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ドゴログマでわっしょい その1

 フク集落は日々順調に発展しています。
 特に、テトテ集落のおじいさん達が張り切って耕してくださっている畑の開墾ペースが半端ではありません。
 あまりにもそのペースが早いため、ルア工房のみんなが作成してくれている木製の柵を何度も拡張しなければならなくなっている程です。
 そのルア工房のみんなが、居住地を急ピッチでこしらえてくれている物ですから周辺に住んでいたお年寄りの皆さんもどんどん移住しておられます。
 以前からピラミに何かとお世話になっていたお年寄り達は、テトテ集落の皆さんと一緒になって畑を耕したり、ルア工房のみんなの作業を手伝ってくださっています。
 お年寄りの中には、建物の施工に長けた方や水路の構築に長けた方もおられました。
 特に、水路の構築に長けた方はありがたい存在でした。
 と、いいますのも、このフク集落の側にある沼の水は淀みすぎていて飲料用に使用するには適していないのです。
 そのため集落のみんなは、集落から1km程離れたところにある川まで毎日水を汲みに行っていたそうなのです。
 そこで水路の構築に長けている河馬人のカルバンさんを中心にして、川からフク集落まで水路を建築していきました。
 カルバンさんのおかげで、水路は3日ほどで無事開通しました。
 木製の樋(とい)を作って、川から集落まで水を通したのです。
 この樋には、スアが保護魔法をかけてくれていますのでカビたり痛んだりしません。
 木製なのに半永久的に使用出来るという、すごい代物になっているわけです、はい。
 この水路が出来上がったおかげで、集落のみんなはいつでも飲み水を確保することが出来るようになっただけでなく、畑に使用する水をも確保することが出来たのです。
 子供達は、水路を通って流れてくる水を楽しそうに眺めています。
 その水を眺めている子供達を、ルア工房のみんなやお年寄り達が楽しそうに眺めているわけです、はい。

 ちなみに、このカルバンさんは、
「この技術、ぜひウチの工房で役立ててほしいな」
 そう言ったルアの申し出により、正式にルア工房で雇用されることになりました。
 カルバンさんは、
「これもピラミちゃんがこの老いぼれを励ましてくれて、店長さんがみんなを導いてくれたおかげですヴァイ」
 そう言いながら、僕とピラミに何度も何度もお礼を言ってくださいました。
 
 こうして集落の規模も大きくなり始めていますし、集落から再雇用される方も出始めています。
 フク集落は、今も着実に大きくなり続けているわけです、はい。

◇◇

 いつものようにコンビニおもてなし5号店で営業を行っていた僕なのですが、その営業が終わった頃合いを見計らって、スアが転移してやってきました。
 スアは、嬉しそうに微笑みながら
「……旦那様、早く早く!」
 そう言って僕を呼びました。
 満面の笑顔を浮かべていますので、何かいいことがあったようですね。

 で、スアに連れられて僕はコンビニおもてなし本店のあるガタコンベへ戻ったのですが、その店の裏に何やら板状の物が置かれていました。
 薄いのですが、触ってみるとかなり丈夫です。
 で、その一角から何やら線が延びているのですが、その先をよく見てみると……
「え? これ、ひょっとしてコンセント!?」
 そうなんです。
 その先にはどうみてもコンセントがついていたのです。

 これ、実はスアが開発した太陽光発電パネルだったんです。
 以前から、コンビニおもてなし本店の屋上に設置されている太陽光発電システムを研究し続けていたスアなのですが、ついにそれを独学で作り出してしまったのです。
 しかも、このスア製太陽光発電パネルはですね、そのパネル本体に蓄電用の魔石が埋め込まれていまして、その魔石にいったん集約されてからコンセントへ送られる仕組みになっているそうです。
 魔石でエネルギー変換も行えるということです。
 しかも、エネルギー効率を高めるために……って、え~、ここら辺の説明は僕にもよく理解出来なかったのですが、とにかくコンビニおもてなし本店に設置されている太陽光発電パネルの約3倍のエネルギー効率を実現しているそうなのです。
 早速僕とスアは、これを2号店に試験導入してみました。
 2号店の灯りはすべてスア製の魔導ランプなのですが、この魔導ランプのエネルギー供給魔石部分に、スア製太陽光パネルをつないだところ、いままでとは比べものにならないほど明るくなりました。

 ただし

 あまりにも明るくなりすぎまして、
「す、スア!? こ、これじゃあ店内が見えないよ」
「……そ、そうね」
 と、スアすら困惑する事態を巻き起こしてしまったほどだったのです。
 これは、魔導ランプが太陽光発電パネルから過剰に供給されてきたエネルギーに過剰反応した結果起きてしまった事態のようです。
 これに関しては、スアが供給エネルギー量を調整出来る魔石装置を研究することになりました。
 スアによると、そう時間はかからないだろうと言っていたのですが、それを聞いたブリリアンが
「店長殿、わかっておられるとは思いますが、これはスア様だからこそそう時間をかけずに出来るわけであってですね、普通の魔法使役者ではこうはいかないんですからね!」
 と散々言ってきたわけです。
 それは僕も重々わかっていますので、ブリリアンの言葉に何度も頷いていった次第です。
 とにもかくにも、これで本店の太陽光パネルがいつ壊れてしまうのだろう、壊れてしまったらどうしようか、などと心配しなくてすむことになるわけです。
 ホントに、スアってばすごいなと、改めて思った次第です。

◇◇

 その週の週末のこと。

 スアが薬草採取の要望を天界にだしていたのですが、その許可が下りました。
 ちょうど週末でお休みですので、
「じゃあ、久しぶりにみんなで遊びに行ってみようか」
 という話になりました。

 このドゴログマは、神界という僕達が住んでいる世界の上位世界とかいうところの下部世界だそうでして、普通の世界にいるやばい魔獣なんかを放り込む場所として使用されている世界です。
 スアは、特別にここに出入りすることを許されている数少ない神界以外の世界の住人なのです。
 で、スアが同行するのなら10人まで一緒にドゴログマへ同行しても良いことになっています。

 と、いうわけで、

 僕
 スア
 パラナミオ
 リョータ
 アルト
 ムツキ

 いつもの我が家の面々に加えまして、

 イエロ
 ピラミ
 グリアーナ
 ファラ

 以上の4名が加わることになりました。

 イエロとグリアーナの鬼人コンビは、師匠格のイエロがグリアーナを鍛えるために、そしてファラさんは、ピラミの保護者的立場で、それぞれ同行することになっています。
 ピラミを同行させたいと言ったのはファラさんでした。
「まぁ、あれよ。この子もよく頑張ってるしさ。たまにはみんなと遊びに連れて行ってあげてもいいんじゃないかしら? アタシが面倒みるからさ」
 そう申し出たファラさんなんですけど、気のせいか最近ピラミの事をまるで実の娘のように可愛がっているようにみえなくも……
「店長、何か今変なことを考えておいでではありませんでしたこと?」
「い、いえ、なんでもありません……」
 と、まぁ、ファラさんに殺気だけで殺されそうになりながらも、そんな面々でドゴログマへ出発することが決まったわけです、はい。

 ピラミがフク集落を出発する際に、他の子供達も行きたいと言い出すんじゃないかと思ったのですが、みんな笑顔でピラミを送り出してくれました。
「最近のみんなは、テトテ集落の皆さんと一緒に畑仕事をするのが楽しくて仕方ないみたいコン」
 ピラミはそう言って苦笑していました。
 まぁ、そこは結果オーライということにして僕はピラミと、集落で夜警をしていたグリアーナを連れてコンビニおもてなし5号店へと戻りました。
 そこから転移ドアをくぐって本店に戻り、スア達と合流し、さぁいよいよドゴログマへ出発です。

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