47章 探索
裏世界ではカレーライスらしきものを食べていた。人間界以外にもそのような食べ物があるのかなと思った。
カレーライスのようなものを食べている、裏世界の住民がこちらを振り向いた。
「人間だ。攻撃しろ」
裏世界の住民は人間を見かけたら、条件反射的に攻撃を仕掛けるようにプログラムされているのかな。人間にとっては脅威しかない生き物だ。
電流の魔法を唱えようとしている住民に対し、攻撃を仕掛けてきたばかりの男がストップをかける。
「やめろ。お前ごときが叶う相手ではない。逆らおうものなら、あっという間にあの世行きだぞ」
アカネが本気になれば、裏世界を消滅させることができる。レベル95というのは、ありとあらゆるものを支配する権利を有する。
住民は電流攻撃をやめなかった。アカネはどれだけ無力なのかをわからせるため、シールドをはることにした。
シールドは攻撃を完全に遮断する。電流攻撃は跡形もなく、消し飛んでしまった。
住民は炎を纏った。電流がダメなら、炎攻撃をしようということか。
攻撃をされ続けていては、前に進むことはできない。乱暴なことはしたくないものの、力の差を見せつけておこうかな。
「電流よ 我に力を付与せよ 電流よ 我を最大限に輝かせよ」
アカネは全身に電流をまとうと、裏世界は大きく揺れることとなった。これはまずいと思ったので、すぐに解除する。
電流攻撃、炎攻撃を仕掛けてきた裏世界の住民は、気絶してしまっていた。威勢はいいものの、肝心の中身はダメダメだった。
「この人間は、卓越した力を持っている。全員の力を合わせたとて、叶う相手ではないのだ。逆らおうものなら、皆殺しにされるぞ」
アカネが本気になれば、数秒で裏世界を消滅させることができる。レベル95は、ありとあらゆるものを支配する力を持っている。
裏世界に住んでいる、45くらいの女性がこちらにかけつけてきた。全身から汗を拭きだしていることから、緊急事態なのを察する。
「娘のフユが危篤だ。誰か治療できるものはいないか」
病人の治療はどこの世界においても、最優先課題になりうるのか。裏世界も基本的な構造は、人間界と同じのようだ。
「お医者さんはいないんですか」
「医者はいるけど、フユの病気は治すのは無理だ。人間界に例えるなら末期癌にかかっているような状態だ」
膵臓癌などと同じ部類の病気なのか。医者がいたとしても、治療するのは不可能だ。
アカネは回復魔法を使えるのを思い出す。あの能力を使えば、癌クラスの患者を助けることができるのではなかろうか。
「私がやってみましょう」
裏世界の住人の瞳がきょとんとしていた。
「病人を治療できるんですか」
現実世界においては、人間の足を修復させることができた。レベル95だけあって、魔法スキルは異次元レベルに達している。
「うまくいくかはわかりませんけど、やってみたいと思います」
アカネは大きな賭けに出ていることに気づいた。回復魔法で失敗しようものなら、裏世界にいられなくなる。すなわち、依頼については失敗という結果に終わる。
母親は悩むかなと思ったけど、あっさりとしていた。
「私はあなたの力にかけてみたいと思います。先ほどの電流は只者ではありませんでした」
アカネなら見ず知らずの人間に、娘の命を託したいとは思えない。藁をもすがるような気持ちになっているのは、娘は明らかに助からないことを知っているからである。
母親は自分の娘のところに案内する。急いでいるはずなのに、ゆったりとした足取りだった。娘を助けたいという意識は気薄なのかなと思った。