休息4
マッサージが終わると室内用のドレスを着せ付けられる。
恐らくお仕着せであろうドレスはそれでも美しい刺繍が施されていてとても平時の時用には思えない。
鏡の前で髪の毛を軽くいじってもらう。
「つるつる……」
鏡に映った自分はまるで私じゃないみたいにピカピカだった。
シェアリがみつあみにしている髪の毛もかつてない程つやつやしている。
貴族の令嬢として自分自身の手入れを怠ってきたとは思っていない。
悲観していた時でも最低限自分の見目を保つことには注力していた。
けれど、これは正直次元が違う。
「やはり乙女様は磨きがいのあるダイヤの原石ですわ」
隣の衣装室に乙女にと贈られたドレスがありますわ。と言われる。
「ご覧になられます?」
明日の装いを相談しなければならない。私は頷く。
見せてもらったドレスの数は思ったよりも多い。
「きちんとしたものは採寸をしてから仕立てるとお聞きしております」
メアリがずらりと並んだドレスを目の前にして言う。
「これ以上ドレスが必要なのですか?」
私がメアリに聞くとメアリは困ったような笑顔を浮かべる。
それにしても胸元の空いたドレスが多い気がする。
メアリとシェアリの仕事着であるエプロンのついた黒のドレスは首元までしっかりとあるデザインだし、私が今着ているものも肩は出ていない。
社交界の流行が少し違うのかもしれない。
それに……。
最初に国主と呼ばれる人を見たときにその場にいた竜の人々を思い出す。
「皆様には、羽があるのですか?」
背中のあいたドレスを見てメアリに聞く。
羽のある人が随分といた。
あの竜の羽を生かすデザインであればオフショルダーのデザインが流行しているのもうなずける。
「ええ、ここにあるドレスはみな既成のデザインのものですので羽のあるご令嬢にも着ていただけるものが多いですわ」
あの場にはあまり女性と思われる人は多くは無かった、けれど女性もこの二人の侍女と違って竜に似た外見に近い人も多いのかもしれない。