52章 探索
一〇分ほどで、裏世界の基地にたどり着いた。
「ここが基地となっています」
基地と名前がついているだけあって、立派な建物をしている。
「ここでは、空を飛べる自動車を開発中です」
人間世界で実現するといわれていたものの、日の目を見ることはなかった。理屈は簡単ではあるものの、組み立てるのは難しいのかもしれない。
「アカネさんみたいに空を飛べればいいのですが、我々にはそんな力はありません。それゆえ、空を飛べる道具を開発中なのです」
アニメを飛べるのは、どこかの一部の超能力を持っている者だけだ。通常の生物には不可能である。
「開発したあかつきには、裏世界をいろいろと見たいです。我々の知らないところが、たくさん存在します」
裏世界の住民は全てを把握しているわけではないのか。裏世界は思った以上に広いのかもしれない。
「中は機密情報となっているので、お見せすることはできません」
建物内に興味はあったものの、裏世界の住民ともめごとになるリスクがある。中に入らないほうが無難である。
「次は広場に案内します」
見た目は小さいのに、いろいろな場所があるようだ。裏世界の奥は深いのかもしれない。
裏世界の住民は疲労が激しいのか、息を大きく切らしていた。
「体力が切れてしまいました。少しだけ休ませてください」
「無理をしなくてもいいですよ」
「アカネさんは、身体は疲れないんですか」
「私は身体が疲れないスキルを持っているの。年間365日、24時間勤務できるよ」
「人間の形をしているのに、中身はガソリンタンクみたいですね」
裏世界の住民は横になってしまった。少しだけとはいっていたものの、長時間になる予感がしていた。
「それだけの能力を持っているなら、いろいろな仕事ができますね。アリアリトウにア
カネさんのことを伝えて、仕事を回すように手回ししましょうか」
心の冷や汗をかいているのを感じた。とんでもないことを押し付けられなければいいけど・・・・・・。
「アリアリトウの仕事を一つ終了させると、莫大なお金が転がり込んできます。アカネさんの生活は裕福になりますよ」
収入に困っているならいいけど、お金を持て余している立場である。仕事が増えることよりも、スローライフができる環境を整えたい。
「私は大丈夫です。現実世界で大金を得ています」
「せっかくのスキルを放置するのは、もったいないような気がします。いろいろな方のために、役立てたほうがいいでしょう」
アリアリトウに連絡を入れられて、仕事を増やされるのは確実な情勢だ。アカネの未来はどうなってしまうのだろうか。
仕事は充分にできたことだし、そろそろ現実世界に戻ってもいいかな。依頼主に仕事を報告する義務がある。
「私はそろそろ帰ります」
「少しだけお待ちください。裏世界の名物を持ってきます」
裏世界のお土産はどのようなものなのだろうか。アカネは期待に胸を膨らませていた。
裏世界の住民は疲労から回復したのか、起き上がることとなった。エネルギーが回復するのは、思っていた以上に早いのかもしれない。