第17話 俺の想いは決して変わらない……はずだ!
敷地と公道を隔てる門で、エリシュが門番と一言二言言葉を交わすと、俺たちは丁重に建物へと案内された。
もちろん顔を覆う偽装は、すでに解いている。
建物の扉が仰々しく開かれると、いわゆる
エリシュの話によれば、この80階層には王族の縁者が居住している他に、滲む血も顧みず弛まぬ努力でステータスランクを上げて強者と認められた者と、情報という名の武器を手に、人と人をパイプで繋ぎ、政治的な暗躍によってのし上がった者とに二分されるらしい。
「これはこれは、ブレイク王子が
「う……うむ」
(……余計なことは言わないほうがいいよな。これくらいの返事でいいんじゃないか?)
そっと流し目でエリシュを見ると、彼女は小さく頷いた。
どうやら、正解。
「私はエリシュ。ブレイク王子の側近である。さて、
ここから先はエリシュにお任せだ。
男は「もちろんですとも」と言葉を置き、家政婦の一人に目配せをする。静々と、だけど床を滑るような速度で
男は愛想笑いを絶やすことなく、俺を見ているが……。
いやはや、なんとも気まずい。
「え、えーと。その若き女性は一体誰なん……いや、何者なのか?」
玲奈に繋がりを辿れる情報が知りたくて、逸る気持ちを抑えきれなくて、ついアドリブってしまった。エリシュの冷たい視線が『余計なことは言わないで』と雄弁に物語ってくる。
棘のある目つきが顔中に刺さりまくって、痛い。
「は、はい。該当する女性とは、実は私の娘なのです」
「う、嘘だ……むごぅ」
エリシュの腕が高速で俺の口を塞いできた。
(……この女、実は俺より
それに声を遮りつつ、みんなにはバレないようにさりげなく口をつねられてるし、俺。
「……その言葉、真実であろうな?」
「はい! 嘘偽りは一片もございません! 伝えられた条件に該当するものは、この
必死で訴え掛ける
……それにしても、このスライムオヤジの娘だなんて。想像するのが怖い。怖すぎる。
———いや! どんな姿をしてようとも! 俺は玲奈を愛してる! ……きっと。
葛藤を振り払い、玲奈への愛を再確認していると、パタンと扉の開く音が聞こえてきた。
しばし間を置いて、長い廊下の向こう側から家政婦に引き連れられた少女の影が、ゆっくりと近づいてくる。