お手伝いです! その1
コンビニおもてなしが販売を続けている氷嚢のおかげもありまして、どうにか各辺境都市や街、集落の皆さんに心地よい眠りをお届け出来ているようです。
以前は、コンビニおもてなしに朝ご飯や昼に食べる弁当を購入しにこられていたお客さんの大半が朝からお疲れモード全開だったのですが、最近では皆さん目に見えてお元気そうなんですよね。
「帰りに氷買いにくるから」
「よろしくね、店長」
そんなお声をお聞きすることもとても多くなっている次第です。
……ただですね、この氷に関してまして若干問題が起きているんですよね。
コンビニおもてなしは、ナカンコンベにある5号店は午後7時に、1・2・4号店は午後6時にそれぞれ閉店してしまいます。
で、氷を購入したい皆様はその時間までにコンビニおもてなしに立ち寄らないといけないわけですが、
急な残業
急な出張
そんな「急な**」があって、閉店までにお店に立ち寄れなかった人が出て来てしまっているわけです。
そういう方々には、当然眠れぬ夜がもれなく待っているわけなんですよね……
複数購入して魔石冷蔵庫で保存しておけば1週間くらい持ちますし、店でもある程度のまとめ買いを推奨してはいるのですが……魔石冷蔵庫を購入出来ない方も少なくないわけです。
それだと、いくら買い置きをしていても翌朝には溶けてしまいますからね……
生産数に関しては、スアがフル稼働してくれていますので……
「……んーん、圧縮氷を作るくらいは、朝飯前、よ」
「あ、、あぁ、そうなんだ」
スアによると、どうもそのようですので、とにもかくにも生産体制は問題なさそうです。
となると、コンビニおもてなし閉店後にどうにかして販売する方法を考えないと……ということになるわけです。
コンビニおもてなしの中で24時間営業しているのは、寝なくても大丈夫な木人形のエレ達が担当している魔法使い集落にある3号店のみです。
で、その3号店には、ナカンコンベにありますマクローコの美容室がつながっていますので、深夜までであればマクローコの美容室経由で圧縮氷を購入にいけるのですが……残念ながらそううまくはいかないんですよね。
と、言いますのも、マクローコの美容室は女性相手なお店です。しかもその大半が風俗街に勤務しているお姉さん達なわけです。
そのため一般のお客さん・男性のお客さんは入りにくいことこの上ないわけです。
一応、ダマリナッセがやっている診療所もありますので、そこでも買えるように配慮はしていますけど、おもてなし診療所は少し通りから入った場所に入り口がありますので、これに気が付かない方もおられるんですよね。
本店と2号店には、おもてなし酒場が併設されていますけど、おもてなし酒場も深夜までしか営業していません。
本店に付随している酒場は、イエロとセーテンがお客さんと一緒に朝までの飲み明かしていますけど、基本的には深夜でお店は閉めて、それ以上お客さんが入れないようになっています。
と、まぁ、こんな感じでですね、考えを巡らせれば巡らせるほど、選択肢がなくなっていくんですよね……
「さて……何かいい手はないものか……」
自分の部屋の中で、僕は腕組みしながら考えこんでいきました。
すると、そんな僕の部屋の中に、パラナミオが入ってきました。
「パパ、パラナミオはお役にたてませんか? パラナミオ、パパのためなら何でも頑張りますよ」
パラナミオは両手でガッツポーズをしながらそう言ってくれています。
その気持ちはありがたいんですけど、まだ子供のパラナミオにお願いするわけにはいきませんからね。
……まてよ
そこまで考えた僕は、ふと、あることに思い当たりました。
「パラナミオ、ちょっといいかな?」
「はい! パラナミオなんでもしますよ!」
僕の言葉に、パラナミオはぱぁっと笑顔を弾けさせながら僕の元に駆け寄ってきました。
◇◇
で、その日の夜のことです……
3号店を除いたコンビニおもてなしの全店舗の前に、ある1人の人物が立っていました。
その人物は、頭の上に魔石ライトを乗っけていまして、周囲を明るく照らしています。
そして、その肩にはクーラーボックスがかけられています。
このクーラーボックスの中には、もちろん圧縮氷が入っています。
つまりですね、この人に圧縮氷を販売してもらおうというわけです。
で、普通でしたら、大変なわけです。
コンビニおもてなしが閉店した後から夜明け前までずっとコンビニおもてなし前に立っておかなければならないわけですから。
……ですが
今回、店頭に立って頂いた皆さんは、それを苦になさらない方々ばかりでした。
はい、骨人間(スケルトン)達なんです。
この骨人間(スケルトン)ですが、言わずと知れたパラナミオが魔法で召還した魔獣の一種なんですよね。
パラナミオはサラマンダーという竜です。
で、サラマンダー種は、暗黒魔法をいくつか使用出来まして、その中の1つが召喚魔法なんですよ。
その召喚魔法で呼び出すことが出来るのが、パラナミオの場合この骨人間(スケルトン)なわけです、はい。
王都の方に住んでいる、パラナミオと同じサラマンダーのサラさんなら、もっと強力な闇属性の魔獣を呼び出せるとは思うのですが、まだ幼いパラナミオはこれが精一杯なわけです。
とはいえ、この骨人間(スケルトン)は
「ここで圧縮氷を販売してね」
とお願いしておけば、翌日の夜明け前までお店の前に立ってしっかり販売してくれるわけです。
その姿が骸骨ですから、最初の頃は何人かのお客さんに怖がられたりもしましたけど、概ねこの作戦は成功でした。
翌朝までの間に、クーラーボックスに入れておいた圧縮氷は全店でほぼ売り切れていたんですよね。
で、骨人間(スケルトン)達には、夜明け前にはお店の奥に入るように伝えてもあります。
闇属性の召喚魔ですので、日の光に当たってしまうとみんな骨の粉になって消えてしまいますからね。
で、翌朝。
みんながほぼ全部の圧縮氷を売り切っていたことを確認した僕は思わず笑みを浮かべました。
そんな僕のもとに寄ってきたパラナミオがですね
「パパ、パラナミオはお役に立ちましたか?」
そう聞いて来ましたので、僕は
「うん、最高に役立ったよ。本当にありがとう」
そう言いながら、パラナミオの頭をわしわしとなで回していきました。
すると、パラナミオはその顔には満面の笑みを浮かべながら喜んでいました。
こうして、パラナミオのおかげで、問題になっていた氷購入に関して無事目処がたったわけです。
この調子で、これからも街の皆さんのお役にたてたらな……僕は、パラナミオの頭を撫でながら、そんなことを思っていました。