16 鑑定の前に新しいお友達
優也お兄ちゃん達のお話しは、なかなか終わりませんでした。でも分かった事がいっぱい。僕達は今、違う世界に居るんだって。タマ先生が話しを聞きながら、すぐに僕に分かりやすく教えてくれたよ。
僕達が暮らしてた所は地球って言うんだって。えっとね、地球の日本って所に住んでたの。でも、ここは日本じゃなくて、地球でもなくて、全然違う場所なんだって。
それから僕達は? えっとそうじゃなくて、たぶん優也お兄ちゃんのことだってタマ先生は言ってたけど。優也お兄ちゃんはここに、魔王を倒す勇者として呼ばれたみたいです。これも絵本と一緒でした。魔王を勇者様がやっつけるお話の絵本、僕大好きなの。勇者様、とってもカッコいいんだよ。
そのカッコいい勇者様になるために、優也お兄ちゃんはここに呼ばれたんだって。
『たぶんよ、たぶん。変な感じはするけど。私達じゃないはず』
タマ先生がボソッと、何か言ってたけど聞こえませんでした。
それでね、僕最初はとっても喜んでたんだけど、お話が続いてたら、よくないお話もありました。僕達、もうお家に帰れないんだって。王様がそう言ったの。ここへ来て地球に帰った人は今までに居なくて、僕達はこれからここで暮らさないといけないみたいなんだ。
お家に僕のおもちゃや聖也のおもちゃ、いっぱいあるのに。それに絵本もいっぱい。もう遊べないの?
そんなことを思ってた僕だけど、途中でそれどころじゃなくなりました。1人のおじさんが優也お兄ちゃんを怒鳴って、せっかくニコニコに戻った聖也が、また怖がってお兄ちゃんの後ろに隠れちゃったんだ。
僕もタマ先生も、すぐにおじさんを威嚇します。これ以上聖也を怖がらせたら、僕許さないよ!!
そしておじさんはまた怒鳴ろうとして。僕が飛び出そうとした瞬間、王様がおじさんのことを怒りました。それでおじさんは椅子に座り直したんだけど、ずっと僕達を睨んでて。聖也はどんどんしょんぼりに。
『タマ先生! あいつのこと怒って良い?』
『ダメよ! 今は動いてはダメ。我慢して座っているの。今私達が何かしたら、優也も聖也も大変な事になるかも。今は我慢、我慢よ』
タマ先生にそう言われて、僕はおじさんを怒るの我慢しました。
その後もお話は続いて、やっとお話が終わったと思ったら、今度は王様じゃなくて、別のお爺さんが部屋に入って来ました。これからやる事があるみたいです。何かね、優也お兄ちゃんの力を調べるって。勇者様の力がどんなか、お爺さんなら分かるみたい。
お爺さんが近づいてきたら、聖也がお兄ちゃんの洋服をギュッと握りました。そんな聖也を見て、お爺さんはニッコリして、そっと手を出してきたんだ。
それからすぐにお爺さんの手が光り初めて、その光が消えたら、お爺さんの手の平に、とっても小さい鳥さんが乗ってました。小さくて、綺麗で、可愛いい鳥さん。小鳥さんみたいです。
何処から出したの? 僕はお爺さんの手を下から覗いたり、ちょっと立ち上がって、上から見てみたり。でも全然分からなくて。もしかして、これって魔法? 絵本で動物が出て来る魔法があったはず。それと同じ魔法かな?
わぁ。また魔法だよ。魔法使える人いっぱい。僕も魔法使ってみたいなぁ。
「ピヨしゃん!!」
小鳥さんを見た聖也は、ニッコリとっても元気に。
「可愛いですね」
「つい最近なんじゃが、森で保護したんじゃ。親鳥は周りにいなかったから、ワシが連れ帰ったんじゃが。どうじゃろう。この子の友達になってくれんかの?」
「良いんですか?」
「少しでもこの子を落ち着かせてあげんとの」
「そうですか。ありがとうございます。聖也、この鳥さんとお友達になってほしいって」
「おともだち?」
「ああ、そうだ。お友達だ」
小鳥さん、僕達とお友達になりたいんだって。優也お兄ちゃんが聖也が持ってたコップを机に置いて、聖也を下に降ろしました。それからお爺さんが聖也に手を出してくれって。
「良いか、これからお爺さんが手に小鳥さんを乗せてくれるからな。そっとじっとしてるんだぞ」
「うん!!」
「では、良いですかな?」
聖也がお手々を出して、お爺さんも聖也の前に手を出すと、小鳥さんが自分から聖也の手に乗ってきました。それからちょっとだけキョロキョロして、僕とタマ先生を見た後は優也お兄ちゃんを。最後に聖也を見て。その後ちょこんって、聖也の手のひらの上で座ったんだ。
「えちょ、ぼく、せいくんです。こんにちは!!」
『こんにちは』
あっ、小鳥さんの言葉ちゃんと分かる! 良かった、分かんなかったらどうしようと思ったんだ。
「にぃに、ピュイって」
「そうだな」
僕達も挨拶しなくちゃ。
『こんにちは。僕はポチです』
『私はタマよ』
『はじめてみるまじゅう。ぼくのことばわかる?』
『うん、分かるよ! あと、僕達魔獣じゃないよ。僕達は動物』
『どうぶつ?』
『後でゆっくりお話しましょう? あなたの名前は?』
『ボク、なまえない』
『そっか。じゃあ何て呼べば良いか、後で決めようね』
『うん。ボク、このにんげんなんかすき。ポチたちもすき。おともだちいい?』
『うん!!』
『勿論よ!!』
僕達がそう言うと、小鳥さんは立ち上がって、ぱたぱた、ちょっとよろよろしながら、今度は聖也の頭の上に。それで乗っかったらまたポスンって座りました。それでちょうど良いって。ピッタリだって言ったよ。
「ほほ。これはこれは。ここまですぐになれるのは珍しいですぞ」
「そうなんですか?」
「もう、リラックスしております。普通ここまで懐くには時間がかかるのですじゃ」
僕達に新しいお友達ができました。可愛い小鳥さん。後でお名前どうするか、みんなで決めないとね。