子供達らぷそでぃ その2
テトテ集落に到着した僕は、いつものように電気自動車おもてなし1号を集落の中心にある広場へと移動させていきました。
そこの隅に車を停車させ、まずは子供達を降ろしていきます。
「みなさんこんにちは!」
と、元気な笑顔で飛び降りたパラナミオ。
「こんにちわ!」
と、両手を振りながら降りていくリョータ。
「こんにちわでございますわ」
と、おしとやかに降り、優雅に一礼していくアルト。
「こんにちはにゃしぃ」
元気満々な様子で飛び跳ねていくムツキ。
そんな4人が車から降り立つと、集落の皆さんは一斉に歓声をあげながら4人を迎えてくれました。
で、いつもでしたらこのまま子供達が連行されていって、
「よく来たねぇ、まぁこれでもお食べ」
「ほら、これもどうだい」
と、集落の皆さんからお菓子による接待攻撃を受けるはずなのですが……どうしたのでしょう、今日は集落の皆さんが動きません。
で、全員僕の事をじっと見つめているです。
「え?」
その状態に、僕は思わず目を丸くしました。
すると、なかなか車から降りてこない僕の横に、集落の長のネンドロさんがやって来ました。
「店長さん、いいから早く降りてほしいニャあ」
そう言うネンドロさんに促されて車から降りた僕は、そのまま広場の中央へと連れていかれたました。
すると、そこには何やら大きな物が立っています。
前回来たときには、こんな物はなかったはずです。
その物体は白い布で覆われていたのですが、その布にくっついている紐を集落の皆さんが僕の手に握らせました。
で、僕同様に車から連れてこられたスアをですね、僕の横に並べまして、紐を握っている僕の手にスアの手を添えるようにと伝えてきました。
僕とスアは言われるがままに手をつなぐようにして紐を握っていきました。
……どうやらスアは、魔法で布の中をみちゃったようですね。その顔に照れ笑いを浮かべています。
更に僕達の周囲に、パラナミオ・リョータ・アルト・ムツキも連れてこられまして、僕達一家が全員この物体の前に集められたことになります。
「さぁ、その紐を引っ張ってくださいニャあ」
ネンドロさんの言葉に従って、僕とスアは同時に紐を引っ張りました。
すると布が地面に落ちていきましてその中身が明らかになったのですが……
それは、木像でした。
手を取り合って微笑んでいる僕とスアのでっかい木像が広場の中央に建てられていたのです。
「この集落を生き返らせてくれた店長さんと奥さんに、テトテ集落からせめてものお礼ですニャあ」
そう言いながら、ネンドロさんは、僕に木造と同じ形をしたミニチュアの木造を手渡してくれました。
「皆、年はとっておりますニャあけど、元気満々ですニャでね、これからもコンビニおもてなしさんのお役にたてるように集落あげて頑張りますニャあ。その証にと、この木造を広場の中心に建てさせていただきましたニャあ」
そう言うとネンドロさんはミニチュアの木像を手にしている僕に向かって拍手をしてくれました。
同時に、周囲を取り囲んでいる集落の皆さんも一斉に拍手を始めてくれました。
気がつけば、パラナミオ達も拍手をしてくれています。
そんな拍手のど真ん中で、僕とスアは照れ笑いを浮かべながら何度も何度もお礼をいいつつ頭を下げていきました。
◇◇
なんかもう、すごいサプライズで始まった今回の訪問ですが、当然することはするのがテトテ集落の皆さんです。
まず、パラナミオ達4人を集めて
「さぁ、これをお食べなさい」
「ほら、これもお食べ」
と、集落で取れた果物や、皆さんが作ったお菓子やおかずなどを次々と食べさせてくださっています。
「皆さんありがとうございます!」
「どうだいパラナミオちゃん、美味しいかい?」
「はい、とっても美味しいです!」
だされたものを口いっぱいに頬張って、満面の笑顔で答えているパラナミオを筆頭に、リョータ達も笑顔で皆さんに対応しています。
特にムツキは今まで眠っていることの方が多かったもんですから
「おぉ、ムツキちゃんもめんこいのぉ」
「ほれほれ、いっぱいお食べ」
と、集落のお年寄りの皆さんの総攻撃の的になっていました。
そんな中、ムツキも満面の笑顔で
「ムツキ、はりきっていただくにゃしぃ!」
そう言いながらどんどん食べ物を口に運んでいました。
……とはいえ、まだまだ子供なむつきです
すぐにお腹がいっぱいになってしまって、笑顔が引きつりはじめました。
さすがにこれはまずいと思いまして、僕はムツキに駆け寄ろうとしました。
すると、そんなムツキに気がついたパラナミオが、僕より先にムツキの元に歩み寄っていきまして、
「皆さん、そろそろパパが持ってきたお饅頭を買ってほしいのです!」
笑顔でそう言いました。そのおかげでムツキへのさぁお食べ攻撃が停止したのです。パラナミオのナイスアシストですね。
で、そんなパラナミオの言葉を受けた集落の皆さんは
「おぉ、そうじゃそうじゃ」
「店長さんがせっかくわしらのために持ってきてくださったのじゃ」
そう言いながら、一斉に電気自動車おもてなし1号の方へと駆け寄ってきたのです。
ムツキの元へ駆け寄りかけていた僕は、慌てて電気自動車の脇に準備していたテーブルのところへと戻り、そこに並べていた温泉まんじゅうをはじめとした品物を販売していきました。
で、その温泉まんじゅうを購入した皆さんは、すぐさま子供達の前へ再び移動していきまして、
「さぁ、パラナミオちゃん、いつものようによろしくね」
そう言いながら、僕から購入したばかりの温泉まんじゅうの袋を差し出していきます。
それを受け取ったパラナミオは、笑顔でその中身を取り出し、
「はい、美味しく食べてくださいね、あ~ん」
そう言いながらまんじゅうの1つを差し出していきます。
で、それを集落のお年寄りは
「あ~ん」
と言いながら、口で受けていきます。
で、それを頬張り、もぐもぐ口を動かしながら満面の笑顔を浮かべていくのです。
「温泉まんじゅうはこのまま食べても美味しいけど、あーんをしてもらうと更に美味しいねぇ」
そう言って笑うお年寄りの方。
で、そんな光景が4人の前で繰り広げられていくわけです。
皆さん、こうしてパラナミオ達に相手をしてもらえるのを楽しみにしてくださっているんですよね。
この集落にかつて住んでいた皆さんの子供さんやお孫さん達は軒並み街へ引っ越してしまわれていますので、その寂しさを紛らわす意味もあるんだと思います。
いつものように、パラナミオ達に温泉まんじゅうや新商品の大福などを食べさせてもらった皆さんはもれなく満足この上ないといった表情を浮かべておられました。
するとそんな中、数人のお婆さん達がパラナミオ達を
「店長さん、ちょっと子供達をお借りしますよ」
そう言って、広場の近くにある一軒の家の中へと連れていきました。
で、待つこと数分……
「パパ、これ可愛いです!」
そう言いながら家から飛び出してきたパラナミオなのですが、白いパンツルックを身につけていました。
ややセーラー服っぽいその服は、おへそがチラ見えする感じになっていて、パラナミオの可愛さをより際立たせています。
で、その後に続いて出て来たリョータ・アルト・ムツキ達も、おそろいで色違いの服を着ています。
親馬鹿ですが、みんな最高に可愛いです。
感動している僕の横に、先ほどのおばあさんの1人が歩み寄ってきました。
「店長さんに見せてもらった子供服の見本を元にして作ってみたんだけど、どうかね?」
そういえば、コンビニおもてなしの倉庫の中に残っていた無料配布用の通販カタログを差し上げていたのです。
集落の皆さんが、その中にあった子供服のデザインを参考にして思考錯誤なさっていたのは知っていましたが、どうやらそれが完成したようですね。
そして、まずパラナミオ達に着てもらったのでしょう。
僕は、おばあさんに
「はい、最高です」
と、満面の笑顔で答えました。
そんな僕の前で、パラナミオ達は集落の皆さんに囲まれて歓声を浴び続けています。
で、そんなみんなにおばあさんは、
「さぁさぁ、服はまだまだ色々あるんだから、まだまだ試着してもらうわよ」
そう言いながら、パラナミオ達を再び家の中へと連れていきました。
この時僕は、デジカメを持ってこなかったことを心の底から悔やんでいました。
すると、そんな僕の背中をスアがつんつんとつついてきました。
僕が振り返ると、そこに立っていたスアの手には水晶玉が握られていました。
見間違うはずがありません、それは紛れもなく画像撮影水晶です。
「……ばっちり、撮った、よ」
スアは、笑顔でそう言いながら、右手の親指をグッと立てました。
僕は、そんなスアに向かって親指を立てながら、最高の笑顔を返していきました。