郷里
朝起きて用意された朝食をとる。
怖くは無かった。
迎えに来てくれたマクスウェルに魔法をこめた宝石をそっと手渡す。
込めた魔法は『貴方を守ってくれますように』。
あなたの大切な人がみつかりますようにとも祈ろうと思ったけれど、それはとても失礼なことかもしれないと思い直した。
誰かに同情されるにしても出会って数日の私にはされたくないと思った。
「……こんなものはいただけません」
マクスウェルが言う。
「我々の国は貴方に対して、厚遇してるとはとても言えません」
本来であればあんな試すようなことをすべきではないし、こんな狭い部屋で一人きりで食事をとることも無いんですよとマクスウェルが言う。
侍女が二人しかいないということも失礼に近い待遇らしい。
「これは竜の国への贈り物ではなくて、マックスあなたへのお礼です」
どうぞお受け取りください。
私がそう言うと、「私へ?」と聞かれた。
「私の力を信じてくださったお礼です」
私が言うと驚いたようにこちらを見る。
「私は自国では無能扱いでしたから。
あなたが初めて私に力があると言ってました」
自国での酷い事を吹聴するのは淑女にあるまじき行為だ。けれど正直に気持ちをお伝えしたかった。
「も、勿論家族は私に力が何も無くても優しくしてくれたから、幸せだったんですよ」
だけど、私が力があるものだと扱ってくれたのはこの人が初めてだった。
だからお礼がしたかった。
「受け取っていただけると嬉しいです」
マクスウェルは少し悩んだ後真っ赤な宝石を受け取ると丁寧にハンカチにではさむと懐に入れた。
どんな魔法をかけたのですか? とは聞かれなかった。
多分みえているのだろう。
彼に案内されたのは宮殿内にある聖堂の様な場所だった。
この国には王も神官もいないらしいのに不思議な場所だ。
「この場所は普段は使われていません」
そう言いながらマクスウェルは扉を開けた。
そこにあった物に、私は思わず悲鳴を上げそうになった。