③
そしてそれはどこでも裏付けられていった。
入ったことはなかったが、一応シャイの暮らす家の場所や部屋は知っていた。小さなアパートである。外階段がついていて、白い建物。そこそこ、綺麗。
なので翌日、そこまで行ってみた。建物は確かにあった。
けれどシャイの住んでいた、二階の一番はしっこの部屋の前には『入居者募集中』の紙が貼ってあった。
それを見たときは息が止まりそうになったものだ。
もう、ここに住んですらいない?
このアパートにではなく、この街に。
数分その場から動けなかったくらいだ。
震える足であとずさり、転げ落ちないようにしっかり手すりを掴んで階段をおりた。
カフェ・シュワルツェにもう一度訪ねて、今度はマスターにシャイのことを聞いても同じだった。
「はっきり理由は言わなかったんだよ。ただ、『きちんと働かないと思った』なんて言ってたよ」
マスターも困惑した様子で言ったものだ。
「別にウチだってしっかりした店だし、シャイだってちゃんと働いてたのに、それ以上なにか……ってのはおかしいと思ったんだけどね」
シャイのその『理由』は当然のように、サシャに王家のことを連想させた。
まさか、国に帰ってしまったのだろうか。国でなにかしらの職務に就くために。
サシャのその発想は、まぁ順当だっただろう。この街から消えたシャイは、国に帰ったという可能性は非常に高かった。