偽聖女2
すべて決められて今日この場にいるのだ。
ここが謁見の間ではなく王子の執務室なのも全てはなるべく情報を広げないため。
「本当の聖女様は一体誰なのですか?」
私の問いに、陛下は逡巡した後、名前を答えてくださった。
その名は、召喚の儀で無能と誹りを受けた幼馴染の名前だった。
彼女の家門は今、なんの力も無い令嬢を抱えていると嘲られている。
「彼女はこのことを……」
「何も知らされていない」
私は思わずひゅっと息を飲んだ。
令嬢として相応しくないであろうその動作を咎める者は誰もいない。
彼女は何も知らされずただ、嘲りを受けながら暮らしているのだろうか。
令嬢間の派閥も変わったと聞く。
「サラは聖女になった後、きちんと幸せになれますか?」
私がした質問が想定の範囲外だったのだろう。第一王子はぽかんとした表情をした。
「勿論。彼女は彼女の王子様が幸せにしてくれるだろう。
そういう預言だ」
だから、君は私が必ず守ると約束しよう。
第一王子が私に言った。
実際、いつかおこるであろう口さがない人々の言葉から私を守るというのは無理なことは知っている。
けれど、ひと時の身代わりのために彼は自分の人生の一部を捧げると言ってくださっているのであれば。
「謹んでそのお話、お受けいたします」
私は淑女教育で磨いた微笑みを浮かべながらそう返した。