92 思い出しちゃった?
ジーニ様が魔力を可視化してくれたアルコン様たち三人を見ると、三人の体には薄くて均一な膜が出来ていました。
〖常にあんな感じで魔力を流していれば、直ぐに魔法を発動できるし、体に薄いシールドを張ってるのと同じだから、不意打ちを受けてもそうそう怪我を負うこともない。気配察知もできるしね。そして何より、魔力のコントロールトレーニングはもちろん、魔力量を増やすには最適なのよ〗
ジーニ様が目標はこれね!って言ってます。よく見て良く感じて覚えてって。アルコン様と精霊樹の精様は、目標ねと言われて
『ふふ。目標か…』
『あらぁ、アルコンたら嬉しそうねぇ。うふふ』
などと言いながら、ちょっと得意げに笑ってます。
「しゅご~い!でこぼこ にゃい~ きりぇ~」
サーヤがパチパチパチと拍手している。
『すごいね~お父さんかっこいいな~。ジーニ様、ぼくもあれやりたい。できる~?』
ハクもお父さんのギン様の綺麗な魔力を見て大興奮です。ギン様もそんな息子の反応に嬉しさのあまり
『ハク…』と言って涙ぐんでいると
『良かったな』ぐりっ
『良かったわねぇ』ちょんっ
『いや、あの…』
と、アルコン様と精霊樹の精様からちょっかい出されてます。
そして、自分でもやりたい!というハクにジーニ様はニコッと微笑んで
〖もちろんよ。できるようになるわ。練習すればね〗
ハクはもちろん、みんなも絶対出来るわって言ってくれました。
『分かった~。でも難しいね~ ぶあーの方が簡単なのにね~ 流す?と思っても動かないの~』
ハクはさっきから、魔力さん流れて~ってしてるんだけど、動いてくれないんだって。
〖じゃあ、ちょっとヒントね〗
そう言ってジーニ様はハクの体に触れて魔力を流します。すると
『わぁ動いた!これが流れるってこと~?』
ハクが体の中を何かが動いたってびっくりしてます。
〖そうよ。なんとなく分かったかしら?〗
『う~んと、体の中に川があって~それを流れてく感じ?でも、流れやすいところと、流れにくいところがあるよ~ 』
ハクはもう何かに気づいたみたいです。ジーニさまはその答えに嬉しそうに、うんうんってしてます。きっと百点な答えだったんだね。
〖そうね。それに気づけたのはとても偉いわ。そういう所は破れないように気をつけて少し広げて補強してあげて。そうね、治療する感じかしら?すこ~しずつね。流れやすいところと川の幅を揃えてあげる感じ。優しくね〗
ジーニ様が優しく言いながらまた魔力を少し流したように見えました。お手本を見せてくれたのかな?ハクは目を瞑って…
『優しく優しく~。広げて~なおして~。ん~できたぁ?』
呪文みたいにぶつぶつ言いながら頑張ってます。
〖そう。上手ね。そういう所がいくつかあるはずだから、その都度優しくね。慣れたからと雑にすると壊れちゃうからね。最後の最後まで気を抜かないで。体の中を常に隅々まで感じるの〗
『わかったぁ』
ハクは一生懸命ジーニ様の言う通りに頑張ってます。サーヤにできるのは応援するだけです。がんばれー!
〖一周しても続けてね。だんだん慣れてくるはずよ。でも丁寧に優しくね〗
『は~い』
〖それじゃあ、三人とも目を開けてみましょうか〗
ジーニ様が優しく言うと
『あれ~?』
一緒に頑張ってたフゥとクゥも目を開けると
『え?』
『さっきより』
「でこぼこ しゅくなくなっちゃ~」パチパチパチ
フゥとクゥは自分のことなのに信じられないって言ってます。本当だよ。信じて。
ハクは
『お父さんに近くなったかな~?』
って言ってます。ギン様が嬉しそうに『ああ。よく頑張ったな』
って褒めてます。良かったね!
〖そう。三人とも上手になったわね。今はまだ意識しないと出来ないと思うけど、これを繰り返すと息をするのと同じように出来るようになるわ〗
ジーニ様が初めてでこれだけで来たら上出来よ!って褒めてます。良かったね!
そして、ジーニは周りを見渡すと、
〖みんなもイメージ出来たかしら?〗
と森の子達を見た。
〖これを突き詰めれば、こんなこともできるようになるわよ?〗
そう言うと、今までは見えなかった光がジーニ様の体を包んだ。金色に輝く光は、それこそ指先はもちろんのこと、爪の先、髪の毛にまで。
「ふわあぁぁ じーにしゃま しゅご~い!!」
キラキラです!綺麗です!
〖ふふ、髪の毛だって魔力を通せば一本一本操れるようになるわ。こんなふうにね〗
そう言って、髪の毛一本がスーッと持ち上がって手も使ってないのに蝶結びが出来上がりました。
『すご~い!』
「しゅごいにぇ~」
ぴゅきゅ『『じーにしゃま』』
『『すごい』』
『『『ふわ~』』』
ちびっこ達みんなでジーニ様に拍手です!
〖ふふ、頑張ればみんなできるようになるわよ〗
『ぼく、がんばるよ~』
『『はい。がんばります』』
ハクとフゥたちも真剣にお返事です。
「あ~い♪」
サーヤもがんばるね!
ぴゅい『そういえば~』
きゅい『サーヤのは~?』
『妖精トリオが言ってた』
『ぼぼぼぼ ぶあーは?』
双子とフルーたちが何か思い出したようです。
「うにゅ?」
サーヤの?
〖あ~思い出しちゃった?見たい?〗
ジーニ様が困ったようにほっぺたポリポリしてます。
ぴゅいきゅい『『みた~い』』
『『見せて~』』
『ぼくも見たいな~』
ハクも参戦です。
〖ん~仕方ないわねぇ〗
ジーニ様、なんで仕方ないの?なんで困るの?そして、なんでサーヤを地面に下ろしてるのかな?
『あらぁ、見せちゃうの?ちょっと待って~』
精霊樹の聖様は、そう言って手で目を覆ってます。ハッと気づいたように妖精トリオは目を手で隠した上にうつ伏せになってます。何でしょう?そうみんなで首をひねっていると
〖じゃあ、いくわよ~〗
え?ジーニ様サングラス?この世界にもあるの?と思った瞬間……
ピカーと光ったと思ったら、ぼぼぼぼぼと特大キャンプファイヤーみたいな火が……違った光がぶあーっとサーヤの体から溢れ出ましたっ!
みんな名付けの時のサーヤのように、目が、目が~とゴロゴロしています。
涼しい顔して眺めていたジーニ様、精霊樹の精様、ちゃっかり目をしっぽで隠したギン様と、ちゃっかり便乗してたアルコン様。それから妖精トリオは次第に収まる光の中、ある一点を残念そうに見ていました。みんなも次第に落ち着いて、ジーニ様達の視線を追うと、そこにはまだ、「めが~めが~」とゴロゴロしているサーヤがいた…
〖自分の出した光にやられるなんて…〗
『サーヤぁ…』
『『残念すぎるな』』
『『『だいじょうぶ~?サーヤ~』』』
みんなしてお目目 隠してたくせに~っ
目が、目が~!!