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 三度目の航海は一人旅ではなかった。隣にはロイヒテン様がいる。ずっと一人で見ていた、甲板から見られる海上の光景もとてもうつくしく見えた。
 すっかり春になって、海の上でも風はもう冷たくない。
 三月も半ばを過ぎたある日。サシャは住み慣れた街を出た。家のこともバー・ヴァルファーのこともすべて整理して。
 今度は粗末な馬車ではなく王家の立派な馬車に乗せられて、隣街へ。街を抜けて港へ。そこから更に、船でミルヒシュトラーセ王国まで向かう。
 乗せられた船も勿論、今まで航海してきたときよりずっと立派な船だった。馬車だって丸ごと積んでしまえるのだ。それほどしっかりしていておまけに豪華な外装。
 そんな船に乗せられて、ロイヒテン様と並んで海を見てサシャは実感する。
 ほんとうに自分はお姫様になったのだ。
 今ではもう、勿体ないことだとは思わなかった。
 思いあがったりはしない。
 けれど、自信は持つ。
 このひとのお姫様になるのだ。ほんとうの意味で、ロイヒテン様の隣にいるひとになるのだ。

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