④
じゃあね、ばいばい。
いつもどおりのやりとりでビスクとストルと別れて、サシャは帰路についた。帰路といっても今日はこれからバーの仕事があるので、家ではなくバーに向かうのだが。
先日、隣町で、そして今日、本で写真を見た、黒髪をオールバックにしていた『ロイヒテン様』。年頃もシャイと同じくらいに見えた。
シャイがもしもロイヒテン様と血族であれば、高貴な方なのだ。
これまでどおりに話してくれなくなったら寂しいな。
サシャはそう思ってしまい、ちょっとだけため息をついた。
そして思った。
言うべきかしら。隣町とお写真で似た方を拝見したのだと。
シャイは今までそんなこと、なにも言わなかった。
当たり前かもしれないが。王族の方と縁があるなんて、公言するようなことではないだろう。
でも、ただの他人の空似って可能性もあるわ。
サシャはそう自分に言い聞かせた。大体、そっちの可能性のほうがはるかに高いと思った。
そしてそれならシャイは、あはは、と笑い飛ばしてくれるだろう。
『俺が王族に似てる? そりゃ光栄だ』
『身代わり王子になんかなれるかもしれないな』
『ちょっと王子様のフリでもしてくるか』
そんなふうにふざけてくれるだろう。
きっとそうなる。そう思っておくことにした。