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 そこまで想像して、まずサシャは、それなら王室宛てに手紙でも書けばいいのかと思った。シャイ宛てか、もしくはほかのひと宛てにでも。
 でもそこで思い知った。
 渡す相手、持っていってくれるひとがいない。今まで手紙のやりとりをしたことはあるけれど、そのどれもが、おつきの一行経由だったのである。今はそんな、自分とミルヒシュトラーセ王室を繋ぐ存在はない。
 一応、郵便を出すことはできるだろう。調べればミルヒシュトラーセ城の住所、というか手紙の宛先くらいはわかるはず。
 けれどそれが無事届いたり受理されたりするかというと、大いに疑問だった。こんな不審なもの、と破棄されてしまう可能性もある。それにそれでは時間がかかりすぎる。
 では、直接訪ねていけばいいのか。もう二度もお邪魔しているし、門番の方だって衛兵さんだって、私のことを見知っているはず。門前払いはされないわ。
 思ったものの、そこまで辿り着くまでが問題であることに思い至ってサシャは途方に暮れた。
 ミルヒシュトラーセ王国に行くまでは、まず隣町まで馬車に乗って行き、そこから更に港行きの馬車に乗り、そしてそこから船だ。船だって数十分で着くわけではない。おまけに船旅など安いものではない。
 つまり……サシャの身分や稼ぎでは、ミルヒシュトラーセ王国まで行くための交通費がかかりすぎるのである。
 計算してみたけれど、丸々一ヵ月近くの生活費が飛んでしまうことになってサシャは途方に暮れた。お城に入れてもらえるかわかりもしないのに、これほどのお金、ぽんと出せない。
 どうしよう、それでも愛するひとを探しに行くべきなのか。
 そこで、ずっと抱いていた不安が迫ってくる。
 シャイは自分になにも告げずにいなくなった。
 それはまさか。
 ……考えたくなかった。


 ただ確かなのは。
 シャイはサシャになにも告げずに、サシャの前から綺麗に消えてしまったということだった。

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