62章 付与金
仕事は一時間ほどで終了。今回の依頼は、非常に楽な部類に入る。
「アカネさん、おつかれさまでした」
仕事も終わったことだし、家でゆっくりとしようかな。
「今日の報酬はお肉です。セカンド牛、セカンド鶏、セカンド豚のセットと10000ゴールドになります」
「セカンド牛+++++」を食べている身としては、はっきりといって物足りない。高級国産肉を期待していたのに、安い外国産の肉を食べさせられるかのようだった。
10000ゴールドも少ないと感じる。こちらの時給からすれば高額だけど、アカネからすれば雀の涙にもならない金額だ。ボランティアをさせられた気分になってしまった。
「マツリさん、ありがとうございます」
社会人をやっていたからか、条件反射的にお礼をいってしまっていた。大人で身に着けた習慣というのは、こちらの世界になっても残り続けている。
「一度でいいから、セカンド牛を食べてみたいです」
安物の肉で満足できることは、ある意味では幸せなことである。できることなら、そちら側の人間になってみたい。
家に帰ろうとしていると、マツリから話を振られることとなった。
「前回はいい忘れましたけど、アカネさんは富裕層付与の対象となっています」
「富裕層付与?」
「年収が5000億ゴールドを超えた場合、超過分の1パーセントを寄付することになっています。セカンドライフの法律として定められています」
富裕層付与は現実世界に例えるなら、税金になるのか。こちらの世界にも税金システムがあるとは思わなかった。
アカネの収入は、5200億ゴールドほど。既に富裕層付与の対象になってしまっているではないか。アカネの収めたお金はどこに行くのだろうか。
「集められたお金は何に使われるんですか」
「フリースクールの維持費用、貧しい人への分配金、セカンドライフの住民の給料の上乗せなどに使用されます。分配金については、一ヵ月あたりの労働時間が150時間未満だと支給されませ
ん」
労働時間を決めておかないと、働かずに生きようとするものが出てくる。分配金の対象を定めているのは、いい判断といえるのではなかろうか。
「セカンドライフの街では、富裕層付与を払った人は過去に3人しかいません。アカネさんが付与すれば、2500年の歴史で4人目となります」
「セカンドライフの街」にそんな歴史があったとは。街が作られてから、100年もたっていないと思っていた。
「住民の生活はアカネさんにかかっています。貧しい人が非常に多く、日々の生活に困窮しているんです」
住民の生活を一人で支えることになるのかな。アカネはそのことを考えると、気持ちが重くなっていた。