コ・コンビニおもてなしクエスト? その1
相変わらず異常な暑さが続いているナカンコンベ・ガタコンベ地方です。
コンビニおもてなし全店で氷嚢や氷菓、さらに熱中症対策として塩飴の販売などを積極的に行っていることもありまして、都市の人々は多少なりとも快適にすごせるようになっています。
……とはいえ
「この暑さはやっぱ以異常だって……」
ルアは、相変わらずたらいに水を入れて、それに足を突っ込んだ状態で仕事を行っています。
で、その中には、今日もビニーが入っていて嬉しそうに水の中で両手をチャプチャプさせています。
その中で、ルアは眉をしかめながら首を左右に振っていました。
ただ、この世界に来てからまだ1年ちょっとの僕からしてみれば去年よりは暑いかなとは思いますけど、僕が元いた世界の夏に比べればこれでもまだ涼しく思えていますので、いまいち実感がわいていないんですけどね。
◇◇
ルアの愚痴を聞きつつ、仕入れの打ち合わせを終えた僕はコンビニおもてなし5号店へと戻りました。
すると、そこにドンタコスゥコ商会の会長ドンタコスゥコの姿がありました。
「店長殿、ちょっとよろしいですかねぇ?」
僕が店に戻って来たのを確認すると、ドンタコスゥコは両手を上下させながら僕の方へ歩み寄って来ました。
「どうかしたのかい、ドンタコスゥコ?」
「えぇ、実はですねぇ、このドンタコスゥコ、さっき辺境都市バトコンベから帰って来たのですがねぇ……向こうはこんなに暑くなかったんですよねぇ」
「……え?」
ドンタコスゥコの言葉に、僕は思わず目を丸くしました。
「ど、ドンタコスゥコ、そりゃどういうことなんだい?」
「いやぁ……このドンタコスゥコにもよくわからないのですがねぇ……辺境都市バトコンベに向かって移動していたらですねぇ、途中からいきなり涼しくなったんですよねぇ」
ドンタコスゥコはそう言うと、腕組みをしながら首をひねりました。
ドンタコスゥコの話を聞いた僕は、すぐにスアを呼びました。
スアは、転移魔法ですぐに僕の横へと姿を現しました。
「スア、ドンタコスゥコの話だとさ、西にある辺境都市バトコンベはここまで暑くないんだって言うんだよ。しかも、向かっている途中でいきなり涼しくなったっていうんだ」
僕の言葉を聞いたスアは、少し首をひねると、右手を前に伸ばしました。
その手の前に魔法陣が展開しまして、その魔法陣がいきなり広がったかと思うと僕達の前に大きな立体地図が広がりました。
「……ドンタコスゥコ……急に冷えたのは、どのあたり?」
「え、あ、あぁ……確かこのあたりですねぇ……」
スアに即されて、ドンタコスゥコは目の前に広がっている立体地図の一部を指さしました。
ドンタコスゥコの指が地図に触れると、そこが赤く光りました。
スアは水晶樹の杖を取り出すと、それを地図の上にかざしました。
すると、地図の上に無数の点が浮かび上がりはじめました。
「スア、この点はなんなんだい?」
「……私が、あちこちに放ってる、虫の使い魔……よ」
スアはそう言いながら、その地図をジッと見つめていました。
よく見ると、その点は、赤と青の2種類の色の光りを放っています。
「……赤い点が、暑いところ、よ」
スアがそう言いました。
で、僕やドンタコスゥコもその地図を見つめていました。
すると……僕は、あることに気が付きました。
「……スア、なんか赤い点が丸く広がってないか?」
僕がそう言うと、スアも頷きました。
そうなんです。
その赤い点は、ガタコンベやブラコンベ、ララコンベだけでなく、ララコンベをも覆っているのですが、ある1箇所を中心にして広がっていることがわかりました。
その中心地を見つめながら、僕達の視線は下から上へとあがっていきました。
そこには、巨大な山が、まるで棒のように空に向かって伸びていたんです。
僕は、その山の頂上付近を見つめていたのですが……
「……これって、ルシクコンベがある山じゃないか」
えぇ……そうなんです。
その山はガタコンベから見て北方にそびえている山なんです。
そのてっぺんには、グルマポッポが街長を務めている、コンビニおもてなしが布を仕入れているルシクコンベがあるんですよ。
そのことに気付いた僕達は、思わず目を見合わせていきました。
◇◇
で
僕は5号店の屋上にある魔導船乗降タワーの上に昇ると、その最上部かた双眼鏡を片手に北の方を眺めてみました。
あの山は相当高いですので、ナカンコンベからも見ることが出来ます。
大気に若干同化していますが、双眼鏡を使ってその方向を見てみると、天に向かってそびえている山がはっきりと見えました。
ちなみにこの双眼鏡ですが、爺ちゃんが仕入れていた在庫の1つなんですよね。
で、その山をじっと見つめていた僕は
「ん?」
思わずその手を止めました。
山の中腹あたりでしょうか……山の一角が何やら赤くなっているんです。
「スア、あの山の中程に何か変な物が見えるんだけど……なんか赤い物が……」
「……?」
僕の言葉を聞いたスアも、その方向を見つめていたのですが、しきりと首をひねっています。
「……なんだろう……生き物じゃ、ない?……う~ん……」
そう言いながらしきりと首をひねるスア。
しばらくその方向を見つめながら首をひねり続けていたスアは、魔法の絨毯を取り出すとその上に乗り込んでいきました。
「……ちょっと見てくる」
そう言うと、スアはそのまま出発しようとしました。
「ちょ、ちょっとまったスア。僕も一緒にいくよ」
そう言うと、僕も魔法の絨毯に乗り込んでいきました。
役に立つかどうか……でいえば、最高級に役にはたたないでしょうけど、大事な奥さんが何かよくわからないものを調べに行こうとしているんです。
ほっとくことは出来ません。
すると、
「乗りかかった船ですから、このドンタコスゥコも一緒に行きますねぇ」
そう言いながらドンタコスゥコも魔法の絨毯へ乗り込んできました。
……こう言ってはなんですが……僕以上に役に立たないような気がするんですけど……
すると、そこに今度は
「リョウイチお兄様が行かれるのでしたら私もまいりますわ!」
といいながら、今度はシャルンエッセンスが乗り込んできました。
……こう言ってはなんですが(以下略
そんな3人が乗ったところで、スアは魔法の絨毯を出発させました。
こうして、僕達はルシクコンベの山へ向かって旅立ったんです。
◇◇
山へ向かって進んで行くと、徐々に暑さが増していくような気がします。
スアは、温度の変化を体感出来るように、魔法の絨毯の周囲に魔法壁を展開していません。
そのため、僕達はだらだら汗を流しています。
「……こ、こりゃかなわんですねぇ……」
ドンタコスゥコが、早くも舌を出してぜぇぜぇ荒い息をつき始めています。
そんな僕達が山へ近づくにつれて温度がどんどん上がっています。
そして、山の中腹に見える赤い物体がどんどん近づいてきています。
僕は 双眼鏡でその赤い物体を見つめていたのですが……その手が止まりました。
「……なんだありゃ?」
双眼鏡の中で、その赤い物体は、山の壁に張り付いています。
正確に言うと、山の壁に穴をあけて、そこに居座っている感じです。
どうやらそれは大きな鳥のようなのですが……なんか様子がおかしいのです。
「スア……僕の目がおかしくなかったら……あそこにいる鳥って、骨で出来てる気がするんだけど……」
僕の言葉に、スアはこくりと頷きました。
「……あれ……フレイムゾンビドラゴン……伝説級の魔獣、よ」