です。

 ちなみに、総ページ数1000Pにも及ぶこのレポートを、スアは1時間でまとめあげました。
 その中には事実を示す証拠も提示してあり、その証拠に対する解説や考証、スアなりの結論などが読みやすく、かつ懇切丁寧にまとめられていました

 ……なんといいますか、ただ早いだけでなく、内容の素晴らしさまで、こうして改めて目の当たりにすると、スアが魔女魔法出版の看板作家であることに激しく納得してしまう次第です。

 そのレポートを受け取った神界の使いであるセルブアが、なんか複雑な表情をその顔に浮かべていたのが気になりましたけど……えぇ、「お前、なんか知ってるだろう?」的な意味合いでですが。
 まぁ、ここではあえて追求することなく、申請書とレポートを神界へ持ち帰ってもらった次第です。

◇◇

 ドゴログマの後始末もこうして終わりましたので、僕はコンビニおもてなしの業務へと戻りました。

 現在のコンビニおもてなしは、出張所をのぞいた本支店合わせて7店舗展開しています。
 
 一番最近オープンしましたオザリーナ温泉郷にありますコンビニおもてなし6号店の売り上げがやや低迷しているのですが、これはオザリーナ温泉郷がまだまだ発展途中なのが大きく影響しています。
 まぁ、先日開催されました秋の収穫祭でかなりの売り上げを記録したりもしていますし、オザリーナ温泉郷が発展していくにつれて、6号店の売り上げも右肩上がりになっていくのではないかと思っています。

 ……とはいえ、毎日の売り上げのチェックなどもしっかりしてですね、その動向にはしっかり注視していくつもりです、はい。


 それ以外の店舗では、やはり辺境都市ナカンコンベにあります、コンビニおもてなし5号店東店・西店の売り上げが群を抜いています。

 コンビニおもてなし本店がありますガタコンベの周辺では、もっとも人口が多いナカンコンベです。
 それだけに、その売り上げも連日かなりのものなんです。
 このコンビニおもてなし5号店東店・西店の売り上げだけで、コンビニおもてなし全店の1日の総売上の3分の2近くを連日稼ぎ出しているんです。

 1都市の中に、東店に続いて西店を開店した事で、お互いの売り上げを奪い合ってしまうんじゃないかと少し心配していたのですが、

 以前から営業していた東店の売り上げは特に減っていませんでした。
 むしろ、右肩あがりな感じです。

 一方、新たに開店した西店も、当初予想の3割増しで利益を上げ続けています。
 これは、西店の近くに集合住宅地が密集している場所があるのが影響しているように思います。
 その住宅地から街中に向けて出勤している方々がたくさん来店してくださっている感じですね。

 魔法使い集落の中にある3号店は、顧客が魔法使いの皆さんだけという特殊な状況下で営業しているものの、魔女魔法出版の高額な魔導書なんかを数多く取りそろえているもんですから、売り上げはなかなかなんです。

 それ以外の店舗も、軒並み好調な売り上げを記録し続けています。

 もちろん僕が店長を務めています本店もしっかり黒字を維持しています。

◇◇

 そんな中、今日は週に一度の店長会議の日です。

 閉店後、僕はナカンコンベにありますコンビニおもてなし5号店東店へ転移ドアで移動していきました。

 以前はこの店長会議はガタコンベの本店内応接室で行っていたのですが、店舗が増えて参加者も増加したため、本店の応接室では参加者が入りきらなくなってしまったんです。
 そのため、最近の店長会議はもっぱらここコンビニおもてなし5号店東店で開催している次第です。

 会の冒頭で、僕は
「最初に、ララコンベとオザリーナ温泉郷で開催されました秋の収穫祭は、皆さんお疲れ様でした。みんなのおかげで無事出店や4.6号店の対応をすることが出来ました」
 そう言って、みんなにお礼を述べました。

 コンビニおもてなしとしてこういった行事に参加する度に各支店のみんなにお世話になっているわけです。
 ホント、感謝しても仕切れません。

 そんな気持ちをこめた僕の言葉に、みんなも

「そんなの当然じゃん。同じコンビニおもてなしの仲間なんだしさ」
「シルメールさんの意見に、エレも同意いたします」
「店長ちゃん、次回もクローコにお任せ! みたいな?<舌出し横ピース>」
「このシャルンエッセンスも、リョウイチお兄様のために頑張らせて頂きますわ!」
「はい!次回からはスカートをなるべく脱がされないように頑張ります!」
「私スシスも、チュパチャップ様の意見以外の全てのご意見に賛同いたします」

 そんな暖かい声をかけてくれた次第です。

 いやもう、ホント……胸がジーンとなってしまいました。

 その後、各店の売り上げの状況の報告と、今後のフェアの予定などをみんなに伝達していきました。
 売り上げに関しては、まぁ、どの店も問題はありません。

 ここで特に重要だったのは

『今後のフェアの予定』

 だったわけです。

 えぇ、これから冬にかけて、コンビニおもてなしではあれこれフェアを行っていく予定にしていますからね。

 僕が元いた世界でいうところのクリスマスにあたります、この世界の「パルマ生誕祭」に合わせてクリスマスケーキならぬパルマ生誕祭ケーキや各種オードブルの予約販売を今年も行う予定にしています。

 同時に、年始にあやるオネの月の1日に合わせておせち料理の予約販売も行う予定にしています。

「……で、これらの予約申込書をまた改めて配布するから、みんなよろしく」
 僕の言葉に、みんな
「「「わかりました」」」
 と、返事をかえしてくれました。

◇◇

 そんなわけで、店長会議は無事に終了しました。

 それを受けて、僕は次の問題に関して思考を巡らせていきました。

 いえね……
 さっきみんなにも伝達したように、コンビニおもてなしではもうじきパルマ生誕祭ケーキの予約販売を計画しているんです。

 ……ですが、今年のコンビニおもてなしは、ここに大きな問題を抱えています。

 そう……コンビニおもてなしのスイーツ全般を担当しているヤルメキスの不在です。

 ヤルメキスは現在12つ子が生まれてその育休中なんです。
 12人も赤ちゃんがいますので、その世話にてんてこ舞いし続けている次第です。

 ……で、このパルマ生誕祭ケーキなんですけど……

 去年もかなりの数の注文が寄せられまして、その製造にてんてこ舞いしたんです。
 僕も作業の手伝いを行って、やっとどうにかなったってくらい忙しかったですからね。

 去年でその状態だったわけです。

 ナカンコンベにお店が増加していてヤルメキスが不在……

「……こりゃ、何か対策を考えておかないとえらいことになってしまうなぁ」
 腕組みしたまま、僕は思案を続けていました。

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