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やってやるぜ、大武闘大会! その7

 辺境都市バトコンベで開催されています大武闘大会。
 その2日目が始まりました。

 会場は今日も超満員で大盛り上がりです。

 そのおかげで、コンビニおもてなしの屋台も大盛況です。
 屋台はどこも人でいっぱいなんですけど、コンビニおもてなしの屋台はちょっと別格です。
 なにしろ、販売開始と同時にお客さんが殺到してこられまして、いきなり長蛇の列が出来たんですからね。そんな屋台は僕達コンビニおもてなしの屋台だけでした。

 その列は、お昼近くになってもまったく減る気配がありません。

 今日はコンビニおもてなしもお休みの日ですので、助っ人にきてくれたシャルンエッセンスやシルメール達元シャルンエッセンスのメイド達が屋台の手伝いをしてくれていますので、屋台がまわらないってほどではありません。
 行列も、スアのアナザーボディ達がうまく整理してくれていますしね。

 僕と魔王ビナスさんは、屋台をみんなにまかせて会場内を移動販売していました。

 昨日1日移動販売を行っていたものですから、お客さんも僕の姿を見つけると、
「おぉ! コンビニおもてなしの人! こっちにタテガミライオンの弁当だ!」
「こっちにはスアビールを頼む!」
 そんな声をあちこちからかけられた次第です。

 残念ながらタンクさんの姿がなかったもんですから、タクラ酒は……

 少々傷心な僕がたまたま通りかかった観客席にフラブランカさんの姿がありました。
 その隣にはたくさんの子供達が座っています。
「あら、コンビニおもてなしの店長さんじゃない、ちょうどよかったわ今から屋台にこの子達のお昼を買いに行くとろだったのよ」
「あ、そうなんですか。よかったらここでお売りしましょうか?」
「そうね、お願いしようかしら」
 フラブランカさんは笑顔でそう言いながら、タテガミライオンの弁当を購入してくださいました。

 僕から受け取った弁当を、フラブランカさんは隣に一列に座っている子供達に手渡していきます。
 それを、子供達は笑顔で受け取っています。
 その子供達は、様々な亜人さんです。
 どう見ても、フラブランカさんとは完全に種族が違いますし、実のお子さんではなさそうですね。

 ……被災した村の子供達を引き取ったとか、そんな感じかな

 詳しくは聞かなかった僕ですけど、とりあえずパラナミオサイダーをサービスさせてもらった次第です。

◇◇

 僕が移動販売をしている最中にも、大武闘大会の予選は進んでいます。

 個人戦は、対抗戦とは違いまして、

 ・相手が降参する・意識を失う
 ・場外に押し出す

 そのいずれかで決着がつきます。

 決勝は時間無制限ですが、予選はさくさく進めるために5分で行われます。
 時間切れの場合、その試合の審判の判断によりまして

『より多く攻めていて、有効打の多かった方』の勝ちとなるそうです。
 そして、団体戦とは違いまして、予選は負けたらそこで終了です。
 つまり、決勝トーナメントに残るためには勝ち続けるしかないのです。 

 そのため、どの試合も試合開始直後からクライマックスなもんですから、どの試合も大盛り上がりです。

 そんな中、コンビニおもてなし勢はといいますと……
 グリアーナは終始優勢に試合を進めていたものの、一瞬の隙をつかれて裸締めを決められてしまいそのまま気絶してしまいました。
 ……しかし、あの裸締めを決めた選手って、僕が元いた世界の女子プロレスラーで関節冷女って言われてた選手に似ていた気がしないでもないんだけど……

 セーテンは順調に勝ちを重ねていたのですが、ビキニ・アーマーの女の子相手に場外負けしちゃったんですよね。
「くそう、油断したキ」
 試合後のセーテンが悔しそうに言っていたように、試合は終始セーテンペースだったのですが、とどめとばかりに飛び上がったところを、ビキニ・アーマーの女の子が場外へ蹴り出したんですよ。
 あそこで蹴りを出せる反射神経はなかなか出来るもんじゃないと思うのですが……ここは、素直にビキニ・アーマーの女の子を称えるべきでしょうね。

 そして、イエロはと言いますと……
 この都市の領主であるゲルターさんと引き分けました。

 領主でありながら大会にも参加しているって、すごい領主さんですね、このゲルターさんってば。 

 試合は一進一退の攻防のまま終了。
 審判も甲乙つけ難かったと判断したため、引き分けとなったのですが……この場合両者失格なんです。
「カー、マジかぁ」
 ゲルターさんは天を仰いでいました。

 後でわかったのですが、このゲルターさんは過去に優勝経験があるため、本来であれば予選免除なのですが、
『領主だから優遇されてるって思われたくないからな』
 とのことで、自ら予選に参加なさったそうなんです。

 まぁ、それだけ勝ち上がる気満々だったのでしょう……その結果、負けに等しい引き分けになってしまったわけです。
 最初は悔しがっていたゲルターさんですが、
「お前さんのような猛者と戦えたんだ。光栄に思う」
 最後は笑顔でイエロと握手を交わしていました。

 イエロはと言いますと、
「いやぁ、拙者も強くなったと思っていたでござるが、まだまだ修行が足りないでござるな。また狩りをしながら修行でござる」
 すがすがしい笑顔でそう言いました。
 それだけ、ゲルターさんとの戦いが楽しかったのでしょう。

 僕は、
「来年こそ優勝だね」
 そう言いながら、イエロに向かって親指をたてていきました。
「おまかせくだされ店長殿! 来年こそ優勝して、あの闘技会場の真ん中でコンビニおもてなしの旗を振ってみせるでござるよ」
 イエロはそう言いながら僕に拳を合わせたのですが……今回、そんな旗なんて用意してなかった……
「テトテ集落のみんなに作ってもらったキ」
 僕の後方で、セーテンが、グリアーナと2人してコンビニおもてなしのマークである四つ葉のクローバーと、店名がでかでかと刺繍された旗を広げていました。

 ……い、いつの間にこんなものを準備してたんだ

 僕は、その旗を見ながら思わず苦笑しました。

◇◇

 そんなわけで、コンビニおもてなし勢は午前中の予選で全員敗退してしまいました。

 ですが、僕達コンビニおもてなしの戦いはまだまだこれからです。

 コンビニおもてなしの屋台は、午後も大盛況でした。
 イエロ・セーテン・グリアーナが加わったおかげでお客さんの回転が速くなっているのですが、その分さらにお客さんが増えている感じです。

 僕と魔王ビナスさんは、午後からも移動販売を続けていきました。
 観客の皆さんにすっかり顔が知れ渡っている僕達は、回っていく先々で呼び止められまして、すぐに周囲に人だかりが出来ていった次第です。
 そのため、僕と魔王ビナスさん2人合わせても、おそらく客席の半分も回れていなかったように思います。

 まぁ、それでも売れまくったので、よしとすべきでしょうね。

 こうして、僕達は大武闘大会終了まで、目一杯販売していった次第です。

 ちなみに、大会はウーニャさんと言う猫人の方が、物理魔法のマドモワゼルさんを破って優勝なさいました。

◇◇

 最終日ってこともあってか、昨日以上にお客さんが殺到したため、コンビニおもてなし屋台は優勝が決まったあたりで売る物がなくなってしまいました。

 売る物がないのに屋台をそのままにしておいたら会場が混乱するのでは、と考えた僕は即座に屋台を片付けまして、スアの転移魔法でガタコンベにあるコンビニおもてなし本店へと戻っていった次第です。

「みんなお疲れ様でした」
 みんなにそう声をかけた僕は、お疲れ様会を開催することを提案しました。
 その意見にみんなも大歓声を上げながら賛成してくれました。

 魔王ビナスさんの内縁の旦那さん達も呼ぼうということになりまして、魔王ビナスさんが早速呼びに戻っていかれました。

「パパ、すごかったですね大武闘大会」
 パラナミオが笑顔でそう言いました。
「でも、パパは絶対にでちゃダメですよ。怪我してほしくないですから」
 パラナミオは、真顔でそう言いながら僕の腕を引っ張りました。
「あぁ、大丈夫だよ。パパはあんなすごい人達に勝てるわけないからさ」
 心配してくれているパラナミオに笑顔でそう言った僕なんですけど……パラナミオやみんなを守るためなら、体を張ることもいといませんけどね……勝てるかどうかは別にして、ですけど。

 僕は、パラナミオの手を引きながら、お疲れ様会の準備のためにおもてなし酒場へ移動していきました。

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