109 新しいお客さんたち?
サーヤはなんだかお昼寝してるみたいです。いつ寝たかは覚えてないけど、ふかふかもふもふのお布団気持ちいい~。もぞもぞ
『サーヤ?起きたのか?』
まだ眠いの~あと五分~。むにゃむにゃ…
『サーヤ~?ダメだね~お父さんのしっぽ、完全にお布団だと思ってるよ~』
『サーヤ…』
も~あと五分って、言ったでしょ~?もう少し静かにして~。もぞもぞ
そう。今サーヤは極上のもふもふ、ギン様をお布団にして寝ています。ギン様は優しいから、サーヤを包み込むように寝かせてくれているけど、サーヤは無意識にしっぽをつかんで離しません。自分にしっぽを巻き付けてもふもふに埋もれて幸せそうに寝ています。
『『動いたね~』』
『『『おきるかな~?』』』
サーヤの周りにはちびっこ同盟たちがお顔の周りをぐるりんと囲んでます。
ぴゅきゅ『『サーヤ~だいじょうぶ~?』』
双子が寝てるサーヤの顔を覗き込んでサーヤを呼んでます。
『モモ、スイ~。近いよ~サーヤのお顔にぶつかっちゃうよ~?』
ぴゅい『へいきなの』
きゅい『ぶつからないの』
今サーヤが起きたらモモとスイのおでこしか見えないくらいです。近い近い。
『ハクの言う通りだ。モモ、スイ、もう少し離れなさい』
アルコン様が双子の首ねっこをつまんで引き剥がします。
ぴゅきゅ~『『いや~ん』』バタバタ
手足バタバタして抵抗するモモとスイ
『こら、暴れるんじゃない!サーヤに当たるぞっ』
ぴゅきゅ『『それはだめだめ』』ぴたっ
『まったく…』
アルコン様、何とか双子をじっとさせることに成功。でもまだまだですね。頑張れお父さん!
『サーヤ、大丈夫かぁ~?』
『帰ってきたばかりなのにね~』
フゥとクゥが呆れたように言います。
「うにゅ~うぅ」
そう言われても~。うらやまけしからんお山が~
『あ~声出た~。やっぱり起きてるんじゃないのかな~?』
『ほら、サーヤ。みんなを紹介するんじゃなかったのか?そろそろ起きなさい』
「ふぎゅう~」
ギン様が起きなさいって…みんなを紹介?みんな?
「はっ しょうでちた!」
ぱちっと目を開けると、目に入ったのはジーニ様と…
「ふお?|どちりゃしゃみゃでしゅか《どちらさまですか》?」
初めて見るお顔です。
『ふふ。ああ、やはりお可愛らしいですね。やっとお会い出来ましたね』
「う?」
泣きそう?
『ほら、サーヤ。まずはギン様のしっぽを離しましょう』
『起きてちゃんとご挨拶しような』
「あい」
フゥとクゥが起き上がるのを助けてくれます。でも、もふもふ離したくないです。
『ほら、ギン様にお礼しましょう』
『ギン様ありがとうございます』
「あいがちょ」
もふもふ気持ちよかったよ。出来たらもう一回…
『ああ。この位何でもない。それよりサーヤ、ご挨拶しっかりな』
「あい」
そうでした。新しいお客さんの前で気をつけします。
『ふふ。初めまして愛し子様。私は駄神…こほん。主神様の補佐を務めております。バートと申します。どうぞお見知りおきを』
「う?」
なんか、いっぱい分からないことを言われました。
こそこそ
『駄神と言ったな…』
『絶対わざと言ったわよねぇ?』
『何か?アルコン様、精霊樹の精様』
『いや?』
地獄耳だな…
『何もぉ?』
要注意人物が来たわねぇ…
『そうですか。ならばよいのです』
にーっこりしてますが、何か怖いです。
「ばーとしゃん?」
色々わからなかったけど、お名前は分かったよ。
『はい。何でしょうか?』にっこり
〖サーヤ、駄神は主神のことよ。こいつはね?主神の補佐、ん~主神をこき使『ごほんっ』…主神のお手伝いをしてくれる人よ〗
そうなの?なんか別のこと言いかけなかった?こき?
『愛し子様、なんでもありませんよ。私は駄…主神様のお世話をしたり(そうしないと私の仕事が増えますからね)、お仕事を(させる)お手伝いをしたりしているのですよ(逃げられたら面倒ですからね)』
「いりゅしゃまちょ、なかよち?」
『はい。そうですよ(ちゃんと仕事してくれれば)』にっこり
〖サーヤが純粋な子で助かったわね…(この腹黒がバレなくて)〗
『何か?』
〖いいえ〗
そうなんだ~イル様の仲良しなんだね~?じゃあ、
「さーにゃ…や!でしゅ。よりょちくおにぇがいちましゅ」
自己紹介とご挨拶大事!サーヤとも仲良くしてね!
『はい。よろしくお願い致します。サーヤ様』にっこり
「さーにゃ!」
むう~また~
『え?』
え?じゃないよ~
〖あ~バート。サーヤは呼び捨てにして欲しいのよ。ね?〗
今回はジーニ様が説明してくれます。
「あい!なかよち!さーにゃ こじょも!しゃま、おかちい!」
子どもに様はいらないんだよ! おともだちにも様はいらないんだよ!
『そう言われましても…』
「さーにゃ!」
今度『様』言ったらお返事しないもん!ぷんっなんだからね!ぷいっと、そっぽを向くと
『わははは!さすが、キヨさんの孫だ!そうだよな~子どもは子どもらしく!自分より年上のもんには敬意を払え!だよな?嬢ちゃん』
突然、豪快な笑い声が割り込んできました。
「あい!」
その通り!誰だかわからないけど大正解だよ!…ん?
「うにゅ?」
なんでそれを知ってるの?それに、誰?声の主を見上げると
『久しぶりだな!嬢ちゃん。俺が分かるか?』
目の前にいるのはいかついおじさん。ニカッて、笑ってるけど、声がちょっと震えてる?サーヤのことを嬢ちゃんって呼ぶのは一人だけだけど、どうして?
でも、間違いなく、あの声と話し方は…
「も、もーもーにょおいちゃん!!」
たたたっと駆け寄って、どすんっと抱きつきます。なんか若返ってる気がするけど、やっぱりおいちゃんだ!すんすんっ間違いありません。匂いもおいちゃんです!
『ははっ 嬢ちゃん!よかった!覚えていてくれたんだな!なぜか匂いを嗅ぐとこまで同じだ!こんな元気になって!よかった!ほんとによかった!』ううっ
おいちゃんも、ぎゅーって抱き返してくれました。
「おいちゃ~んっ」うわ~んっ
『嬢ちゃんっ』うっうっ
なんでここにいるの?とか、なんで若いのとか、聞きたいことはいっぱいあったけど、後回しです。おいちゃんがいます。匂いもおいちゃんです。
二人で抱き合ってわんわん泣きました。
〖感動の再会ね。良かったわ〗ぐすっ
『ええ。本当に。提案して良かったです』スっ
抱き合って喜ぶサーヤたちを見て涙ぐむジーニ様と、さりげなく涙を拭うバートさん。
『ええ?どういうこと~?』
『もーもーのおいちゃんとは、サーヤが世話になっていたという隣の家の?』
ハクとギン様親子も驚いてます。
〖そうなのよ。サーヤのぬいぐるみとか渡してもらった後もね、どうも主神と話していて意気投合したらしくてね?サーヤと仲が良かった動物たちもちゃんとエサが貰えてるか心配だとか話しているところにバートがお茶を出しに言ったらしいのよ〗
ジーニ様が神界であった、嘘のような本当のお話を説明してくれます。でも、ジーニ様も説明しながら苦笑い?
『はい。ならば、動物たちも一緒にこちらにいらして頂いたらどうですか?とご提案させて頂いたのですよ。味方は一人でも多い方が良いですしね。それに懸念していたサーヤ様の食事事情も改善するのではないかと思いまして』
ジーニ様の話をバートさんが受け継いでお話してくれます。
『なるほどねぇ~』
『随分思い切ったな』
精霊樹の精様とアルコン様が感心してます。
『それに、サーヤと同じ世界でしかも隣に住んでいたのなら、何を食べていたかも分かるでしょうし、確かにサーヤのためには最適な人選ですね』
ギン様が本当に良かったと安心してます。
『あっ!それじゃ~、幼子にナマモノばかりって言ってたのは~?』
ハクが戻ってきた時にちびっこたちが言ってた言葉を思い出しました!
〖そう。あの人よ〗
ジーニ様が認めました。
『ところで、そちらの方々は?』
バートさんがじぃじたちに気づいてくれました。
『あっ!たいへん~』
『すまん、じじい。あまりの事態に忘れていた』
ハクとギン様が忘れていたことを正直に謝ります。
『ほっほ。かまわんよ。非常事態らしいことは伝わっておったしのぉ』
『ワシらも妖精たちも気にしとらんよ。それにの、サーヤが嬉しそうで何よりじゃよ』
「おいちゃん~」わあああ
『じょうちゃんっ』うううう
抱き合って泣いているサーヤとおいちゃんを微笑ましそうに見つめながら、亀じぃも、じぃじもそれに妖精さんたちも気にしてないと言ってくれます。
『そうか。ありがとう』
素直にお礼を言うギン様に、泉で会った時のつっけんどんな様子はありません。
『ほっほ。ほんに、小僧も大人になったのぉ。感慨深いのぉ』
『ほっほ。もう鼻たれのイタズラ小僧は卒業かの。時の流れを感じるの』
しみじみと言うじぃじたち。
『黙れじじい共』ぐうう
やっぱりじぃじ達には敵わないギン様
〖あら、あの冷静で礼儀正しいギンにこんな態度をとらせるなんて、なかなかやるじゃない。後で色々話を聞かせてもらわないとね。くすくす〗
ジーニ様が、ギン様をやり込めるじぃじ達を気に入ったようです。
『え?それはどうか』
ご容赦を、と続けたかったギン様、だけど
『ほっほ。このような爺の話で良ければいくらでもお聞かせ致しますじゃ』
『ほっほ。サーヤたちにも約束しましたしのぉ』
じぃじたちは容赦ありません。
〖それは楽しみね。ふふふ〗
『勘弁してください…』
ギン様は完全に遊ばれてます。
ひとしきりギン様で遊んだところで、じぃじは改めて話し始めます。
『魔神様、そしてバート殿。お初にお目にかかります。この様に神様方にお会い出来る日が来ようとは、誠に光栄でございます。昔よりこの地で暮らしております、ケルピーのじじいと、亀でございますじゃ。それからこちらは水の妖精達でございます。サーヤに水の守石を渡したのはこの四人のようですの』
じぃじを始め、泉の住人たちは揃って頭を深く下げます。
〖そう、あなた達が。今回もあなた達に助けられたようね。どうもありがとう〗
ジーニ様が優しい声でお礼を伝えると、
『『『『ととと、とんでもない』』』』
と、妖精さんたち焦り始めてしまいました。
〖ふふふ。可愛いわね〗
ジーニ様はサーヤに可愛い仲間ができたと嬉しそうです。
『魔神様、バート殿、お目にかかれたこと恐悦至極でございます。紹介に預かりました亀でございますじゃ。もっともギン達からは亀じぃと呼ばれておりますがのぉ。実は見ていただきたいものがございますのじゃ』
そう言葉を一度切って見せたものは…
『こちらなのですがのぉ』
ぷるんっ
かちんっ
〖え?〗
『これは』
〖『エンシェントスライム?』〗
バートとジーニ様の目が驚きで見開きました
『やはりそうですかの…』
『予感は当たってしまいましたのぉ』
金と銀の番のスライム…じぃじと亀じぃ、もちろんギン様も、予測はしていたようです。外れてくれたらと思っていたらしいが、予感は残念ながら当たってしまった…
そして、また只者ではない者が森に…
『なぜ次から次へと…』はぁ
森の主、ギン様はため息をつくしかなかった。
『お父さん、がんばって~』
『ハク…』
おっとりハクはギンお父さんの癒し…