110 出来る男!
一気に賑やかになった森の中。
あちらでは、感動の再会を果たしたサーヤといかついおじさんが抱き合ってわんわん泣いている。
こちらでは、ケルピーや妖精たちが所在なさげにしている。
その横ではギンが落ち込みハクが慰めている。
そして、そちらでは、エンシェントスライムの番を起こそうと金色スライムが次々と飛び蹴りを繰り出している…ちゅどーんっ
色々ありすぎて、これでは何も収拾がつかないと、冷静沈着な出来る男、バートが一度場を仕切り直す。
パンパンっと手を打ち、まわりに音を響かせる。みんなの注目を集めたところで
『皆様、積もるお話もございましょうが、一度落ち着きましょう。自己紹介がてらこちらでお飲み物でもいかがですか?』
そう言うなり大きなテーブルとたくさんの椅子が現れました。
「ふぉ~?ばーとしゃんも しゅご~い」
パチパチパチと、モーモーのおじさんと抱き合って泣いていたサーヤも拍手を送っている。
バートはそれを受けて
『恐れ入ります』
と、それはそれは美しいお辞儀をしてみせた。
そして、みんなで席に着きます。
すると、なんとカップでお茶が!今までひょうたんだったのに!そして、サーヤたち、ちびっ子たちのカップは持ち手が二つあるお子様用両手マグです!
「くましゃん!」
しかも、おばあちゃんの作ってくれたくまさんがいます!
ぴゅいきゅい『『おとうしゃん!』』
『え~?モモとスイじゃないかな~?ぼくのお皿もぼくがいるよ~』
『『ぼくたちもいる~』』
『『『すご~い!』』』
なんとみんなが可愛く書いてあります!
しかもお茶を出してくれたのは、猫さんのお耳のお兄さんと、うさぎさんのお耳のお姉さん!
『ふわぁ~あ』キラキラ
誰かな~?誰かな~?もふもふ触らせてくれるかな~?
お茶を出してくれている二人もサーヤのキラキラに気づいたらしくビクッとしています。
ぴゅ『うわぁ』
きゅ『また~』
『だってサーヤの好み』
『まんまだもんなぁ』
『逃げてって言う~?』
双子も、フゥとクゥもハクまでひどい。ぷん。
『わはは 嬢ちゃんのもふもふ好きは変わらないな~』
「あい!もふもふは、しぇいぎ!!」
もふもふは至高の癒しです!正義です!
『ふふ サーヤさ「さーにゃ!」ま』
言葉を遮られ困惑するバートに、もう諦めなさいと視線で伝えるジーニ様。
『では、サーヤ。気になっているようですので、紹介をしますね』
「あい!」
バートに勝ったのでサーヤの顔はニコニコである。そんなサーヤに苦笑いしながら
『では、まず改めて私から。主神様の補佐…』
「うにゅ?」
しゅしんのほさ?ほっさ?
〖サーヤ、涙と一緒に私の説明も流れちゃったのね…〗
「うにゅ?」
なんの事?
『では、私からもう一度。主神様はお分かりですよね?』
「あい!いりゅしゃま!」
イル様元気かな~?
『はい。そのイル様のお手伝いのようなものですよ』にこ
「しょっか~」
なるほど~
『では、続きを…主神の補佐を務めておりますバートと申します。今回は天界の主神の宮からベッドが無くなっていることに気づきまして』ジロリ
〖あ~ん、だから、謝ったじゃないのぉ〗
ジーニ様、サーヤのためにごめんね。
『そこで、駄神を問い詰めましたところ、色々と、本当に色々とサーヤさ、(じとぉ)サーヤ(にこっ)にご不便を強いていることが分かりまして、慌てて必要最低限の物と、信頼出来る者をお届けに上がりました次第でございます。私は大変、大っ変、残念でございますが、駄神を残してこちらに長居は出来ませんので…』
くっと涙を堪えている。
「あい!だちん、にゃあに?」
だしんってなにかな?
しーん…
「うにゅ?」
あれ?みんなどうしたのかな?
『サーヤ、駄神というのはですね、主神様のことですよ』にっこり
「う?」
主神だよね?
「だちん、まちがい?」
『いいえ。合ってますよ』にこ
「うにゅう?」
ちがうよね?
『合ってますよ』にこにこ
うにゅ~?おかしいな~?
こそこそ
〖ついに駄神って言い切ったわね〗
『言い直しませんでしたね』
『主神様のせいで長居が出来ないと』
『言ってるようなものねぇ』
『そちらの方々、何か?』
『『『いいえ!』』』ビシッ
〖何でもないわよ。続けて〗
ジーニ様たちどうしたのかな?
『かしこまりました。本日は当面の食料、調理器具、お洋服などをお持ちしました。後日改めて、必要な物はご用意させていただきます。そして、身の回りのお世話や調理に関してはこちらで急ぎ二人ほど連れてまいりました。大丈夫、信頼出来る優しい子達ですよ。私共々もよろしくお願いしますね』にっこり
バートさんが優しく笑いました。
そして、お茶を出してくれた猫のお兄さんと、うさぎのお姉さんを促します。
『初めまして。僕は豹の獣人で15歳です。調理見習いをしていたところ、この度こちらでお世話になることになりました。よろしくお願いします』
猫さんじゃなく豹さんでした!かっこいい!
『初めまして。私はうさぎの獣人で同じく15歳です。メイド見習いをしていました。サーヤ様の身の回りのお世話などさせていただきます。よろしくお願いします』
うさぎさん!可愛いです。お兄ちゃんとお姉ちゃんて呼ばせてもらえるかな~♪
サーヤはパチパチパチと手を叩きます。顔は……ねぇ。
『そして、こちらが』
バートさんが、モーモーのおいちゃんを見ます。
『わはは!緊張するな~。俺は地球の日本ってところでな昔、嬢ちゃん…今はサーヤだな。サーヤの隣の家に住んでたんだ。それで先日、ついに寿命でぽっくり逝っちまってな~。わはは』
ケロッとすごいこと言います。相変わらず豪快です。こういうおいちゃんなのです。バートさん以外みんなは唖然としてます。
『そしたら、こっちの主神様とバートさんがな、サーヤのそばで第二の人生を楽しまないかって誘ってくれてな。俺もサーヤのことが可愛いし、ずっと気になってたから誘いに飛びついたんだよ。俺の仕事は家畜と農業だったしな。この生活にはピッタリだろ?』
と、ウインクしてきた。いかついのにお茶目なおいちゃんなのです。
『それになぁサーヤ、実は俺だけじゃないんだ』
「ふぇ?」
おいちゃんだけじゃない?
『お~い。出て来ていいぞ~』
おいちゃんがそう言うと、ここにいるはずのないモーモーさんたちが色んな動物を乗っけてやって来ました!
「ふあああ?」
コケコッコーに、かもさんたち!メーメーさんに、うさちゃんや森のリスさんたちも!
「どちて~?」
なんでみんないるの?
『それがな~?俺がエサをあげられなくなっただろ?子供が産まれたばかりの奴らもいたしな?こいつら大丈夫かなぁってボヤいてたら、主神様とバートさんがサーヤのためにも来てもらったらどうかな?と言ってくれてなぁ。こいつらも歳だったからな、本人たちに主神様が確認してくれたんだよ。それがこの結果だ』
呆然としていると、バートさんが
『サーヤ。みんなあなたが大好きだったんです。それで あなたに会いたくて来てくれたんですよ。特に牛と鶏は頑張ってあなたに栄養をつけると張り切っています』
みんながすりすりしてきてくれました。
びっくりです。でも、すごく嬉しいです。
「みんにゃ、あいがちょ~。うりぇちい」
サーヤもすりすりします。
『なので、あとで名前をつけてあげてくださいね。ふふふ』
「ふぇ?」
バートさん?今なんて?
『俺も頼むな~』
はい?
「もーもーのおいちゃん?どちて?」
なんで?だって名前あるよね?
『ふふふ。サーヤに名前をつけて貰えたらパワーアップしますからね。新しくつけ直してあげてください』
すごい、いい笑顔でにこっとされました。
「ひ、ひにゃぁぁ~っ」
またお名前~!?
サーヤの絶叫が響き渡る。
こそこそ
〖うわぁいい笑顔ね~〗
『してやったりって顔ねぇ~』
『しかし、サーヤまたか』
『また謎踊りが続きそうですね』
『何か?』
『『『〖何もありません!〗』』』ビシッ!
絶対に逆らっては行けない人、降臨。
「ひぎゃ~あああっ」
またお名前~えぇっ