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131 だ、だれ?


光が収まって、おめめが見えるようになってきました。まだしぱしぱする~と思いながら、手をつないだままのおいちゃんを見ると

「うぇ?」
だ、だれ?目の前に知らない人がいます…
どちらさまですか?おいちゃんは?訳が分からなくて固まるサーヤ。

『『ええ?』』
ぴゅいきゅい『『だれ~?』』
『おいちゃん、どこいっちゃったの~?』
『『あれ~?でもぉ』』
『このひと』
『サーヤと』
『おてて、つないでるよ?』
サーヤだけじゃなく、フゥ、クゥ、ちびっ子同盟も何が起こったのか分からない。おいちゃんがいたはずの所には別人がいた。

『ん?なんだなんだ?なんか体が軽いような?』
謎の人がまるでおいちゃんのような口調で声を出した。

「……」
サーヤは完全に固まったまま

『え~?ちょっとちょっとぉ、どういうことぉ?』
精霊樹の精様がジーニ様の肩を掴んでぐわんくわん揺らしながら聞いてます。
〖さ、さあ?〗
ジーニ様も驚きでまん丸に開いた目でおいちゃんがいるはずの場所を見てます。
『なんと、こんなことが…これは、アルコン様と同じですか?』
ギン様も呆然としながら聞くと
『いや、確かに同じだろうが…いや、同じだろうか?』うーん
アルコン様も考え込んでしまった。
〖これはちょっと予想外ね〗
『もはや別人ですね』
ジーニ様もバートさんも呆然。驚きすぎて目が開きっぱなし。

『なんだなんだ?みんなして何言ってんだ?』
おいちゃんみたいな人が不思議そうにしてます。

「ど、どちりゃしゃま?」
サーヤがおそるおそる聞きます。
『何言ってんだ?今、名前付けてくれたろ?』
何冗談言ってんだ?って知らない人が言ってます。
「お、おいちゃん?」
もう一同聞いてみます。
『おう!そうだぞ?当たり前だろ?』
何を言ってんだ?と言う顔のおいちゃんだと言う人。
でもサーヤは首をフリフリ
「おいちゃん、おいちゃんじゃにゃい」
『ん~?俺は俺だぞ?』
「ちやう。おいちゃんじゃ、にゃい」
『何言ってんだ?』
『ちやうのぉ~』うりゅう
おいちゃんは訳が分からず、サーヤも訳が分からなすぎて泣きそうだ。

〖あ~、えっと、ゲン?〗
『なんだ?ジーニ様』
『えっと~とりあえず、泉に顔を映してみたらどうかしらぁ~?』
『精霊樹の精様まで?』
見かねたジーニ様たちが声をかける。が、おいちゃんは動かない。痺れを切らしたようにアルコン様たちが
『いいから』どんっ
『映してこい』どんっ
『今すぐお願いします』どんっ
『うおお?』
と、おいちゃんをどついて急かします。

『は、はぁ皆さんまで?なんなんだ?わかりました。サーヤ行ってくるな?』
サーヤはこくこく頷きながら手を離します。
そして、おいちゃんが自分の姿を泉に映すと、

『ん?んんん?』

と顔やら体やらを触って確認し始めたかと思うと

『な、なんじゃこりゃー!』

と、絶叫したまま固まっちゃいました。

〖まぁ、無理もないわよね?〗
『あれは、もはや反則よねぇ~』
『我が若返っても見た目に変化はなかったしな。ただ、最盛期の頃に戻った感覚だ』
『と、いうことは、あれがゲン殿の最盛期の頃ということですか?』
『これはまた、ずいぶん若返りましたね。20代半ばというところでしょうか?』
皆さん、落ち着きを取り戻してきて冷静に分析。やっぱり他人が慌てているのを見ると逆に自分たちは落ち着くようだ。

〖それにしてもあれじゃ、おいちゃんとは〗
『呼びにくいわねぇ~』
『見た目、お兄さんだな』
『せいぜい、若いお父さんでしょうか?』
『いっそ、サーヤにおいちゃん呼びはやめていただいた方が…』

そう、おいちゃんは若返っていた。それはもう思いっきり!
さっきまでは確かにおいちゃんでよかった!だが、今はどう見ても二十代位の細マッチョのお兄さん!
おいちゃんは固まったまま。サーヤは目がまん丸。口はパクパクしている。

『ジーニ様、サーヤにフォローを入れられた方がよろしいのでは?』
見かねたバートさんが提案するが、おいちゃんは放置でいいのか?
〖そ、そうね〗
ジーニ様はびっくりしたままのサーヤの元へ。やっぱり放置のかわいそうなおいちゃん。

〖サーヤ、大丈夫?〗
「じ、じーにしゃま。おいちゃんが、おいちゃんじゃ、にゃい」
完全に目が開ききっている。
〖そうねぇ。若返っちゃったわね~〗
「おいちゃんが、おいちゃんじゃ、にゃくちぇ、ぢゃいじょぶ?」うりゅ~
大っきなおめめにたちまち涙が…
〖あ~泣かないで。若返ったんだから、むしろ大丈夫じゃないかしら?ね?アルコン〗
先に激しく若返ったアルコン様も巻き込んだ!
『そうだな、我もざっと千年は若返った感じだからな。体はかなり楽だし。力も溢れている。むしろ、つい先日までこんなに衰えていたのに気づいていなかったのかと驚いたくらいだ。だから、大丈夫だぞ。心配するな。サーヤ』と、頭をなでる。
「わかっちゃ~。でみょ、おいちゃん、おこりゃにゃい?」うりゅうりゅ
その言葉が聞こえたのか、我に返ったおいちゃんが慌てて戻ってきて
『大丈夫だぞ!サーヤ。あまりに若返っちまったんで驚いただけだ!むしろ、これでもっとサーヤたちと一緒にいられるんだぞ!怒るどころか、めちゃくちゃ嬉しいぞ!』
「ほんちょ?」うりゅうりゅ
『ああ!ほんとだぞ。それに、多分だが、これは名前にも理由があると思うんだよな』
「う?」
名前にも?
その言葉をジーニ様が肯定する。
〖そうね。サーヤはおじさんが元気でいてくれるように「ゲン」ってつけたのよね?〗
「あい」ぐすっ。
サーヤが頷く。
〖きっと、その通りになったのよ。多分寿命もそうとう伸びたんじゃないかしら?〗
『良かったな。サーヤ。おじさんもずっと一緒にいられるようになったぞ』
ジーニ様は明るく言い、アルコン様はまだ心配そうにしているサーヤを撫でながら言う。
もーもーのおいちゃん改めゲンさんは
『ありがとな!サーヤ!一緒に色んなことしような!ほら、お前も喜べ~』
と、ほっぺを両手の平で挟んで、むにむにむに~とした。それでようやくサーヤもほっとしたのか
「あい!よりょちくにぇ~」
と、元気よく答えた。ん?
「おいちゃん?おにいちゃん?」
なんて呼んだらいいんだろ?だって、
「おいちゃん、ちやう…」
細マッチョなお兄ちゃんです。
〖あっ〗
『確かにな』
ジーニ様とアルコン様もおいちゃんの全身をしげしげと見ます。
『ん?そんなの今まで通り、おいちゃんでいいぞ!なんたってこの前ぽっくり寿命で逝ったばっかりのよぼよぼジジイだったんだぞ?兄ちゃんなんて言われてもこそばゆいだけだからな!わはははは!』
豪快に笑い飛ばしてるけど、内容は…
「ぽっきゅり…」
『よぼよぼ…』
〖ジジイ…〗
これほど、目の前の人には似合わない言葉はない…
『な?だから、おいちゃんでいいぞ』バチンっ
思いっきりウインクされました。前の姿だったらお茶目なおじさんで済んだけど、今の姿でやったら、ふらふら女の人寄ってきそうです。
「あ、あい。わかっちゃ」
う~ん、やっぱり、おいちゃんには
〖見えないわね〗
『まあ、いいんじゃないか?』
「しょだね~」
おいちゃんはおいちゃんだもんね!

『おし!それじゃ、サーヤ。俺はお前が頑張ってる間に畑を作る!種をくれ!』
「う?」
種?
『う?じゃねぇぞ。なんかな、魔法でできる気がすんだよ。色々と。ふふふふ』
「お、おいちゃん?」
おいちゃんがちょっと怖いです。

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