46章 新たな仕事
アカネは裏世界に到着した。
裏世界に到着するために、空を飛ぶスキルを利用。「セカンドライフの街」では、空を飛べないものは仕事できない世界なのかもしれない。
事前情報によると裏世界に空気は存在しない。それにもかかわらず、アカネはピンピンとしている。現実世界で生きているときは考えられなかった。
裏世界はどことなく殺伐としている。戦後の廃墟さながらだった。
裏世界には、100軒くらいの家が建っていた。誰も住んでいないと予想していただけに、意外な印象を受ける。
裏世界を探索しようかなと思っていたときだった。ロボットと人間の中間のような生物がこちらにやってきた。
警戒をしているのか、はっきりと距離感を取っていた。歓迎ムードは一ミリたりとも感じなかった。
「おまえは誰だ」
「アカネといいます」
「おまえは人間なのか」
「はい。生粋な人間です」
「人間が空気のないところでどうして生きられるのだ。酸素ボンベを携帯しているのか」
通常の人間は空気のないところで生きるのは無理だ。アカネは特殊能力を持っているため、空気がなくとも生きられる。
「信じてもらえないでしょうけど、空気を吸わなくても生きられるスキルを所持しています」
裏世界の住民はそんなことはどうでもいいとばかりに、話を次に進める。
「お前は何をするためにやってきたのだ」
アカネは目的を単刀直入に伝える。
「宇宙の探索に来ました」
裏世界の住民の目が赤く光った。アカネは危険な雰囲気を察する。
「人間はいつもそのようにいって、我々の世界をかき乱す。地上に住んでいる生物で最も信用できない」
アカネはこれについては否定することはできなかった。人間という生き物は悪知恵を用いて、他人を利用するばかりを考えている。アカネも人間の悪知恵のせいで、ひどい目に何度も遭わされた。
相手側の身体がピカピカと光る。その後、強烈なレーザーが発射されることとなった。裏世界の人間は、こちらを亡き者にしようとしている。
アカネは攻撃を全身に受けるも、かすり傷一つなかった。相手の攻撃を完全無効化するスキルは、裏世界においても適用されるようだ。
裏世界の住民は、アカネがピンピンとしていることに驚いていた。
「攻撃がどうして効かないのだ。普通の人間ならひとたまりもないはずだ」
裏世界の主は再度、攻撃を繰り出す。アカネは二度目の攻撃を受けるも、かすり傷一つ負わなかった。
裏世界の人間は、いろいろな手段を用いて攻撃を仕掛ける。アカネは全身で受けるも、痛くもかゆくもなかった。
裏世界の住民はエネルギーが切れたのか、攻撃をストップさせる。威勢はよかったものの、肝心な中身はダメダメだった。
「お前は何者だ。本当に人間なのか」
アカネは威嚇するために、風の魔法を唱えようかなと思った。乱暴なことはしたくないものの、話し合いで解決できないのであれば、実力行使もやむをえまい。
「風よ 我に力を与えよ 全てのものを吹き飛ばせ」
裏世界の住人はおぞましい魔力を感じたのか、全面的に降伏することとなった。
「やめてくれ。命だけは助けてくれ」
命を狙おうとしたくせに、命乞いをするとは。人間の形をしているだけあって、考えていることは似たようなものだった。
おまえたちこそ、最大の卑怯者ではないかと思ったものの、口にするのはやめた。本音を伝えてしまったら、今回の業務に支障をきたすことになる。依頼者にとって一番重要なのは、成果をあげることなのである。
アカネは冷たい笑顔で、裏世界の住人に話しかける。自分の方が強いとわかったからか、態度は三割から四割くらい大きくなっていた。
「自由に探索させてくだされば、危害を加えるようなことはしません。それでよろしいでしょうか」
裏世界の住民は地面に膝まずくと、土下座を何度も繰り返していた。
「わかりました。希望をかなえますから、命を助けてください」
裏世界の住民を力で服従させることに成功。力というのは、いつの時代も最大の武器になりうる。