②
ロイヒテン様はあのあと、街中での大告白のあと、落ち着いてから聞かせてくれた。
ミルヒシュトラーセ王国に戻ることにした。
継承権が低い自分は、ミルヒシュトラーセ王国の王にはなれない。が、第二子以降の王族の通例として、王国の有する領を取り仕切る『領主』になるという道がある。
以前からそのひとつに収まれと言われていて、しかしロイヒテン様は婚約破棄を押し付けてきた国王陛下への不信感から、言葉どおりにはならないと国を飛び出していたのだ。そしてサシャの暮らす街で庶民のふりをしていた。
しかし、サシャとの関係を正すため。
もうひとつ、自分の身の振り方にけじめをつけるため。
国王陛下の辞令を正式に請けて、領主になる道を選ぶことにした。
そのために片付けることがたくさんあったのだと。
サシャにも黙っていなくてはならなくて、結果的に一ヵ月近くも姿を消すことにしてすまなかったと。
そのときもまたサシャは泣いてしまったのだが、すぐに涙は払って言ってのけた。「これだけ待たせたんだから、幸せにしてくれないと許さないわ」と。ロイヒテン様はサシャの大胆な言い方に苦笑して、「仰せのままに」と言ってくれたものだ。
ロイヒテン様も、自身の身辺を整理すると同時にサシャを妻として迎えることを、父である国王陛下へ認めさせたと言ってくれた。
お家(いえ)が没落したエリザベータ様との婚約を破棄してしまうくらい、プライドの高い国王陛下。
当たり前のように、「庶民の娘など」と大いに渋られた。
しかし、今はロイヒテン様のほうがしっかりと心を決めていた。
しぶしぶだったけどなんとか首を縦に振らせたよ、と笑って言ってくれた。
それで今は二人、これからの生活のために海の上。