秋の新商品フェアの総括とあれこれ
秋の新商品を続々と投入したことで、コンビニおもてなしの各お店は大盛況となっております。
今までも、どの店も右肩あがりの収益で営業出来ていたのですが、その収益がすごい勢いで上昇したといった感じですね。
1週間が経過しまして、いつもの店長会議をナカンコンベにありますコンビニおもてなし5号店の2階会議室で開いたのですが、
「2号店、すっごい売り上げだよ」
「3号店も、ヤルメキススイーツを中心に大人気でございます」
「4号店もバッチリ売れてるよ、店長ちゃん!」
「5号店も大変好調でございますわ、リョーイチお兄様」
「6号店もバッチリです……ただ、相変わらずスカートが……」
各支店の店長のみんなからは、そんな声が聞こえて来た次第です。
僕が元いた世界で展開していた各種コンビニチェーン店も、季節ごとにこういった期間限定商品を投入して売り上げアップを図っていましたけど、その効果をあらためて実感した僕だったわけです、はい。
まだ少し気が早いですけど、去年もやりましたクリスマスケーキならぬパルマ生誕祭ケーキや、その後のおせち料理なども、少しずつ展開を考えておいた方がいいかもしれませんね。
これに関しては、各支店の店長のみんなにも、
「何か案があったら遠慮無く申し出てほしい。店員のみんなにもそう伝えてもらえるかな?」
そう伝えた次第です。
こういうのって、一人で考えているとどうしてもマンネリになってしまいがちですからね。
そうならないように、お客様達に飽きられないようにするためにも、広く意見を求めるべきと思っている次第です、はい。
僕のこのお願いで、今日の会議は終了しました。
◇◇
みんなにお願いするだけでなく、僕自身も何か案を考えないといけませんからね。
そう思った僕は、その日の夜、子供達が寝静まってから一度机に向かいました。
開いているのは、コンビニおもてなしの営業日誌です。
僕は、自分が店長に就任して以降、毎日この営業日誌をつけ続けています。
中には、この時期にどんなフェアをしたとか、その日の売り上げとか……そういった物を事細かく記載してあります。
当時の僕は、心のどこかで、
『これってば、コンビニおもてなしの生存記録みたいなもんだよなぁ』
そんな事を思いながら書いていました。
何しろ、あの頃のコンビニおもてなしはいつ潰れてもおかしくありませんでしたからね。
それでも、こうして事細かく記載しておけば、ひょっとしたらこれを書籍にして販売しませんか、ってな話が舞い込んできて……なぁんて事を考えたりもしていたわけです、はい。
僕が元いた世界では、何が金になるかわからないところがありましたからね。
コンビニ店員のつぶやきみたいなのをSNSに投稿してたら漫画になってドラマにまでなってとか、そこまでいかなくてもエッセイの亜種みたいな感じで書籍化されることが少なくなかった次第ですし。
まぁ、それを言いますと、僕もこの世界にやって来て以降のコンビニおもてなしの営業記録的な書籍を、魔女魔法出版から出版しているんですけどね。
おかげさまで、この書籍はなかなか好調な売れ行きだそうでして、僕の担当になった魔女魔法出版のダンダリンダからも
「店長さん、勢いにまかせて続刊も考えましょう。レシピ本もありですね」
なんて提案を受け続けているんですよね。
さすがに、そんなにネタがありませんので今は保留にしている次第ですが、いつかはまた出版してみたいな、と、思わなくもないわけといいますか……
そういえば、ダンダリンダが
『うちの出版社は、グルメシュランというグルメ本も発売しているのですわ』
と言っていました。
で、ありがたいことにコンビニおもてなし系列の
エンテン亭が☆5
おもてなし酒場が☆1
食堂ピアーグが☆4
を、それぞれもらっているんですよね。
ただ、この本の調査対象が
『飲食店に限る』
との制約があるため、コンビニおもてなし本体は対象から外れている次第です。
ちなみに、このグルメシュランの調査って、覆面調査員によって実施されている上に、事前に掲載の打診とかもないそうなんですよね。
ただ、その代わりといってはなんですが、店内の撮影画像は一切掲載しないとか、色々配慮はされているそうなんです。
まぁ、僕の世界にも似たようなグルメ本がありまして、その本も確か覆面調査員が調査をしていましたしね。
ただ、掲載前に許可を取ってたはずですけど、この世界の法律ではそこまでする必要がないらしいんですよね。
魔女魔法出版は、そういった法務部もしっかりしていますので、後にそういったトラブルもほとんどないそうです。
僕の世界では、出版業界といいますと斜陽といいますか、どこか右肩下がりな印象があったのですが、この世界の出版業界は、魔女魔法出版を筆頭にまさに盛況真っ盛りといった感じがひしひしと伝わってきます。
魔女魔法出版の書籍を大量に扱っているコンビニおもてなし3号店に定期魔道船が就航したおかげで、その売り上げが激増していることからもそのことがわかります。
これを受けて、コンビニおもてなし全本支店での書籍コーナーを大きくしている次第なんですよね。
「……秋の夜長の読書フェアとかもいいかもしれないなぁ」
僕は、そんな事を考えながら営業日誌をめくっていました。
すると、そんな僕の横にスアがひょこっと姿を現しました。
今日は、パラナミオ達の寝かしつけをしている際に、一緒に寝落ちしちゃっていたので朝まで起きないかな、と思っていたのですが、どうやら目を覚ましたようですね。
「……旦那様、それは、何?」
「あぁ、これかい? これは向こうの世界で営業していた頃の、コンビニおもてなしの営業記録だよ。この時期、どんなフェアをやってたかな、って思ってさ」
「……ふ~ん」
そう言うと、スアは僕の膝の上にのぼりまして、そこにちょこんと座り、僕が見ている日誌を眺めていきました。
「……旦那様、筆まめ、ね」
「そ、そうかな?」
日誌を見つめながら感心した声をあげたスアに、僕は思わず苦笑しました。
まぁ、お客さんが少なすぎて、時間だけは腐るほどありましたからね、当時は。
今はそんな暇なんてまったくありませんので、気付いたことを簡単にメモして、そこに各店に設置しているスア製の魔導レジから自動的に送信されてくる売り上げデータを集計した物を添付するくらいしか出来ていません。あとは、毎週行っている店長会議の議事録をしっかり残しているくらいです。
「スアは何か案があったりするかい?」
「……そう、ね……」
僕の問いに、スアは腕組みしながら考えこみ始めました。
伝説級の魔法使いのスアですけど、だからといって全知全能というわけではありません。
その気になれば、魔法で集客出来るのでしょうけど、それでは接客業とは言えませんからね。
僕とスアは、しばらくの間こうしてあれこれ意見を交換していきました。
スアと、こうして一緒にあれこれ考える時間も、嫌いじゃないんですよね。
……ただ、途中からスアがお尻をもぞもぞとさせながら、その下にあります僕の……えぇ、まぁ、そういった部分を刺激し始めまして……
はい、そこからほどなくいたしまして、僕はスアをお姫様抱っこしてスアの研究室にあります簡易ベッドへと移動していきました。
はい、ここから先は黙秘させていただきますね。