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大武闘大会のその後

 辺境都市バトコンベで開催されていました大武闘大会も無事終了いたしました。
 選手として参加したイエロ・セーテン・グリアーナの3人は、残念ながら優勝こそ逃したものの、3人ともそれなりに勝ち進んでいましたので結構な賞金を手に出来ただけでなく、それ以外にも得るものが大きかったようです。

「さぁ、まだまだ精進するでござるよ」
「来年こそ優勝キ」
「師匠、この愚弟をもっともっとお鍛え頂きたいでござる」

 戻ってくるなり、3人は気合い満々の様子で、そんな会話を交わしていました。
 その時のポーズが、3人輪になって中腰になり、両腕を前方に差し出しながら力を込めていたものですから、某元プロレスラーの方の

『気合いだー!』

 のポーズをしているように見えなくもなかったわけでして…… 

 そんな3人を見つめていると、
「パパ、お疲れ様でした!」
 パラナミオ達が笑顔で僕の元に駆け寄ってきました。

 僕は、膝を曲げてみんなと目線を合わせると、
「パラナミオ、リョータ、アルト、ムツキ、それにアルカちゃん、みんな本当によく頑張ってくれたね、ありがとう」
 一人一人の名前をいいながら、みんなの頭を撫でていきました。
 みんな僕に頭を撫でられながら、嬉しそうに笑顔をうかべています。

「では、私はここで失礼いたしますわ。家で旦那様がお待ちくださっておりますので」
 魔王ビナスさんはそう言うと、転移ドアをくぐってブラコンベへと戻っていかれました。

「一緒に大武闘大会に参加したわけだし、旦那さん達も呼んで一緒に晩ご飯を食べませんか?」
 そうお誘いしたのですが、
「旦那様が手に入れた宝剣に夢中なものですから……今は家から出ないと思いますの」
 とのことだった。

 魔王ビナスさんの旦那さんは、元勇者で、宝剣マニアだそうですからね。
 そんな旦那さんがそこまで溺愛するほど、あの宝剣はすごい物だったってことなんでしょう。

 そんなわけで、僕は残ったみんなで食事をすることにしました。
 場所は、いつものおもてなし酒場です。
 今日は、元々大武闘大会の慰労会をするつもりだったので食堂を貸し切り扱いにしておいたんですよね。

 料理は、僕が作ります。
「パパ、私達もお手伝いします!」
 そう言って、すぐさまパラナミオ達がお手伝いに来てくれました。

 パラナミオも料理の腕前はあがってきています。
 この調子だと、いつでもお嫁さ……っと、僕は今、何を言いかけたのかな……まだまだ先の話ですね、うん。

 そんなパラナミオよりも料理の腕前が相当上なのが、アルカちゃんです。
 食堂をしていたお父さんの手伝いをしていただけあって、安心して見ていられるといいますか、
「パパ上様、簡単に一品お作りいたしますアルよ」
 と、自分で料理まで作れちゃうんですよね。
 
 メニューは、簡単な炒め物が多いですが、餃子に似た焼き料理も得意にしているアルカちゃん。
 どうも、僕の世界で言うところの中華料理系を得意にしているようなんですよね。
 多分、お父さんがそういう料理を作っていたのでしょう。

「アルカちゃん、今度僕と一緒に中華料理を作ってみようか」
「ほ、本当アルか!? パパ上様に教えて頂けるなんて感激アル!」
 笑顔でそう言ったアルカちゃんなんですが、
「は!? こ、これは、リョータ様の妻としての花嫁修業アルか!? はわわ、アルカ、目一杯がんばりますぅぅぅぅぅぅ」
 そう言いながら、アルカちゃんはその場で土下座していった次第です。
 
 なんと言いますか……ヤルメキスの元で作業をする人って、どうしてこう土下座するようになっちゃうんでしょうね……ケロリンといい、アルカちゃんといい……

◇◇

 その後、みんなで料理を作成した後、それをテーブルの上に並べていきました。
「では、イエロ・セーテン・グリアーナの今回の健闘と、来年の優勝を祈念いたしまして、乾杯!」
「「「かんぱーい!」」」
 僕の音頭で、みんな一斉のグラスを掲げていきました。

 子供達はもちろんパラナミオサイダーです。

 みんながスアビールで乾杯する中、僕はタクラ酒で……なんてことはありませんよ。
 はい、乾杯はみんなと同じスアビールでいただきました。
 何しろ、愛しい奥さんの名前を冠したお酒ですからね。
 嫌いなわけがないじゃないですか。

 そんな事を考えていると、スアが僕の側にテテテと歩み寄ってきまして
「……私も愛してる」
 そう言いながら僕に抱きついてきました。

 僕は、そんなスアを抱き寄せながら、お互いに笑顔を交わしていきました。
 
 会場の中心では、イエロ達がみんなに酒を注いでもらいながらご機嫌な様子です。
 本店の二階にありますおもてなし寮に住んでいるみんなも同席していますので、3人の周囲にはかなりの人だかりが出来ていました。
 気が付けば、常連客の皆さんまでもがイエロ達を慰労しに集まってこられていました。
「これは料理が足りなくなりそうだな」
 僕は、慌てて厨房へと移動していきました。

 食堂の中には、みんなの笑い声が飛び交い続けています。
 和気藹々とした雰囲気の中、僕は追加の料理を作っていきました。
 それを、スアがアナザーボディで配膳しています。

 慰労会は、いつもの飲み会のように未明近くまで続いていきました。

 さすがに途中でこっくりこっくりし始めた子供達を、僕とスアは巨木の家の寝室へと連れていきました。
「……ムにゃ……パパ上様……アルカの料理は嫁としてふさわしいアルか……」
 僕が抱っこしていたアルカちゃんがそんな寝言をもらしたものですから、
「うん、お嫁さんとしてばっちりだよ」
 そう返事をしたところ、アルカちゃんは寝ぼけたままエヘエヘと笑い始めた次第です。
 寝言に返事をしちゃいけないとか言われますけど……これぐらいは大丈夫ですよね。

 みんなをベッドに寝かしつけた僕がおもてなし酒場へ戻ろうとすると、そんな僕の手をスアが握りました。
「……旦那様……」
 上目遣いに僕を見つめながら、スアはその顔を赤く染めています。

 これはあれですね……いつものおねだりですね。

 僕は、スアをお姫様抱っこで抱き上げますと、そのままスアの研究室へと移動していきました。
 表向きはスアの仮眠用となっているベッドの上にスアをおろすと、僕はそんなスアの着衣を脱がせながら……おっと、ここから先は黙秘いたしますよ。

 いつものように仲良くいたしましたとだけ、申し上げさせていただきます。

◇◇

 翌朝。
 もうじき、オザリーナ商会温泉施設が完成しまして、同時にコンビニおもてなし6号店も出来上がります。

 そうなりますと、現在本店を使って実地訓練を行っているチュパチャップ達もそちらへ移動しまして、いよいよ本格的にお店をきりもりしてもらうことになるわけです。

 まぁ、研修期間の間も特に問題なく業務をこなせていたみんなですからね、心配することもないでしょう。
 あとで転移ドアでオザリーナ商会温泉施設へ出向いて、向こうの様子を確認しておこうかな、と思った僕なのですが……そんな事を考えている僕の目の前で、

「ひゃあ!? ま、また転んでしまったぁ」
 アレーナさんが、何もないところですっ転びました。

 その前方には、お約束のようにチュパチャップが……

「大丈夫です! こんなこともあろうかと、今日は吊りバンドでスカートを補強してあります」
 気合いの入った表情でそう言ったチュパチャップなのですが、すっころんだアレーナさんは、そんなチュパチャップの下着だけをズリッと……

「ひゃあああああああああああ、下着は補強してませんんんんんんんんn」
 チュパチャップは、真っ赤になりながらスカートを押さえていました。

 ……そもそも、補強していることを強調する前に、ダッシュで逃げておけば……

 そんな事を考えながらも、僕は、チュパチャップの下着を両手で握ったまま顔面から床に突っ込んでピクピクしているアレーナさんを、苦笑しながら見つめていた次第です。

 ……そうですね、アレーナさんの存在が一番の心配事かもしれません……

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