第6話 何故、物の怪でもないのに鋼の甲冑を身に纏う?(5)
僕は金髪の髪色を持つ、何故か、鋼の甲冑を身に纏う女性へと力強く呼びかけるのだ。何度も何度もね。
でもさ、彼女は、僕の言葉、呼びかける台詞に対して。
「ううう~」と。
大変に苦しそうに声を漏らすだけなのだ。
それと?
「ううう~。お、お願い。だ、誰か、み、水をください……」
そして?
「お、お願いします。お願いします……」と。
悲痛な声音で叫び、漏らし、呟き、苦しそうに嘆くだけなのだ。
それが、また? 誰に向けて吐かれ呟かれ、嘆願をしているのかまでは、僕自身もわからない。わからないけれど。
この場、この周り。この中国山地、県境に近い山の中にある農協の購買部には、もう僕だけしかいない。いないのだ。
だから僕が、己の膝の上に頭を載せる金髪の女性を救護、介護することにすると、心に固く決め、決意をするのだった。
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