②
ぼんやりと道に佇んでいたサシャは、どうやらうまく見付けられてしまったらしい。少し行き過ぎた程度で馬車は急停車した。
ばっと扉が開いて、こんな豪華な馬車に乗る人物には似つかわしくないほど勢いよく出てきたのは、やはりシャイ……ではなく、ロイヒテン様だった。
「サシャ!」
呼ばれてもサシャはぽうっとしていた。まさかこんなところで、こんなふうに再会するなど思わなかったのだ。
ロイヒテン様。今までお城で見たのと同じ。王子の姿をしている。正装で、髪を持ち上げて。
しかし服はクリスマスパーティーのときと同じくらい豪華な、盛装といえるものだった。
ロイヒテン様はやはり王子らしくもなく走り寄ってきて、勢いよくサシャを抱きしめた。
こうまでされては、ぼうっとしているどころではなかった。
しかし信じられない。再会できたことも、こんな形になったことも。
「いきなり居なくなって悪かった」
抱きしめる力強い腕。
彼の香り。
優し気な声。
すべてから彼がシャイであることをやっと理解して、その次には再会できた事実が胸をいっぱいに満たしてサシャの目から一気に涙を零させた。シャイにきつくしがみつく。
「なにがあったのよ! 私、わたし……」
「悪かった」
回りではどよめきが起こっていた。
馬車から飛び出してきた、明らかに王子である男性が、そのへんを歩いていたごく普通のワンピースを着た女の子を熱く抱擁しているのだから。
でもそんなことはどうでも良かった。