44章 帰宅
ミライはお腹が空いていたのか、鍋屋で肉、魚介類、野菜などを大量に食べる。どちらがどれだけ食べても平気なのか、わからないぐらいだった。
鍋だけでなく、雑炊、デザートも口にする。彼女の食べたいという強い意志を感じた。
食事を終えると、ミライは自宅に戻っていった。アカネはその様子を見届けてから、自分の家に戻ってきた。
自宅の前では、二〇人ほどの男女が気絶している。窃盗目的で、家に侵入したと考えられる。
アカネは気絶している男女を、魔法を使って牢獄に送り込む。目を覚ましたときには、強制労働の刑に課されることになる。
「セカンドライフの街」では窃盗しようとした時点で、強制労働20年以上となる。1円も盗まなかったとしても、厳罰に課されるシステムなのである。
窃盗を見過ごそうとした場合も同罪となる。「セカンドライフの街」は犯罪に対して、非常に厳しい姿勢で臨んでいる。
強制労働と名がついているだけあって、奴隷のように働かされるとのこと。1日平均で10~15時間、年中無休で仕事をすることになる。アカネの現実世界ほどではないものの、働く時間は長めとなっている。
労働以外においても、レポート提出、ボランティアなどをさせられる。どんなに眠れたとしても、一日当たりの睡眠は、5時間程度にとどまる。
強制労働中の食事は麦、豆腐といった質素なものばかり。栄養は取れたとしても、満腹になることはない。労働者は常におなかをすかせた状態で働くことになる。
強制労働から帰還できる確率は2パーセント程度。残りの98パーセントは、過労死、メンタル崩壊などであの世に旅立つ。強制労働=死の構図が成り立っている。
ストーカーに対しても非常に厳しい。特定の異性に執拗に付きまとった場合、50年以上の強制労働に課される。一方的な恋愛を厳しく制限している。
男性からは特に厳しく、女性が身の危険を感じた時点でアウトとなる。女性側の意向によって決められることもあるため、慎重を期さなければならない。
女性側が気の危険を感じるという証拠を集めた場合、ストーカーをした男性を殺害してもよいこととなっている。この場合は正当防衛とみなされ、強制労働に課されない。
ストーカーを厳しく規制しているものの、結婚率に関しては高めだ。マツリからの情報によると、20代までに男女の90パーセントは結婚するとのこと。日本では考えられない、結婚率であ
る。
結婚に関しては消極的に考えている者が多い。運命の異性と出会ったからではなく、経済の観点から結婚を決めるようだ。二人で協力しなければ、生計を立てていくのは難しい。よっぽどの力を持っていない限り、独立財産で生きられない。
アカネはできることなら、好きな男性と結婚したい。両親のように、愛情のない家庭だけは避けたかった。愛情のない家庭は正真正銘、人生の墓場である。