49章 裏世界にバリアをはる
百年前に裏世界の侵略を企んでいた人間が、我々の命を助けてくれるとは思いませんでした」
裏世界が人間を敵対視するようになったのは、実際に侵略した歴史があったからなのか。過去の過ちというのは、何十年、何百年経ったとしても消えるものではないようだ。
アカネは裏世界を録画するためのカメラを取り出すと、ストップをかけられてしまった。
「写真は撮らないでください。我々の生態を知られたら、いたずら半分でやってくる人間が必ず
現れます」
「普通の人間なら余裕で勝てますし、空気のないところには入ってこられません」
超能力を持っているからこそ、アカネは裏世界に足を踏み入れることができた。普通の人間なら、そのようなことはしないと思われる。
「あなたはいい人だとしても、他はわかりません。裏世界の情報を聞きつけて、侵入されないとも限らないです」
人間界ではいろいろな技術を生み出していく。その中に、裏世界を滅ぼすようなタイプが含まれていないとは言い切れない。
「プライバシーの観点から、住民の写真などは取らないようにします」
「それでも・・・・・・」
口調からすると、よほどのことがあったのは間違いない。アカネはダメもとで聞いてみることにした。
「どんなことがあったんですか?」
裏世界の住民は空を見上げる。その後、ゆっくりと瞬きを繰り返していた。
「人間が裏世界征服のために、こちらを攻め込んできました。全人口の8割は死亡してしまい、残りの住民で街を守ることとなりました」
人間の奇襲攻撃により、裏世界は崩壊の危機を迎えていたのか。アカネはそのことを知らなかった。
「人間侵略後は、人間は悪だ、人間の気配を察したら必ず殺せという教育を徹底的にやるようになったんです。殺されてしまってからでは、遅いですから」
自分たちが犠牲になるくらいなら、他者を傷つけても構わない。戦争の理論をそのまま、適用
しているかのようだ。
「数百年ぶりに人間がやってきたときは、裏世界を滅ぼそうとしているのかなと思いました」
人間が侵略したところに、仕事の依頼をするのはどうなのかな。依頼者の精神状態はおかしい
といわざるを得ない。
「人間とは思えない超能力を持っているので、完全にダメだと思いました。我々は全滅を覚悟しました」
見た目は人間ではあるものの、中身は完全なる別物である。
「思っていたよりも、いい人だったので安心しました」
フユを助けたことにより、よい印象を与えることができたようだ。
「どうしたら、写真を撮らせてもらえますか?」
「人間が絶対に侵入しないことを保証できるなら、写真を撮ってもいいですよ」
「わかりました。人間が侵入できない結界をはることにします」
アカネ以外の人間が侵入できないよう、強力なバリアをはることにした。通常の人間では、突
破するのはまず不可能だ。
「これでいけるはずです。信用していないのであれば、いろいろと試してください」
「わかりました。バリアがどれくらい強力なのかを試したいので、ついてきていただけますか」
バリアが問題ないことを証明されれば、仕事に取り掛かれるかもしれない。アカネはかすかな期待を抱いていた。