お手伝いです! その2
相変わらず異常な暑さが続いている僕達住んでいる一帯です。
とりあえず氷嚢や氷菓のおかげで、熱帯夜の影響などを中心に暑さの影響は随分小さくなってきています。
パラナミオが作り出してくれた骨人間(スケルトン)のおかげで、深夜の時間帯にも圧縮氷を販売することが出来るようになったかげで各地のお客さん達からも
「いやぁ、本当に助かるよ」
「コンビニおもてなしさん、ありがとう」
そんな声が多数寄せられていました。
地域の皆さんのお役に立てるのって、コンビニを経営している僕にとってはこの上ない喜びなわけです。 その言葉を聞きながら、僕はこの上ない喜びの気持ちに包まれていました。
◇◇
そんなある日のこと……
何やらスアの元に、リョータ・アルト・ムツキの3人が集まっていました。
「ママ、僕達もお手伝いをしたいです」
「アルトも頑張りますわ」
「ムツキも頑張るにゃしぃ」
3人は、スアに向かってそう言い続けています。
どうやら3人は、パラナミオが僕のお手伝いをしているもんですから、自分達も役に立ちたいと思ったようですね。
スアは
「……大丈夫、よ。十分なんとかなってる、わ」
そう言って笑っていたのですが、それを聞いた3人は、見るからに落胆した様子でした。
そんなみんなの元に歩み寄った僕は、
「スア、手間かもしれないけどさ、リョータ達にも何かお手伝いさせてあげたらどうかな? ほら、圧縮氷の作成なら、すごく簡単だって言ってなかったっけ?」
僕がそう言うと、スアは腕組みしながら少し考えこみました。
おそらく、圧縮氷の作成作業はスアが一人でやっても十分まかなえるとは思います。
むしろ、リョータ達に教えながら作業をする方が手間になるであろうことも理解してはいるのですが……ここまでお手伝いにやる気を見せているリョータ達ですし、だからこそ手伝わせてあげたいな……僕はそう思ったわけです。
僕の言葉を受けてしばらく考えこんでいたスアですが、
「……わかった、わ」
そう言うと、3人を引き連れて自分の研究室へと移動していきました。
これから、スアが圧縮氷を魔法でどうやって作るかを教えてあげるんだと思います。
リョータ達3人は、みんな魔法の能力がすごいですし、きっとすぐに出来るようになると思います。
「ガンバレよ、3人とも」
僕は、そんな3人の背中を、笑顔で見送っていました。
「あれ? ママ、これなんですか?」
「あら?……これって、お父様の下着では?」
「なんでパパのパンツがここにあるにゃし?」
不意に、そんな声がスアの研究室の中から聞こえてきました。
あ
そう言えば、昨夜……寝ぼけたパラナミオがトイレと間違えてスアの研究室に入ってきたんですけど、その時僕とスアはちょうどいたしていた最中だったもんですから、大慌てで服を着たのはいいのですが、その時僕は下着を……
そのことに思い当たった僕は、大慌てしながらスアの研究室に向かって走っていきました。
◇◇
と、まぁ……最初にえらいトラブルがあったわけですが……その後のスアの圧縮氷作成講座は滞りなく進んで行きました。
もともと魔法の能力が高いリョータ達3人は、スアの指導を受けながらあっという間に圧縮氷を作成出来るようになりました。
ただ、やはり最初から完全に出来たわけではありませんでした。
3人とも数個に1個程度、圧縮が足りない不良品が混じってしまっていたんです。
子供達が作成した圧縮氷はすべてスアが確認してくれていますので、それらの不良品を販売してしまうことはなかったのですが、やはり序盤はスアの手を患わせてしまったわけです。
合間に僕は
「スア、ごめんね手間をかけちゃって……」
そう言ったのですが、そんな僕にスアはにっこり微笑むと、
「……大丈夫……子供達と一緒に作業するの、思ったよりもとっても楽しい、わ」
そう言ってくれました。
スアは、そんな感じで他の作業を行いながら、同時に子供達の圧縮氷の作成を指導し続けていました。
そんなスアの指導のおかげもありまして、作業開始から3日目には、3人ともほとんど粗悪品が出ないレベルになっていました。
スアも、そんな子供達を見つめながら、
「……やらせてあげてよかった、わ。こんなに早くマスターするなんて思ってなかった」
そんな事を言っていました。
一方の子供達も、
「ママの教え方、とってもわかりやすかったです」
「お母様のおかげですわ」
「ママありがとうにゃしぃ」
口々にスアへのお礼を口にしていた次第です。
そんな3人に触発されたパラナミオも
「パラナミオも、もっとハイレベルな骨人間(スケルトン)を作れるように頑張ります!」
そう言いながら、お風呂あがりに一生懸命がんばっている次第です。
そんな感じで……
我が家の子供達は、みんなして僕達のお手伝いを頑張ってくれています。
僕のお手伝いとして、骨人間(スケルトン)を作成してくれているパラナミオ。
スアのお手伝いとして、圧縮氷を大量に作成してくれているリョータ・アルト・ムツキ
そんな4人の姿を、僕とスアは笑顔で見守っていました。
この4人の活躍のおかげで、コンビニおもてなしで販売している圧縮氷の生産量が一気に倍増していきました。
いくらリョータ・アルト・ムツキの3人がすごい魔法を使えるといっても、そこはやはりまだ子供なわけです。
伝説級と言われるレベルのスアの前では、正直比べものにならないほどの差があるのは歴然なわけです。
実際に、圧縮氷を作成出来るようになった3人ですが、3人がかりでもスア1人分の生産量に届かない状態だったわけです、はい。
「やっぱりママはすごいですね」
「アルト、感服いたしました」
「ムツキもにゃしぃ」
そんなスアを見つめながら、3人は目を丸くしながらも、スアの手元を何度も何度も見つめながら、改めて作成方法を研究していたのでした。
◇◇
その週の休日。
僕は、子供達を連れてコンビニおもてなし本店の少し北にあります、池へと遊びに向かいました。
ここは、水質も綺麗ですし、泳ぐのにはもってこいな場所です。
ただ、ここには魔導船の発着場があるんです。
そのため、平日だと定期的に魔導船が着水するため、そこから乗降するお客さん達に僕達が泳いでいるところを見られてしまうかもしれませんので、休日になるまでまった次第なんですよね。
「みんなお手伝いを頑張ってくれたんだし、今日はみんなでのんびりしよう」
僕は、みんなに向かってそう言いました。
僕はすでに、青いボクサータイプの水着を着用しています。
そんな僕を、白地のビキニをみにつけているパラナミオが引っ張ります。
「さぁ、パパ! 一緒に遊びましょう」
そう言いながら、パラナミオは、僕を他の3人のところへと連れて行きました。
そこで、僕は子供達のビーチバレーに付き合わされることになりました。
池の冷たい水に足をつけながら、
「よ~し、パラナミオ! いくぞぉ!」
「さぁ、来いです! パパ!」
そんな会話を交わしながら僕達は池での休日を満喫していきました。
その日の夕方前に撤収した僕達なのですが……
楽しさのあまり魔法をたくさん使ってしまった4人は、昼過ぎ早くに船をこぎ始めたアルトを筆頭に、いつの間にかみんな、池の畔に設営したテントの中で寝息を立てていたのでした。
「何のかんの言っても、みんなまだまだ子どもだもんね」
「……ほんとね」
僕とスアは、そんな言葉を交わしあいながら、すっかり熟睡モードに入っている子供達を見つめていました。
寝てしまったため、成長魔法の効果が切れてしまったリョータ・アルト・ムツキの3人はすでに赤ちゃんの姿に戻っていました。
僕とスアは、手分けして4人を抱えるようにしながら巨木の家へと戻っていきました。
みんなすごく喜んでいましたし、出来れば来週も連れてきてあげたいな、と思った次第です。