休息5
「明日の礼装として相応しいドレスはどれかしら?」
私がメアリとシェアリに聞く。
二人は真っ青なドレスを一着取り出して「こちらがいいと存じます」と答えた。
それは深い水の底の様な色をたたえた美しいドレスだった。
「明日は貴方様の事を世界一美しく着飾らせてみせますわ」
シェアリが自信満々といった様子で言う。
「乙女は元々お美しいですから、何も心配なさることはありませんわ」
メアリが言う。
私に付き従うのは誰かの命令があるからなのだろうけれど、誰も知り合いもいない知らない土地でそう言ってもらうのが嬉しかった。
それで少しだけ泣きそうになってしまった。
「明日もありますので軽くお食事はいかがですか?」
メアリに言われてお願いした。
この部屋まで食事を持ってきてくれるというのでお願いした。
竜と人間同じものを食べるといいのだけどと少しだけ心配したけれど、出てきたのは見たことのある食べ物が出てきて安心してしまった。
ローストビーフにスモークサーモン。同じものを食べている国だ。
隣り合っている国なのだから当たり前なのかもしれないけれど、一口食べたら涙がジワリとあふれた。
「お口に合わなかったですか?」
メアリに聞かれて首を振る。
多分ホームシックの様な何か。
「私は故郷に帰れるのかしら……」
二人は何も答えない。帰れますと肯定する何かを持っていないのだろう。
ぽたりと涙がこぼれたけれど、それ以上は泣かないと決めた。
「このお料理、ホント美味しいです」
まだ涙声だったけれどそれでも食事をつづけた。
食べたものが私を作っていることは知っている。
食べなければ始まらない。
二人が給仕してくれた食事をただひたすら食べた。