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ドゴログマでわっしょい その3

 森の奥に出現した川は、最深部でも子供達の膝くらいまでしか深さがありません。
 流れも緩やかで、風底まで綺麗に見渡せるほど澄んでいます。
 スアが魔法で調べてくれたのですが
「……飲んでも大丈夫」
 ってほどに綺麗だとのことでした。
 
 この川縁には水辺にしか生息しない珍しい薬草が生えているそうで、スアは周辺に結界を張り終えると、嬉々として川縁へ向かって駆けていきました。
 ミニマムなスアですから、その姿を後方から見ていると子供達の1人に見えてしまう感じです。
 ちなみに、スアはでっかいとんがり帽子を被り体をマントで覆い隠しているのですが、採取した薬草を即座にとんがり帽子の縁にぶら下げています。
 なんといいますか、とんがり帽子の周囲にすだれでも出来たかのような感じですね。
 そうやって、採取後即乾燥させているわけです。
 一心不乱に薬草を採取しているスアの横顔も、普段見れない可愛さがあります。

 と

 そんなことを考えた瞬間に、スアが真っ赤になって立ち上がりました。
 どうやら、僕の思考を読んでしまったようですね。
「……う、嬉しいけど、は、恥ずかしい、かも」
 スアは、真っ赤な顔のままそう言うと、再びしゃがんでせっせせっせと手を動かし始めました。
 気持ち、マントの襟を立てて顔を隠し気味にしています……ちょっと残念です。

 そんなスアの横で、子供達は一斉に水辺に駆け寄っていました。
「冷たくて気持ちいいですね!」
「そうコンね」
 パラナミオとピラミが川の中程まで駆け込んで嬉しそうに笑いあっています。
 2人はあっという間に打ち解けた感じです。
 まぁ、年齢も近いですし、仲良くなりやすい条件は揃っていましたからね。
 その後方では、リョータ・アルト・ムツキの3人も嬉しそうに川に入って、2人の後を追いかけています。
 楽しそうに川遊びをしている5人ですが……ここで僕は、腰につけている魔法袋の中からある物を取り出しました。
 いえね、こんなこともあろうかとみんなの水着を準備しておいたんですよ。
 全部、爺ちゃんの代のコンビニおもてなしの在庫の山の中から発掘した品々なので、デザインは若干古いんですけど生地はしっかりしていますので、まぁ大丈夫でしょう。
 僕は、適当に水着を取り出して、それを子供達に選ばせました。
 その結果、

 パラナミオはピンクのチューブトップブラとデニムのショートパンツ
 アルトは、白のワンピース
 ムツキは、セーラータイプの水色のビキニ
 ピラミは、黒のチューブトップブラと黒のフリルがついたボトム

 ビキニとかチューブトップといっても、すべて子供用ですのでそんなに扇情的なデザインにはなっていません。
 僕が余所を向いている間に、みんなわいわい楽しそうに着替えていきました。

 ……で、例によってリョータが嬉々として赤いビキニを着ようとしたので、僕が
「こっちの方が似合うよ」
 といって、黄色のボクサータイプの水着を渡してあげたんですよね。
 これくらいの年齢の男の子って、周囲が全員女姉妹だと結構流されるところがありますので、僕がしっかり気をつけてあげないといけません、ほんと。
 リョータの場合、女の子の姿が洒落にならないくらい似合っていますのでなおさらです。

 で

 一応大人用の水着も準備していたのですが、

 スアは
「……私は薬草を採ってるから、いい」
 と言って、もくもくと薬草を採取し続けています。
 イエロとグリアーナは
「拙者達は近くの森の中でグリアーナの特訓を兼ねて狩りをしてくるでござる」
「よ、よろしくお願いするでござる」
 と言って、2人して森に入っていってしまいました。
 
 と、いうわけで、大人で水着を着るのは僕とファラさんだけになったのですが……
 これが困りました。
 僕は、自分用の水着を持参していたので問題なかったのですが、問題はファラさんでした。
 ファラさんはどうも着痩せするタイプのようでして、服の下のがなんといいますか、とにかくすごかったんですよ。
 そのため、準備していた水着が何一つ合いませんでした。

 すべて胸部分が小さすぎて……

 結局、ファラさんはビキニの下だけ着用し、上はバスタオルを強引に巻き付けただけの姿で水に入っていきました。
 なんといいますか、ポロリ案件でも起きそうなことこの上ないといいますか
「あぁ、ファラさんの水着が取れたコン!?」
「ちょ!? 誰かそのバスタオルをとりなさい!」
「うわぁ、待て待てにゃしぃ!」
 ……思っていた端から、いきなり発生したようです、はい。

 その後、スアの魔法でバスタオルの結び目を強化したことでファラさんも安心して子供達と水遊びが出来るようになりました。
 意外といいますか、ファラさんってば子供達とすっごく楽しそうに遊んでいました。
 リヴァイアサンの尻尾を出現させて、それを滑り台のようにして子供達を滑らせたり、口から水流を吹き出してシャワーのように子供達の上に降り注がせたり……終始楽しそうな笑顔で子供達と接していたのです。
 そんなファラさんを、僕は微笑ましいなと思いながら笑顔で見つめていたのですが、そんな僕に気が付いたファラさんは、
「な、何笑ってんのよ! こ、これも店長が子供達と遊ばないからでしょ! だから私が仕方なく相手してあげてるだけなんだからね! ほ、本当なんだからね!」 
 顔を真っ赤にしながらそう言われました。
 ……そうですね、これっていわゆるツンデレってことで、受け取っておいていい案件ですよね。

 そんな感じで、みんなで川遊びを楽しんでいると、森の方から何やらでっかい物体が移動してくるのが見えました。
「え? な、何ですか?」
 パラナミオが思わずびっくりした声をあげました。
 その声で、他の子供達もおびえたようにファラさんの背後に隠れていったのですが、そんな子供達の前でファラさんは、
「あぁ、心配しなくても大丈夫よ。あれ、多分イエロ達よ」
 そう言いました。
 ファラさんが言ったとおり、ほどなくしてでっかい魔獣を持ち上げて戻って来たイエロとグリアーナが姿を現しました。
「いやぁ、大物が狩れたでござるよ」
「せ、拙者も頑張ったでござる」
 イエロとグリアーナは、そう言いながら自分達が仕留めた魔獣を川岸にどんと置きました。
 ちょっとタテガミライオンに似た魔獣ですね。 
 スアによると、
「……これは食べれる、わ……美味しい、よ」
 そう言って、親指をグッとたてました。
 
 で、それを受けまして
「よし、今夜はこの魔獣のお肉でバーベキューをしようか」
 そう言いました。
 すると、子供達は嬉しそうに歓声をあげていきました。

 その後、子供達をファラさんに任せて、僕・イエロ・グリアーナは、簡易小屋まで戻りました。
 僕が岩を集めて簡易竈を作っている間に、イエロとグリアーナが魔獣をさばいていきます。
 タテガミライオンに似ているもんですから、イエロにとってはお茶の子さいさいな感じですね。
 何しろ、ほとんど毎日のようにタテガミライオンを狩ってはさばいているんですから。
 竈に集めた小枝を入れて火炎魔石で火をつけると、徐々に太い枝を入れて火を大きくしています。
 ちょうど、いい案配に金網がぬくもったところで、川からみんなが戻って来ました。
 スアのとんがり帽子の周囲がぶら下げた薬草でいっぱいになっていたもんですから、一瞬川から上がってきた河童か何かかと思ってしまったのは内緒ということで……

 その後、持参した野菜などと一緒に肉を焼いていきました。
「うわぁ、このお肉美味しいです!」
「うん、とっても美味しいコン!」
 パラナミオとピラミは顔を見合わせながら嬉しそうに笑い合っています。
 他のみんなも、笑顔で肉を食べています。
 ほどなくして、日が暮れていきました。
 あっという間に夜空に星空が浮かび上がっていきます。
 その綺麗な星空の下で、僕達のバーベキューは楽しい笑い声とともに続いていきました。

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