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明確な拒否はないけど同意もなく中途半端だ。おじさんの横にいるおばさんも同意はせず、拒否的な態度だ。更に後ろにいるお兄さんは何も言わずに黙っていた。反応はゼロだ。

その反応なさに妹の事なんだから反応しろよ、と思ってしまうが、わたしからそのことを言うわけにはいかないので沈黙する。いろんな意味で全員が沈黙してしまう。その沈黙を破ったのはリサだった。

「わたしは聞かない方が良いんでしょ?部屋にもどるから」

「リサ」

わたしが声をかけるよりも早く,リサは身を翻し部屋に行くために階段を上がって行ってしまう。

背中を見送りつつ、複雑な気分のわたしは誰に声をかければいいのかもわからず、三人の顔を見回してしまう。おじさんは私の顔を見返すと安心したような表情を見せて、改めてわたしへ椅子をすすめる。

「ようやく落ち着いて話せそうだね。座ってくれるかい?パルちゃん」

「ありがとうございます。失礼します」

リサの事が気にかかったけど、話を蒸し返す事もできず流れに乗って椅子に座らせてもらう。そのまま全員が着席した。わたしはおじさんの『ようやく』という言葉に引っ掛かりを覚えていた。どういう意味なのか、リサだけ家族の中に入れてもらえていない感じがする。そう感じるのはわたしの気のせいなのか。疑問が湧いてきたが今はそのことを気にする余裕はない。まずは仕事から。思考を切り替えると、おじさんの言葉を思い出す。あの後も話し合ったという。そこから確認していこう。



「みなさんで、あの後に話し合われたんですか?」

「そうだよ。ここを守っていきたいからね」

おばさんが力強く勢い良く返事をしてくる。わたしもそれに頷きを返しながら、続きを促す。なるべくクライアントの意見を尊重するべきだと思うからだ。

「そうなんだよ。パルちゃんの話を聞いていたから、あの後来てくれたお客さんに聞いてみたんだ。そしたらお風呂の希望が一番多かったんだ」

「そうなのよね。私も外出から帰ったらさっぱりしたいと思うから、気持ちはわかると思ったの」

「たしかに、わたしも同意見なので気持ちは理解できます」

おじさんたちの意見に同意すると、二人も嬉しそうに頷いていた。意見が同じことで嬉しかったのだろうか。素直な様子が良いなと思ってしまった。

二人が頷いていたので追加するサービスはお風呂系の事で増えそうな感じだ。

発言のないお兄さんをチラ見しながら続きを聞いてい行く。おじさんの話は終わりそうにない。

「それでね、お風呂だと場所がないだろう?どうしたらいいかわからないんだ」

テーブルに身を乗り出したおじさんは眉をㇵの字にしてがっかり感を表している。おばさんは横で頷いている。その言葉にわたしはがっくりとしてしまう。

そこまで考えてて、次は丸投げか、という感じだ。いや、前は必要性にも気が付いていなかったのだから、進歩はしているようだ。上から目線な事は許してほしい。

クライアントはお風呂系の事を充実したいと思っているので、そこを実現させていくことがわたしの役目だ。理想と現実をすり合わせていく必要がある。

この宿屋にお風呂場を作る場所はないし、お風呂にお湯をためるには槙代も必要になる。今の経営状態ではその槙代を出せる余裕はない。そこをどうするか考えなければならない。

どこまで譲歩して、どこをいかしていくのか。

おじさんたちの考えを聞いていこう。

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