休息
◆ ◆ ◆
「乙女のための部屋にご案内いたします」
マクスウェルはそう言った。
この人が命を賭けてくださったことも、私の魔法についても何の説明もなく静かにそう言った。
「あの……」
私が声をかけたけれど「今はお疲れでしょうから」と言っただけだった。
事実、マクスウェルが私を下ろした後、歩こうとしたけれどフラフラしてしまっている。
倦怠感と虚脱感に近い感覚が全身にある。今まで気が付かなかったけれど眩暈もする。
「魔法をお使いになった副作用と存じます。
今日はゆっくりとお休みください」
そう言ってエスコートされながら用意された部屋へ案内された。
その部屋は綺麗に整えられていて、若い女性向けだと分かる調度品で彩られている部屋だった。
「何か必要なものがあれば侍女を付けますのでお知らせください」
丁寧な言葉遣いに戻ったマクスウェルがそう言う。
「あの……。
先ほどはありがとうございました!」
何を伝えるべきなのか、伝えたらいいのか分からなかった。
そもそも状況が分からないのでどうしようもない。
けれど、少なくとも彼が今日私に命を預けてくれたことだけは事実だった。
これからどのようなことになるのかは分からないけれどそれだけは伝えたかった。
彼は少しだけ言葉を選ぶように押し黙ってしまった。
「乙女に忠誠を誓うのは民として当然ですから」
マクスウェルは結局当たり障りのないであろう言葉を選んで私に伝えてくれた。