第2話 ファースト・ファイト
オンとゲン、二人のファイターが戦いが始まる前に互いのモーションチェッカーから音声が鳴った。
「戦闘前に互いのBPを表示します」
どうやら戦闘する前に互いのBPを確認するらしい。
モーションチェッカーに相手のBPが表示された。
「渡鳥恩 BP0」
「霧崎元 BP0」
「へっ! ルーキーに偽り無しだな!」
「お前の方こそな。」
「BPが0ということは本当にルーキーみたいだね…」
サトルはゲンがただのルーキー狩りでは無さそう思えたので少しホッとした。
「さあて、こっちから行かせてもらうぜ!!」
ゲンが オンの前に飛びかかるように突っ込んでいった。
「このスピード…思ったより大したことは無さそうだな。」
オンは少し余裕な表情でゲンの飛びかかるようなパンチをかわした…
が、その時
「へっ!」
ガッ!!
ゲンがまるで足をバネのようにして
地面を蹴ってそのままオンにパンチを食らわせた。
「(くっ…こいつ…俺がかわすことを読んでいたな。)」
一息つく暇もなくゲンは再度、オンに向かって走ってくる。
「俺の思ったより…こいつは戦いに慣れてるみたいだが…一度見た攻撃なら対処はできる!」
オンは突っ込んでいくゲンを防御する体勢に入る。
間合いを詰めたその時、ゲンはまたも足をバネのようにして地面を蹴り、今度はオンの頭上を飛び越えるほどの大ジャンプを披露した。
「なにぃッ!?」
「さあ、受けてみろ! この俺の蹴りをォ!!!」
空中からゲンの足がまるで鞭のようにオンに振り下ろされた。
「ぐ…まだだぁ!!」
オンは瞬時に両腕を頭上に掲げ、ゲンの足技を防御した。
「なっ!? こ、こいつ…!」
両腕で防御し、勢いが落ちたと同時に片腕を伸ばし、ゲンの足を掴んでそのまま投げ飛ばした。
「ぐはっ!!」
「ふぅ…はぁ…はぁ…はぁ…」
オンは相手の絶え間ない攻撃が気に入らなく投げ飛ばして少しでも猶予を得ようと思っていた。
一方、観戦していたサトルは持っていたノートPCでゲンについて調べていた。
「霧崎元…足技を得意とし、まるでバネのような足の柔らかさで地面や壁を自在に蹴り、飛びかかる攻撃を得意としている…スピード特化型のファイター…か。」
カウンターを決める事ができたもののオンはやや劣勢であるこの状況に不安になる。
どうやら相手は足技を得意としているようだ。
しかし、オンは少し疑問に思ったことがあった。
足を鍛えてるとは思うが
突っ込んでくるときのスピードはそこまでに感じない、それに普通の人間であそこまで飛び上がるのは不可能に近い。
と、考えたものの今はそれどころではない。
すぐに相手の次の一手が来るのだ。
ゲンは、今度はいきなりオンのいる場所とは全く違うところへ飛びかかった。
その後、また別のところへ飛びかかる。
しかし、オンはすぐに異変に気付く。
飛びかかる毎にゲンの飛びかかるスピードが増していってることに。
「くっ、こいつ…これじゃいつヤツが俺に向かって飛びかかってくるか分からねえぞ…!!」
(だが、もしヤツが向かってきたら…あの技を使うしかねえ…!!)
ドンドン加速力を増していくゲンに対しオンは何やらエネルギーを溜めるような構えを見せる。
そして、ついにゲンはオンのほうへ飛びかかってきた!!
「はぁ!!!」
ゲンが飛びかかる瞬間、オンは自分の身体を回転させ、握りしめた腕をゲンにぶつけた。
ゲンが怯んだまま、オンは回転しつつ拳をゲンに連続で当てていく。
「これで、最後ォ!!!」
フィニッシュの一撃をゲンの顎に直撃させた。
「ぐばぁっ!!!!」
ゲンはおもいっきり吹っ飛び、ダウンした。
しばらくすると、ゲンの腕に付けているモーションチェッカーがピピピと鳴り響き 音声が聞こえてくる。
「ゲン選手の10秒のダウンを確認。 勝者、オン選手!」
「や…やった。なんとか勝てたっぽいな…」
「す、すごい…」
サトルはすぐにノートPCでオンのデータファイルを作成に取り掛かる。
しばらくすると、ゲンが立ち上がった。
「ちっ、初戦は敗北か…だが忘れるんじゃねえ。次は、次に戦う時はこんなもんじゃねえからな!!」
いかにもなセリフを吐いてゲンは立ち去っていった。
オンは腕につけているモーションチェッカーでどれくらいBPを獲得したか確認した。
BP:3000
「まずは一勝…これからも、どんどん勝ち進めて…そんでもってバトルキングを目指すんだ!」
「バトルキング…?」
そこそこ格闘マニアであったサトルも
バトルキングという言葉に馴染みがないらしく不思議に思う。
それと同時にまだ確信したわけではないが
この男、渡鳥恩は将来、凄いファイターになる可能性を秘めている…
サトルは夕焼けの空を見上げているオンの姿を見て静かにそう思ったのであった…