15章 家を建てる
アカネは家建て名人に連絡を取った。念願のマイホームを完成させて、くつろげる時間を作っていきたい。自分の家で休むからこそ、メンタルを回復させることができる。
アカネは超能力を持っているものの、心の疲れはきっちりと感じるようになっている。他人の本心を読み取るテレパシー能力も備わっていない。心に関する超能力は付与されなかったようだ。
心を読み取る力については、不要かなと思っている。人間の汚い闇の部分を見てしまうと、人間関係はおぼつかなくなる。相手の本心を知らないからこそ、ライフバランスを保つことができる。
家建て名人が到着。男性のイメージが強い職種なので、女性がやってきたことに驚きを隠せなかった。
女性の腕っぷしはもやしさながらに細く、木材を持てるのかすら怪しかった。
「アカネさん、今回はありがとうございます」
「あなたで大丈夫ですか」と聞きたいところだったけど、口にするのはためらわれる。本心を押し殺したまま、女性と対応することにした。
マツリからローンを組めないと聞いている。お金を払うときは、前払い以外の方法はない。
「家を建てる費用は、3億ゴールドになります」
せっかくのマイホームなのだから、いい家に住みたい。アカネは全財産の80パーセント近くを、家の費用にあてることにした。
「はい。これがお金です」
「確かに受け取りました。領収書と保証書を用意します」
領収書はいたってシンプルだった。「家建てにおいて、上記のものと契約したことを証明します」としか書かれていなかった。領収書といっていいのかは、大いに疑問符が付いた。
保証書には、「特定の条件下において家が壊れた場合、一部もしくは全額を負担します」だけだった。どのような条件で保証されるのか、保証されないのかについては説明がなかった。
「保証期間は二〇年です。それまでは大切に保管ください」
保証期間はかなり長めだ。現実世界もこれくらいの日数にしてくれればいいのに。
「家の完成までに1ヵ月ほどかかります。それまでの間、どこかでお過ごしください」
1日、2日で家を建てるのは難しそうだ。アカネはそれまでの間、どこかで生活しなくてはならない。