周辺散策1
学校中が大騒ぎになっていた、慌てふためく者もいれば、泣きじゃくっている女子生徒もいる。もちろん先生たちもそれに近い状況に陥っている。
校舎を出ると辺りは一面に木が生い茂っていた。一見普通の森だから何か特別な力で地球のどこかに飛ばされたと考えるのが普通だ。
しかし、地球には存在しない植物や動物の鳴き声がする。
「俺ら本当に異世界に来ちまったんだな。」
高野がそう言うと、委員長は神妙な顔で反応した。
「僕らの世界には、もう…戻れないかも知れないね。」
「意地でも戻ってみせるさ。」
吉川はそう言うと拳を固く握りしめた。
「吉川には妹がいるもんな」
「あぁ、入院している妹を励ましてやれなくなると思うと…」
(((シスコンかぁ…)))
それから道を必死に覚える委員長、周りを警戒する吉川と高野、そして何もしない俺というふうに役割分担した。
「なんで妙月の野郎だけ何もしてねぇんだよ。」
「彼はただ付き添ってくれるだけでいいさ、発案者だからね…」
委員長はすました顔でそう言った。
「なんかごめん。」
俺が謝ると高野を除いたほかの2人が「大丈夫」と言って来れたので少し気が楽になった。
「しっ!!」
吉川の顔が急に強張った。
「何かあったのか?」
最小限の声で委員長が訪ねる。
「何かが…集団で近づいてきてる…」
「ギャッ!!」
すると後ろにいた高野が悲鳴をあげた
「痛ぇ…矢だ、矢が刺さった!!」
すると次々にあらゆる方向から矢が飛んできた。
「みんな!岩陰に隠れろ!」
するとおそらく俺らを攻撃していたであろう者が姿を現した。
((((ゴブリン))))
嘘だろ?と内心思いつつも俺はあることに気がついた。
(このゴブリン…姿形が…似ている…ゲーム内のゴブリンに…)
俺がやっているのは異世界系のMMORPGだ…その中にもゴブリンというモンスターが出てくるのだが…
このゴブリンはあまりにも似すぎている。
もしこの世界がゲームと同じ世界観なのだとしたら…
「いいことを思いついた。」
「はぁ?お前の考えなんて誰が聞く………
高野の口を塞いで吉川が訪ねてきた。
「何か良い策が?」
「あぁ!これなら成功する!」
俺は作戦の内容を説明した。