王の候補3
「子供のままだと竜になれませんので」
メアリが言う。
竜になれない。の意味が分からなかった。
「彼は始祖に近い力を持っていますから竜になることができれば、とは思いますが」
「その竜になるというのは具体的にどのような事なんですか?」
着るドレスが変わるのか、剣を持つのが許されるのか。具体的にわからないので教えて欲しいと聞いたつもりだった。
「乙女、こちらをご覧ください」
メアリに声をかけられてそちらを見る。
そしてメアリの姿に驚いてしまう。
彼女の手だけがまるで爬虫類の様な鱗に包まれている。
こういえばこの国はこういう見た目の人が沢山いる。
「これが竜になるということですわ。
私達は始祖の血が薄くなっているので完全なる竜の姿にはなれませんが」
その後に続く言葉は濁されたけれど分かった。
マクスウェルであればもっと本物の竜の様になれるかもしれない。
「竜になる利点はあるの?」
「魔法も戦闘能力も上がります故、利点と呼べるのかもしれません。
けれど、因果が逆なのです。
我々の本来の姿が竜なのです」
この人の様な体にも勿論愛着はありますが、自我は竜です。
そう言われて、ショックの様なものを受けた。
少し見た目の違うだけの仲間なのだと思っていた人たちが全く知らない生き物だと知らされる感覚だ。
「じゃあ、私は竜の王様が誰かを見極めないといけないのね」
思わずぽつりと漏れた言葉にメアリは返事をしなかった。
けれど竜の王の相応しさは人の王がそれにみあっているかよりも私には難しい気がした。