①
「んー……やっぱり買い足したほうがいいかなぁ」
ライラがごそごそとあちこち掻きまわしているのは、自室の地下室。そこには普段使わない、特別なときに使うものや、昔使っていたものが保管してある。
あと一ヵ月ほどでクリスマスがくる。その飾りつけのチェックを母に頼まれたのだ。
あちこち箱やら引き出しやらを開けながら、ひとりごちる。昔から使っている、クリスマス飾り。確かにモノはあるのだけど、だいぶ古くなっているものもいくつかある。ライラが物心つく頃から使っているものもあるくらいだ。
ジンジャーマンのマスコット。
これはまだ使えそう。小さい頃に買ってもらって愛着もあるし。
鈴やボール。
これもまだ使えるでしょう。でも金属だからちょっとさびてるのもあるわ。それだけ買い替えようかな。
雪を模した綿。
これは……ちょっと汚れてきてるし、まるっと新しい綿に替えましょう。
カラフルなりぼん。
これは一昨年くらいに全部買い替えたんだったわ。
考えながら、ひとつずつチェックしていく。
そして最後にライラが手にしたのは、てっぺんにつける、大きな星。
それは金色。クリスマスツリーのてっぺんで輝くもの。
作りものではあるけれど輝かしいその星を見て、リゲルのことを思い出してしまった。思い出すだけで胸があたたかくなるし、そういう存在になれたことが嬉しいと思う。
リゲルとは恋人同士になってから、二度ほどデートに行った。今度こそ、立派な『デート』。
一度は前回のように街中へ行ったけれど、二度目は少し遠出をした。リゲルの手入れをした、隣街の公園の植木なんかを見せてもらったのだ。そこの公園は子どもが遊ぶところというよりは、歩いて景色を楽しむようなところで、だからこそ庭師に依頼がきたのだろう。
公園の植物たちは、よく手入れをされているのがひとめでわかった。樹は見目好く剪定されていたし、芝生もちょうどいい高さで生えている。そしてピンクの薔薇が綺麗に咲いていた。