オザクザク商会の後始末と、オザリーナ商会の今後
ポルテントチーネとジルルが逮捕されてから数日後。
コンビニおもてなし本店にやってきたゴルアが、王都の衛兵局に投獄されたポルテントチーネとジルルのことを教えてくれました。
まずポルテントチーネですが、現在衛兵局の最下層にある超危険犯罪者専用牢獄の中に入れられているそうです。
ここは常時魔法防壁が何重にもかけられており、鉄格子が十重に張り巡らされ、24時間監視がついているという超厳重体制の牢獄だそうでして、今までここから脱獄出来た犯罪者は1人もいないそうです。
もっとも、肝心なポルテントチーネは、黙秘権を行使して一切話をしないのだそうです。
自白魔法をかけられても一切口を開かないそうで、尋問魔道士達を唖然とさせているのだとか。
一方のジルルはといいますと……自白魔法をかけられた途端に、洗いざらいすべてのことを自供したそうです。
なんでも、ジルルは逃走していたオザクザク商会会長のオザクザクを捕縛し、森の奥深くに密かに建設していた秘密の本拠地の中に閉じ込めていたそうです。
そういえば、オザリーナの元にやってきたジルルってば、
『オザクザクから聞いたよ、会長就任おめでとう』
って言ってましたからね。
で、そのことも洗いざらい自白したため、芋ずる式にオザクザクも衛兵局に逮捕されたそうです。
嫌疑は、かつてグリード家と組んで違法行為を行っていた疑いだとか。
このグリード家って、ホントにあくどいことをしまくっていたそうでして、関わりのあった商会や商人は例外なく捕縛されて取り調べを受けているそうです。
ちなみに、オザクザク商会の中でグリード家の案件を扱っていたのはオザクザクだけだったそうなんです。おそらくですけど、甘い汁を吸いたくて他の従業員には手を出させなかったのでしょう。
まぁ、そのおかげでオザリーナは王都の衛兵局から派遣されてきた取り調べ官から、簡単な尋問を受けただけで済んだそうです。
このまま、2人ともおとなしく処罰を受けてくれればいいのですが……2人とも衛兵局から脱獄経験がありますからね……少し嫌な予感がしないでもないのですが、今はもう祈るしかありません。
◇◇
そんな中、オザクザク商会の温泉施設は急ピッチで工事が進んでいます。
この温泉施設と、ララコンベ温泉郷の間には石畳の街道を作成しまして、定期駅馬車を運行する予定にしています。
これでお客さんが両温泉郷を気軽に行き来出来るようになります。
工事が進む中、オザリーナはスアの転移ドアを使って王都へと向かいました。
待つこと2時間。
転移ドアをくぐって戻って来たオザリーナの後方には10人のメイドが付き従っていました。
「実家に頭を下げまして~、この10人を店員として雇わせてもらうことにしました~」
オザリーナの実家は王都の貴族とのことでしたけど、これだけのメイドをすぐに派遣出来るということは結構すごい家なんじゃないでしょうか……
まぁ、個人情報ですので、あまり深くは追求しませんけどね。
オザリーナと10人のメイド達には、温泉施設が出来上がるまでの間ララコンベ温泉郷の温泉宿で働いてもらうことにしました。
ここで温泉宿の従業員としての経験を積んでもらって、温泉宿経営に活かしてもらおうと思っている次第です。
ルアの話ですと、温泉施設が出来上がるまでには2週間ほどかかるとのことでしたので、その間、オザリーナ達にはララコンベ温泉郷の温泉宿で頑張ってもらうことにします。
ちなみにですが……オザクザク商会の会長になってしまったオザリーナですが、これを機会に商会の名前をオザリーナ商会に改めることにしたそうです。
なので、新しく出来る温泉施設も、オザクザク商会温泉施設ではなく、オザリーナ商会温泉施設になるわけです。
◇◇
そんな中、オザリーナ商会温泉施設の検証を行っていたブリリアンが、2日で調査を終えて僕の元にやってきました。
少し早い気はしましたけど、何しろオザリーナ商会温泉施設はまだ何も出来上がっていませんからね。
で、
案の定、ブリリアンは渋い顔をしています。
「……タクラ店長……オザリーナ商会温泉施設への出店ですが2つの選択肢があります」
「2つ?」
「はい、まず一つ目は「出店しない」……現状、これが一番妥当な判断です」
「で、もう1つは?」
「はい、オザリーナ商会温泉施設の将来性を見越して「コンビニおもてなし6号店を出店する」……確かに不確定要素は多いですが、オザリーナ商会温泉施設の発展にコンビニおもてなしは欠かせませんし、コンビニおもてなしが出店することでオザリーナ商会温泉施設が発展していく可能性が無きにしも非ずといえなくもないんじゃないかな……と」
ブリリアンの話では、コンビニおもてなしを出店するのはかなりリスクを伴いそうです。
ですが、コンビニおもてなしが出店しなければ、オザリーナ商会温泉施設に未来はないとも言っているわけです。
しばし考えた僕は、
「……よし、コンビニおもてなしを出店する方向で調整しよう」
そう決断しました。
確かにリスクはありますけど、絶対に失敗するわけではありませんし、それに儲けが出ないようであれば、出張所にしてコストがかからない営業に切り替えればいいか、と、思った次第です。
そんなわけで、僕はオザリーナ商会温泉施設で工事を続けているルアにお願いして、温泉宿に隣接してコンビニおもてなし6号店の店舗を作成してもらうことにしました。
今までコンビニおもてなしの店舗を何カ所も作成してくれているルアは、すぐに図面をひいてくれました。
僕とルアは、その図面を元にしてあれこれ相談していきまして、店舗の構造を決定していきました。
コンビニおもてなし6号店の店舗は、温泉宿とほぼ同時に出来るとのことです。
さて、となりますと、今度は6号店で働く店員を決めなければなりません。
幸いなことに、今のコンビニおもてなしには研修を受けている新人が6人います。
そのうちの3人をここに回し、あと3人くらいを既存店から移動してもらえば、なんとかなるでしょう。
そして店員が移動した店舗に、残りの新人を回せば人員が埋まる計算になります。
で……店長を誰にするかですが……あれこれ考えた結果、僕は2号店の店長補佐をしている単眼族のチュパチャップを店長に抜擢することにしました。
最初は5号店の時のように、僕が店長として勤務し、チュパチャップには店長補佐として僕と一緒にお店を切り盛りしてもらいまして、ある程度慣れてきたところで正式にお店を任せようとおもっている次第です。
2号店に出向いた僕からこの話を聞いたチュパチャップは
「ふえぇ!? わ、私が店長ですかぁ!?」
と、タダでさえ大きい単眼を大きく見開いて驚いていました。
そんなチュパチャップに、2号店店長のシルメールが
「さすが店長ですね、こいつなら問題なくやってくれますよ」
笑顔でそう言ってくれました。
最初は
「いえいえいえ、わたわたわた、私にそんな大役なんて……」
と、必死に固辞していたチュパチャップなのですが、僕とシルメールからお願いされ続けた結果。
「わ……わかりました……不肖私チュパチャップ……一生懸命頑張らせて頂きますぅ」
そう言ってくれた次第です。
あとの店員としましては
新人からは
タルマンさん
リンさん
アレーナさん
既存店からは
2号店で勤務していた元シャルンエッセンス家のメイド2人
以上の人事異動を行うことにしました。
残りの新人ツバキさん・シャゲさん・ロキくんの3人は、3名が抜けた2号店に勤務してもらうことにしています。
2号店には先に新人のアーリアさんを配属していますので新人が若干多めになってしまいますが
「あぁ、大丈夫だよ任せて」
シルメールが笑顔でそう言ってくれた次第です。
とりあえず、正式な移動はお店が出来てからということになりますが、6人には実地訓練を兼ねて本店で勤務してもらうことにしました。
魔王ビナスさんをはじめとする本店スタッフはサポートに回り、チュパチャップを店長とした6人で本店の営業をしてもらうことにした次第です。
こうして、コンビニおもてなしも一歩前に進もうとしているわけですが……果たしてどうなりますやら……