休息3
つめたくて暗い階段をどのくらい歩いたのだろう。
足が思ったよりもつかれていた。
「御髪を洗わせていただいてもよろしいでしょうか」
明日は正式な謁見があると言われていた。真に高貴なものは黄金色の髪の毛を持つと言われている。
私の髪の毛は薄い水色の様な色で黄金には程遠いけれど、それでも少しでも綺麗な出で立ちで正式な場に望みたい。
「お願いします」
私がそういうとシェアリは「世界で一番のピカピカに磨いて差し上げますわ」と答えながら、トロリとした何かを手に取った。
「それは?」
「我が家門秘伝のシャンプーですわ。
はちみつと、薬草油が入っております」
地肌と髪の毛にたっぷりと付けられるともこもこと泡が立ち始める。
マッサージされるとおもわず、ほっと息を吐きだしてしまう。
体中がじんわりと温かくて、本当は考えなくてはならない事が沢山あるのに、だんだんと思考がぼんやりとしてきてしまう。
薔薇の匂いとはちみつの甘い香りが心地よくて、うつらうつらとしてしまう。
体力的にも精神的にも限界だったのかもしれない。
「どうぞ、お休みになってくださいませ」
優しい声に私は目をつむった。
ウトウトとしてしまったのは多分それからほんの少しだけだったと思う。
気が付くと私はバスルームに備え付けられた専用のベッドで体を揉み解されていた。
ここまで歩いてきた記憶がない。
女性の細腕でここまで運ぶことは難しいだろう。
私の目が覚めたことに気が付いたシェアリは私にむかって微笑んだ。
「あの、ここまでどうやって私を」
「私がお運びいたしましたわ」
「え?」
「私も竜の血を引く家系の端くれなれば」
シェアリさんはニッコリとわらった。
見た目で竜の様な特徴は一切無いように見える。
「力持ちさんなのですね」
私が答えると、シェアリはプッとふき出した後ケラケラと笑った。
それから、香油だろうか、いい匂いのするもので体全身を揉み解してくれた。
まるで王侯が受けるような贅を凝らした入浴に私はすっかり、とろんしてしまっていた。