②
「私の場合、煽るサクヤも、煽られるヒナも、どっちもどっちだと思うわよ」
突如聞こえた声の方見ると、
そこには苦笑するメガネの女性が、コンコンっと、ドア叩きながら立っていた。
「カザハナさん!」
「あ、どうも」
驚くヒナとは対照的に、
サクヤは平然とメガネの女性、カザハナに挨拶をした。
「こんにちは、ヒナ、サクヤ」
「こんにちは、カザハナさん。珍しいですね、此方来るなんて。お休みですか?」
ヒナは動揺しながらも、
心を落ち着かせ、カザハナを部屋の中に通した。
「いいえ。今日は、あなた達に頼み事があって来たのよ」
「頼み事?」
急に入って来た話に、二人はきょとんとした。
「ええ。早速で申し訳ないけど、あなた達に依頼なの。
その言葉を聞き、二人の間に緊張が走った。
各々の国には、
長と呼ばれる国の中でも、一番偉い人が存在する。
その長の中で、風の国には、
風長と呼ばれる人がおり、
話を伝えに来たカザハナは、風長に仕える秘書のような役職に就いているのだ。
「どうして、またそんな急に……?」
「風長様自身、
依頼を頼みたかったみたいよ。
けど、内容が内容だから、宮補佐である私に話が来たのよ」
宮補佐は、長の補佐をする者で、
なる条件は長からの信頼が無ければ、決してなれない役職なのだ。
「成る程なぁ、そう言う事か」
大まかな話を聞き、サクヤは納得した。
「成る程って、何よ?」
「わざわざ周囲に隠してまで、宮補佐に頼む辺り、ただの依頼ではないだろう。つまり、その依頼を引き受けた時点で……」
サクヤの言葉に、カザハナはコクッと頷く。
「ええ。普通の依頼ではないから、一度引き受けたら、後にはひけない。だから、あなた達に覚悟を聴くに来たの」
依頼を受けるか、拒否するか。
深刻な面持ちで悩むヒナに対し、
サクヤはそれ程悩んでいない様子だった。