『オーバード』
「うそ……まひる?」「まひ……る」「まひるは死んだ。これ以上、恐獣に逆らうな。人間は皆、我らの餌になれ」真弥は『プリメイラの世界』での自分を思い出した。あそこでは人間の全てが食料であり『捕食対象』。自分はその運命をどうにかして覆そうと『プリメイラ』のキャラクターたちに教えを請うた。
(あれと同じだ。『オーバード』のみんなはみんな同じ、ただの捕食者で……。俺はそれを止めることができる『プリメイラの主人公』……。俺が『プリメイラの主人公』である限り、この世界の殻獣達は攻撃をやめない)
真弥は立ち上がった。「……そうか。……それだったら……やるしかないのか……」
まみやが目を覚ましたとき、まひるの死骸が爆発した。まやは『殻獣の卵』の影響によって『捕食本能に支配され、他のオーバードを捕食すること』により生き延びている状態だったが、今まさに捕食しようとした時に殻獣化した『まひる』が死んだことにより『衝動を抑え込む殻獣の卵の殻』は砕け、殻の欠片がまひるに突き刺さったのだ まひるに『捕食したオーバードの力を付与する能力』があるように。レオノワにも、真矢にもあるかもしれない。そしてまひるにもある。それが『捕食による一時的なパワーアップ』であるならば……まひるに喰われたものは『まひるを強化させる』
だが『主人公』であるまひるの意識はまひるのもの、つまりまひるは自分自身を強化してしまう。故にまひるは死に、真也は目覚めてしまった。
「まずいぞ。真也まで悪に染まった。殲滅するしかない。死ね」レオノワは真也を斬り殺した。だが『彼』は死なない。『オーバード化のトリガーが性行為だと知った時』レオノワの脳内に浮かんだ最悪のパターンを彼女は口にする
「まさか、シンヤ……」「……うん、その『まさか』かもね。お兄ちゃんはお兄ちゃんのままだけど、もう『お兄ちゃん』じゃないのかも知れないし」真衣の目が鋭くなる レオノワの体が爆散する。まあやは『プリメイラーの力を得たオーバード』を食べた『オーバードース状態』に。レオノワを取り込んだ事で覚醒してしまった。それはすなわち。「もうみんなやめて。私が死ねばいいの」真矢が拳銃をくわえて発砲した。真矢の頭が吹き飛んだ。真矢も死んだ。「もう、おしまいです……」真姫が泣き崩れる まひるは笑っていた まひなのかんしゃく まやのしょうぼうとう レオノワとまやのしゅうげき そしてしんやとひめがおこしたじごくをみた。だれもかれものうみのなか。
わたしがせかいでいちばんしあわせ。おなかがすいたら、にんげんさんを食べればいんだから。
ああ、もうすこしでたべれるなぁ まなみはわらいながら にくをかみちぎって のみくだしてやった
『プリメイラ』本編終了後、主人公が異世界に行く。
『異能の力を宿している』と告げられるが、本人はその事実に気が付かない。なぜなら『普通』だと信じ込んでいたからだ。
『この世界には、様々な種族が存在している。君たちはその種の一つなのだ』
その事実を知ったのはいつだったか。
『私は君たちのことをずっと監視していた』
ある日現れた男に連れられて、『オーバード化の条件』を知るために旅に出たのは、いつの事だったか。
『私達の敵』を討伐した後も彼は『私達の監視』を続けてくれるだろうか?
(続く)
『私』は『オーバードース』と呼ばれる症状に陥った際、『自分の脳の一部の記憶を消され』、『自分が元々いた世界では存在しない』という『偽の記憶を植え付けられた状態で、この世界に呼ばれた』という事実を、たった1日の間に思い知ることになった。
しかし同時に『私が本来この世界にいるべきではない人間』であるということも理解してしまい、この世界における『真宮寺真也』とは全く違う人生を送っていくことになる。
真也はそんな現実を前に……どうすることもできなかった。
彼の心の中には常に不安が燻っていた。「この世界でも『元の世界と同じことが起こるのではないか』」その予感は『自分の本当の名前すらも覚えていない』という現状も相まって……徐々に膨れ上がっていった。
それでも……そんな日々の中。真姫の笑顔が。彼女の手が彼の心の拠り所となっていたことは紛れもない真実だった。
だからこそ、真也は決着を着けねばならなかった。真姫に永遠と忘却の眠りを。真也は持てる力のすべてを真姫に注いだ。真姫の意識は完全消滅した。これでいい。真也は安心して消えていった。残された真姫の肉体。彼女は……ただの人間であったから……彼女の死は誰の目から見ても『明らか』なものだった。彼女は自分の体が崩れ落ちることをどこかで知覚しながら目を閉じ……しかし次の瞬間には目を開けた。
『オーバードとしての力を使い、命をつないだ』のだ。しかし……そこに残っていたのはもはや人間の形ですら無かった。
真奈は絶望に膝をつく。しかし無数の幻聴が励ました。真奈には真也の子が宿っている。「立派に産み育ててまひるというの名前をつけてくれ」幻聴はそれだけ言って沈黙した。真也との約束。その一言が……彼女を立たせる
(私の子ならきっと強い……。そうだ。こんなところで終わるわけにはいかない!だって私のお腹の中にいるこの子は……。この子は真也さんの……大切な……ッ!真也……さん……ま、まひる!?まひる!いなくなるなんて許さない!!絶対生きて帰ってきてもらう!それまで何があっても耐えるの!だって!だって私の大好きな人なんだもん!!!まひるのためにも……生き抜かなきゃ!絶対に生き残ってみせる!)
真奈美が気合を入れると、お腹の中の子供が動き出した。真也の遺伝子が真姫の遺伝子に混ざっていく。真姫の遺伝子は真也の遺伝子に負けないように真也の遺伝子を食い破ろうとしていた。真姫の遺伝子は真也の遺伝子を駆逐しようと暴れていた。
真奈は真也の子を必死に抱きしめた。
「大丈夫、だいじょうぶだよ。がんばろうね」
「おぎゃあ!」
真昼は真耶の手の中で元気よく泣いた。
「よしよーし。真耶お姉ちゃんが守ってあげるからねぇ」
「……真耶、ありがとう。真耶のおかげで……私は」「ううん、私こそ……。真矢がいてくれたから、ここまで来れたんだよ」
真矢は真耶の肩に頭を預けた。「ねぇ、まひるちゃんは?」真矢が聞くと真耶は首を横に振った。「まだ、見つからないみたい。でも、必ず見つかるはず。あの子は……私たちの妹だもの」真矢は真陽を撫でながら微笑んだ。
「そうだよね……。うん、そうだよね……。早く見つけないと」「……うん」「まひるの分まで生きるのが、まひるへの恩返しになると思うの」
「……そっかぁ」真耶も微笑む。すると突然扉をノックする音が響いた。「ん?」真耶が立ち上がって玄関に向かう。ドアを開けるとそこには黒エルフの少女がいた。
「こんにちわ、まひる様のお友達の方ですか?」
「えっ、はい。そうですけど……」
「良かった……。実は……」少女の話を聞くうちに2人の表情は徐々に暗くなっていった。話が終わると、2人は顔を見合わせる。「……どうしようか、真矢」「……うん」
「まひるのお母さんとお父さん、死んじゃったんだ……」
真夜が呟くと、真耶は泣き崩れた。「まひるちゃん、どこ行っちゃったの……」