子供達らぷそでぃ その1
辺境都市ナカンコンベにコンビニおもてなし5号店を出店してしばらく経ちました。
5号店は当初予定していた以上に好調な売り上げを記録し続けています。
やはり定期魔道船コンビニおもてなし丸の影響が大きいですね。このおかげでナカンコンベと、ブラコンベを中心にした辺境都市連合と交流できるようになりましたからね。
ナカンコンベから人が向かうのは主にララコンベです。
ここには温泉郷がありますからね。
先日の花祭りで温泉の噂が口コミで広まっているもんですから、今ではリピーターもかなりの数になっているようです。
そのおかげで、ララコンベにありますコンビニおもてなし4号店の売り上げも右肩上がりです。
ここの名物はララデンテさんが店頭作成販売している温泉まんじゅうなのですが、これの売り上げが花祭り以降10倍近くになっているそうです。
「いやぁ、こんなに楽しいのなんて何十年ぶりだろうな」
と、ララデンテさんも大喜びしています。
そんなララデンテさんなのですが、5号店の店員ジナバレアと非常に仲良くなっておりまして、最近ではジナバレアに教えてもらった白地のシャツに文字を手書きしたものを着用するようになっています。
今日は「さぁ食え」と書かれたシャツを着ていましたね。
しかし、このララデンテさんは僕が元いた世界で言うところの神様か仏様みたいな存在らしいんですけど、「さぁ食え」と書かれたシャツを着て、嬉々とした表情を浮かべながら温泉まんじゅうを作っている姿を見ていると、にわかには想像することが出来ないんですけどね……
一方、ナカンコンベには辺境都市連合の皆さんが毎日のようにやってきています。
観光客も多いのですが、商品の売り込みにやってくる商会や商店の皆さんの姿も少なくありません。
皆さんナカンコンベ商店街組合が経営している市場に品物を持ち込んで商売をしているのですが、ナカンコンベではなかなか手に入らない品物が多く持ち込まれているとかで、ナカンコンベの皆さんにも非常に好評だそうです。
中には、コンビニおもてなしみたいにナカンコンベに出店を考えている方も少なくないようなのですが、これはなかなかうまくいっていないようです。
やはりコネも何もない状態でいきなり店を開こうとしても、なかなか順番が回ってこないんだとか。
と、いいますのも、このナカンコンベは東西南北につながっている街道のちょうど真ん中に位置しているもんですから、どこの商会もここに店を構えたいと思っているんだそうです。
なので、空き店舗情報を管理している商店街組合には、空き店舗の順番待ちが何年も前から相当な数出来ているそうなんです。
中には、今の店の位置より少しでも役場のある中心地に近い場所に店を構えようとして、すでに店を構えている商会や商店が登録していたりもするもんですから、後からやってきたブラコンベなどの辺境都市連合の皆さんに順番が回ってくるのは相当後になってしまうわけなんです。
その点、僕達はナカンコンベに店舗を構えているドンタコスゥコ商会と付き合いがあったもんですから、その口利きのおかげで競売物件の入札に参加させてもらえたもんですから、こうして一等地に店を構えることが出来るという幸運を手にすることが出来たわけです。
ホント、ドンタコスゥコには感謝しても仕切れません。
ですが
そんなドンタコスゥコを相手にしても、おもてなし商会のファラさんは一切妥協していません。
先日も、ドンタコスゥコ相手に卸売りの商談を行ったのですが、ファラさんは一切妥協することなくドンタコスゥコを完膚なきまでに打ちのめしていました。
「まけたですねぇ……真っ白な灰になったですねぇ……」
ドンタコスゥコはそう言いながら椅子に座ってがっくり肩を落としていました。
まぁ、これは他の商会の手前、こうせざるを得ない部分もあるわけです。
ドンタコスゥコ商会だけ贔屓したとみられると、最近増加している卸売りを希望されている商会の皆さんから苦情が出かねませんからね。
「あたり前ですわ。それはそれ、これはこれですもの」
ファラさんはそう言いながらそろばん片手にポーズを決めていました。
そんなファラさんですが、卸売りした商品をこっそり多めに渡したりしているんですよね、知らん顔をしたままで。
なんと言うか、ファラさんらしい気遣いといいますか。
◇
ナカンコンベで新たにコンビニおもてなし関連店となったのが、
食堂ピアーグ
コンビニおもてなし美容室マクローコのお店
以上2店舗になります。
この2店舗も好調な売り上げを続けています。
食堂ピアーグは、コンビニおもてなし5号店で販売する弁当の作成を手伝ってもらっていますが、その代わりに弁当作成に使用している食材を安く卸売りしています。
その食材を使用したランチやディナーなんかを提供していまして、これが好評なんだそうです。
高級食堂ポルテンチップもなくなったので、今では夜8時頃まで営業しているのですが、開店から閉店までお客さんで賑わっているもんですからナスア達も笑顔を絶やすことがありません。
マクローコのお店も好調です。
新たに雇ったダークエルフの皆さんが即戦力として活躍してくれているもんですから、予約を受け付けることが出来る数が4倍になりました。そのおかげで飛び込みのお客さんにも割と気軽に応じることが出来るようになりつつあるそうです。
このマクローコのお店は、24時間営業しているコンビニおもてなし3号店と転移ドアでつながっているのですが、そちらの売り上げもかなり上昇しています。
ちなみに、通信水晶の対応を一手に引き受けているがま口木人形ですが、現在お客さんから名前を公募しているそうですけど、果たしてどんな名前になるんでしょうね。
……多分、ロボド●にはならないと思うんですけど……
◇◇
そんなある日のこと……
店のお休みを利用して僕は家族みんなで電動自動車コンビニおもてなし1号に乗ってテトテ集落へと向かっていました。
「パパ、久しぶりですね!」
助手席から顔を出しているパラナミオも嬉しそうな笑顔を浮かべています。
そうなんですよね。
5号店が軌道にのるまでは、と、頑張っていたのに加えて、あのポルテントチーネ関連の事件に巻き込まれたりしたもんですからしばらくテトテ集落へ出向けていなかったんですよ。
テトテ集落にあります、おもてなし商会テトテ集落店を通じてテトテ集落産の野菜や果物なんかは取引していたので、感覚的にはそんなに時間が経っている感じがしないんですけどね。
ちなみに、テトテ集落で大量生産に成功したイルチーゴ~僕が元いた世界で言うところのイチゴもどきですが、これを使用したヤルメキススイーツがナカンコンベでも大人気になっています。
イルチーゴのショートケーキや、イルチーゴ大福などが早速人気商品になっているんですよね。
これらの商品は天界の住人マルンもよく仕入れに来ているのですが、天界にあるマルンの店でも飛ぶように売れているそうです。
「パパ、見えて来たにゃしぃ!」
僕の後ろの席から顔を出しているムツキが前方を指さしました。
そこにはテトテ集落の砦が見えていました。
見張り台からは、例によって垂れ幕がぶら下がっています。
垂れ幕には、いつものようにスアやパラナミオ、それにアルトとムツキといった家族みんなの名前が書かれているのですが……どうやら僕の名前の部分はとうとう切り取られてしまったようですね。地面の上にもその部分はありませんでした。
いいんですよ、家族のみんなが暖かく出迎えてもらえたらそれで。
あれ、おかしいな、なんか目から汗が……
そんな僕達を乗せたおもてなし1号が近づいてくると、砦の入り口付近に集落の皆さんが一斉に集まって来ました。
そんな皆さんに、パラナミオ・リョータ・アルト・ムツキ達が笑顔で手を振っています。
おもてなし1号は、住人の皆さんに取り囲まれながら集落の中へと入っていきました。