56章 ミライの訪問
ミライはテーブルに並んでいる食材を見て、食事中であることを察したようだ。
「食事中だったんですね。失礼しました」
「よかったら一緒に食べようよ」
「私がいただいてもいいんですか」
「いいよ。一緒に食べよう」
いつもは一人で食事をしているけど、たまには二人で食べてもいいかな。一人のときとは違った、おいしさを感じられる。
「パーティーみたいな豪華な食事ですね」
「今日はストレス解消のために、豪華な食事を準備したんだ」
「一人で食べられるんですか?」
「私は無尽蔵の胃袋だから、どんなに食べても平気だよ」
どれくらいの胃袋なのかを確かめるために、安い食パンで実験したことがある。5000枚以上を軽く食べられたことから、お腹に食べ物は溜まらないと思われる。
「太らない体質なのは、とっても羨ましいですね」
「そうだね」
現実世界では、1キロの体重増減に気を使っていた。好きなものを食べたくとも、太ったところを見られたくないという思いが強かった。
「牛肉を食べてみてよ。とってもおいしいよ」
何の肉なのかを伝えると、ミライは口にするのを躊躇する。食べてから種明かしをしようかなと思う。
「いただきます」
ミライはフォークを使って、肉を口に運んだ。
「フルーツみたいな肉汁なのに、肉の繊維、脂などをはっきりと感じます。これは何という肉ですか?」
「『セカンド牛+++++』という、超最高級のお肉だよ」
「これが幻の肉なんですね」
「そうだよ。とってもおいしいでしょう」
「私が最高級の肉を食べてもよかったんですか?」
「いいよ。調子に乗って買いすぎてしまったんだ。冷蔵庫には1000グラムくらいあるよ」
無尽蔵の胃袋なのをいいことに、大量に買いすぎてしまった。早めに消化しなければ、最高級肉を腐敗させることになる。
ミライはテーブルの上を見回していた。
「他の食材もとってもおいしそうですね」
「全部が最高級のものだからね」
「少しだけ食べてもいいですか?」
「いいよ。好きなだけ食べてよ」
「遠慮なくいただきます」
ミライはいろいろな食材を口にする。その様子を見ていると、自然と笑みが湧いてきた。