第44話 新たな結束
それと同調するように、居住エリアにも活気が灯り始めていく。
皆それぞれが武器を手に防具を纏い、人の群れが作られると、重い足取りで戦地へ進路を辿る。
結局、昨日は碌に寝れなかった。
エリシュと
確かにあの女神は、俺を玲奈と同じ世界に転生させると言っていた。
だけど、玲奈の転生対象が人間だとは、一言も聞いてはいない。
俺がこの体———同年代のブレイクに転生したものだから、てっきり人間に転生しているものだとばかり考えていた。
転生というからには、自我意識の存在する生物だろう。
そしてハラムディンの国民で、その可能性がある者はいなくなった。
あとは復活の時期がピタリと一致する、
……やりかねない、あの性悪女神なら。グレーゾーンギリギリを涼しい顔で攻めそうなヤツだったから。
しかし、よりによって
決めつけるのは早計だが、確認しないと、玲奈かどうか。
少なくとも、俺にはその責任がある。
玲奈を探すためだけに、自らこの世界を選んだのだから。
「おはようございます」
戦地となる大地を見つめる俺に、背後からクリスティの声が届く。
「ああ、おはよう」
首だけ振り向く俺に、笑顔を見せるクリスティ。その後ろにはアルベートとエリシュの姿。
「みんな、聞いてくれ」
振り返って姿勢を正し、仲間と正面から向かい合う。
「俺は今日、あのゲートを越えて、
最下層は
ハラムディンの外へと繋がるゲートと呼ばれる出入り口。そこから
「アルベート、クリスティ。……二人には感謝の言葉をいくら言っても言い足りねぇ。お前ら二人……そしてマルクがいなければ、俺はここまで辿り着けなかった。そして、俺の最後のわがままに付き合ってくれないか。……俺をゲートの側まで導いてくれないか」
「嫌っすね」
「あ、アルベート……そんな言い方をしないでも……」
そっぽを向いているアルベートと、視線を泳がせおろおろするクリスティ。
アルベートはマルクたちのチームに拾われてから日が浅いとはいえ、マルクをとても慕っていた。まるで父を慕う子のように。
マルクのことが、胸にしこりとなって残っているのだろう。当然だ。
アルベートは逸らした顔を少しだけ傾けて、視線を俺にぶつけてきた。
「最後って言うのが、嫌だってことっス! 俺はどこまでもついていきますよ! ヤマト兄貴!」
ニカっと口元を吊り上げて、赤髪の青年は瞳を輝かせる。
「あ、アルベート、お前……。へへっ……ありがとよ」
チームの輪に生じた亀裂が癒着して、以前よりも強固に継ぎ合わさっていく。
———本当に、コイツらと一緒で本当によかった。
俺もいつの間にか、柔らかい笑顔に満ちていた。
「じゃあ早速、作戦を説明するわ」
気持ちが一つに纏まったのを見届けたエリシュが、話を続けた。
「この
「な、なるほどッスね……」
「でも、ゲート付近は流石に
「……四人で進むのがいよいよ厳しい戦況になったら、俺のスキル『|終焉なき恋慕《ラブスレイヴ》』を使う」
三人の表情に、緊張感が浮かび上がった。
「そこからはスピード重視の一点突破だ。だから、お前たちはゲート付近で待機してても構わない。自分の命を守ることだけに専念して欲しい」
「じゃあ……兄貴は一人でゲートを越えて、
「殲滅、じゃなくて突破だけなら、一人のほうが
作戦を伝え終わり、アルベートとエリシュも概要を理解すると、俺たちは食糧を広げ出した。
「さあ、戦いの前の腹ごしらえをしようぜ! ちっと量は少ないけどな」
俺たちが動き出すのは、少し時間を置いてから。戦場が温まった頃合いが丁度いい。
硬いパンを噛みちぎって、胃に流し込む。
お世辞にも美味しいとは言えないけど、このメンツで食べる物はなんだって味が増す気がした。
「……もう私は大丈夫。アルベート、半分食べる?」
「もらうっス! ありがとうエリシュさん!」
エリシュが差し出したパンを、アルベートが嬉しそうに受け取った。少しだけ
「……もしかしたら戦闘の最中、二人が驚くことが起きるかもしれない。そうなっても、気持ちを乱さないで頂戴」
「エリシュさん……。その驚くことってなんですか?」
「ごめんなさいクリスティ。不確定要素が多すぎて、今は言えないわ」
口いっぱいにパンを頬張るアルベートと、クリスティが顔を見合わせる。
俺は少しだけ悪戯な視線を二人に向けた。
「そうだな……。強いて言うなら、男気かな?」