第16話 新しい装備で気合を入れろ!
新しい装備に身を包まれ、俺たちは大型施設を後にした。
胸部と左肩を守るだけの
装備するにはやや時間が掛かる代わりに、関節の可動域を妨げないこの防具は、俺の一つ頭を抜きん出ている
防具を扱う店舗で数多の商品が陳列する中、一番高価な
35万
もともとエリシュが装備していた
こうして身なりを整えた俺たちは、大きなバッグを肩から下げながら、
人工池の周りでは、小さな子供たちが無邪気に走りまわっていた。
鬼ごっこに近い遊びなのだろうか。追い縋った子供と共に数人がコロコロ転倒すると、声変わり前の笑い声が重なり合う。その周りには目を細めて見守る大人たち。おそらくは両親、またはそれに近しい者なのだろうか。
「……本当にここは平和なんだな。さっきまでの戦いのほうが逆に、嘘に思えてくるぜ」
「下層で命を張っている人たちを土足で踏み付けて作られた、
先程の表情から、エリシュの心情は察したつもりだ。だがエリシュが家族の団欒へと向けた目は、憎悪と言い換えてもおかしくない鈍い眼光を、
「……でもよ、こんな言い方しちゃ悪ぃが、エリシュだってブレイクって王子だって、そのお陰で暮らしていたんだろ? 俺だってさっき理由を聞いたときにゃ不愉快だけどもさ……なんていうかエリシュ、お前ちょっと嫌い方がハンパじゃなくね?」
「……あなたには……ヤマトには関係のないことよ」
「あっそ。じゃあこれ以上は聞かねーよ。……早く
他の建物より屋根一つ分高い建物が見え始めると、エリシュが歩く速度を緩ませた。あれが目当ての屋敷だと、そう告げた上で、いつにも増して隙のない真顔を向けてきた。
「いい? この階層の
「へいへい。わかったよ」
「…………フゥ」
(……今、聞こえないようにため息をついたな、おい!)
だけどここで『王子じゃない!』とか因縁をつけられていざこざに巻き込まれてしまうのは、とても困る。
俺には玲奈に会って、思いっきり抱きしめて、そしてできればそのままキスまで……。おっと妄想が暴走したようだ。
ともかく玲奈を探して救い出すのが、俺の第一優先。
もちろんこの80階層に住んでいる病み上がりの少女が玲奈なら、それですべては解決だけど、当たりを引く確率は1/3。
それにエリシュに豪語してしまったけど、姿形が変わっても果たして玲奈と分かるかどうか。
これまで勢いに支えられてきた自信が、急速にしおしおと萎え始める。
(———どこまでアホなんだ、俺は!)
両の手で、自分の頬を痛烈に打ちつける。
張られた肉の快音に、慌てて振り向くエリシュの顔を視界の端に捉えながら。
「———うしっ! 気合注入完了! もう二度とめげない、折れない、諦めない! 玲奈はきっと待っている! 早く行こうぜ、エリシュ!」
今度は俺がエリシュの細い腕を牽引して、建物目掛けて地を蹴り進んだ。