③
そのような、家族への報告。済ませた翌日には友達へも報告した。こちらはそれほど難しくなかった。恥ずかしくはあったけれど。
「おめでとう!」
シャウラは、ぱぁっと顔を輝かせて、そっとライラの手に触れて握ってくれた。
「小さい頃から好きだったのよね。素敵だわ」
「おめでとう! あー、いいなぁー」
ミアも嬉しそうに言ってくれたけれど、こちらはすぐに羨ましい、という心が全開の声を出した。
「私も告白しようかな」
ぼそっと言われる。その意味はすぐにわかった。
一年近く前にライラと、そしてシャウラに話してくれたことがある。高等科にいる、ある先輩が好きなのだと。だからそのひとと近付くために高等科に進みたいと言っていたし、実際に勉強も苦手ではあるけれど、していると言っていた。
「散々焚き付けてきたじゃない」
ちょっとからかうような響きになった。リゲルに告白されたその日、リゲルをお出かけに誘うように言ってきたのはミア本人なのだから。自分はひとに焚き付けるだけ焚き付けておいて、ためらうなんて前向きなミアらしくない。
わかるけれど。ひとに好きだなんて、軽々しく言えるはずがないから。自分だってそれで散々回り道をしてしまったのだから。
「それはー……だってライラはずっとリゲルさんと一緒に育ってきたんでしょう。絶対断られないって思ってたから」
「そうだったの!?」
驚いて言ってしまったけれど、ミアは膨れたように言う。
「そうだよ。でも私は、あのひとと話したことなんて数回しかないし。私のことなんて覚えてくれてるかだってわからないし」
ミアらしくもなく不安げな声で言ったけれど、その言葉はすぐにしめられた。
「うーん、まぁ、当たって砕けろかなぁ」
ミアは自分に言い聞かせるように言い、そしてシャウラからライラの手を奪い取って自分で握った。ミアの、自分よりも少し小さな手。ふっくりしていてあたたかい。
「運を寄越せ~、リゲルさんに告白された幸運を分けろ~!」
「なにそれ」
ライラはつい、くすっと笑ってしまった。心づもりはもちろんわかったし、ミアが本気なのはわかったけれど。でも、それだけに。
「うん、分けてあげる。ミアも幸せになってほしい」
ミアの手を、ぎゅっと握り返す。
世の中の恋が全部叶うなんてことはない。けれど、少なくとも親友の恋は叶ってほしい。
しあわせになって、ほしいから。
自分の背中を散々押してくれた、大切な友達だから。