14章 食事
アカネは肉を口に運んだ途端、溢れんばかりの肉汁に包まれることとなった。肉の中にフルーツの果汁が含まれているかのようだ。
宿屋を経営している女性が戻ってきた。
「アカネさん、先ほどは失礼いたしました」
「いえいえ、大丈夫ですよ」
「食事はどうですか?」
「とってもおいしいです」
宿屋の女性は、そっと胸をなでおろしていた。
「よかったです」
「最高級の肉なんですね」
「そんなことはありません。ここでは取り扱っていないものの、セカンド牛にはこれよりもおいしい肉があります。最高級といわれるセカンド牛+++++は、100グラムで1000万ゴールドの値がつきます」
一ヵ月あたり20~30万ゴールドで生活できる街において、1000万ゴールドの値は高すぎやしないか。富裕層しか手に付けられない一品である。
「セカンド牛+++++は売れるんですか」
「はい。セカンドライフの街には、とんでもないお金持ちがいます。そういう人たちを中心に、売買されています。肉なのにフルーツさながらのみずみずしさが大好評です」
「セカンド牛+++」は充分に高品質である。それよりもさらにおいしい肉というのは、どのようなものなのだろうか。
「セカンドキャビア+++、セカンドフォアグラ+++などを、あとでお持ちいたします。それまでは、肉をお楽しみください」
アカネには自分の家をどうにかするという課題が残されている。それを解決しないことには、何も始まらない。
「この街は家を建てる人はいるんですか」
「はい。家建て名人が存在します」
建築士は堅いイメージがあるので、家建て名人の方がいいかな。何をする人なのかも伝わってくる。
「家の値段はどれくらいですか」
「少なく見積もっても、1億~2億ゴールドくらいですね」
自分の家を持つのは、どの世界も楽ではなさそうだ。
「セカンドライフの街ではマニュアルを配布していますので、自分で建てることもできます。ほとんどの家庭は自分で建てた家で生活しています」
借金=強制労働の街では、ローンを組むことはできない。必然的に自分で家を建てて生活することになる。
自分で家を建てる人が多いのに、家建て名人になるメリットはあるのかな。セカンドライフの街においては、宝の持ち腐れのような気がしてならなかった。